先日、WIREDとのコラボレーションモデルが発表されたwena wristですが、「第1回アンバサダー・ミーティング」がソニー本社で開催されましたので、その内容を取材して来ました。盛りだくさんの内容でお伝えしたいことが山ほどあるのですが、一般公開できない情報もありますので、wena wristを分解しながら語って頂いた「開発チームのこだわり」を中心にレポートします。
今回のアンバサダー・ミーティングには、15名のwena wristユーザーが招待され、10名のwenaプロジェクトメンバーと交流しました。招待されたのは、Twitter上でwena wristに関するツイートを発信し、wenaの公式アカウントとやり取りしたユーザーで、プロジェクトリーダーの對馬さんが自ら1人1人に声がけしたそうです。やはり、ガジェット好きのユーザーが多く、会場ではレンズスタイルカメラなど珍しいガジェットが多数見受けられました。今回のアンバサダー・ミーティングには3つのテーマが設定されており、プログラムも3部構成となっていました。
ソニー本社見学 〜ソニー、wenaのことをもっと好きになる!〜
まず初めに、ソニー本社を見学させて頂きました。本社では、4Kデジタルシネマ、4K超短焦点プロジェクター、グラスサウンドスピーカー、PlayStationVRといった最新のソニー製品を体験できるのはもちろんのこと、未経験のUI/UX技術プロトタイプに触れることもできました。発表済みの製品でも、4Kデジタルシネマや4K超短焦点プロジェクターは体験できる場所が限られているため、貴重な経験になりました。
wena wrist分解ショー 〜wena wristマスターになれる!〜
続いては、wenaプロジェクトメンバーによるwena wristの分解ショーが行われました。ここでは贅沢にも4台のwena wrist実機を分解しつつ、各所に秘められた開発メンバーのこだわりを語って頂きました。
各種ロゴの配置
iPhone 7の発売時にも話題になりましたが、電波を発する電子機器の筐体には、所定の文言やロゴを印字する必要があります。これは、BLEとFeliCaを搭載したwena wristも例外ではありません。しかしながら、このようなガジェット然とした印字は、wena(wear electronics naturally)というコンセプトに反します。そこで、このような印字はバックルの内側に集約してレーザー刻印され、装着時には見えないよう配慮されています。なお、wena wristの特徴であるFeliCaのロゴは、バックルの外側に印字されています。
充電端子の色
wena wristのバックルの内側には、接点式の充電端子があります。通常、電子機器の接点部は十分な導電性を確保するため金メッキが施されますが、wena wristでは金メッキの上にさらに銀色のメッキ加工を施しています。これは、wenaのブランドデザインである、バンド部をモノクロにしてコラボモデルの文字板の個性を際立たせる、という設計思想に合わせたものです。たとえ、装着時に見えない部分であっても、デザインには強いこだわりを持っています。
筐体のネジ
バンドの内側にネジが見える部分がありますが、ここには小型の電子機器に広く用いられる星型ネジではなく、高級ブランドでも使用されるマイナスネジを採用するなど、腕時計業界の慣習も踏襲しています。
通知LEDの丸い光
スマートフォンにも搭載されることの多い通知用のLEDランプですが、ここにも工夫がありました。通常の電子機器では、筐体に円柱状の突起を付けることで光を丸く形作りますが、wena wristでは筐体の内側にFeliCa用のフェライトシールを配置するため、筐体に凹凸を付けることが出来ませんでした。そこで、メイン基板の下にプラスチック製のパーツを追加し、光が正面に向かって丸く飛ぶように工夫したそうです。
バッテリーの配線と防水
wena wristのバッテリーは、回路基盤が収まる大きなピースの2つ隣・4つ隣にある中くらいのピースに納められています。ここの防水加工も一苦労あったそうです。というのも、防水用のゴムパッキンにフレキケーブルを挟むと、スキマができて浸水してしまうのです。そこで、フレキケーブルをゴムパッキンと同様にぐるりと1周させて段差を無くすことで防水を実現しています。なお、回路基板とバッテリーを結ぶフレキケーブルは防水仕様となっており、大きなピースの1つ隣・3つ隣にある小さなピースの中に長さの遊びが設けられています。
交流会 〜wena開発チームのことを知れる!〜
分解ショーに続いて、アンバサダーと開発メンバーとの交流の時間が設けられました。ここでは、プロジェクトリーダーの對馬さんから、新規事業に対する信念をお聞きしました。
良い製品は実在の1人のために
ガジェットの歴史を振り返れば、ソニーを代表する製品の1つであるWALKMANは、もともと創業者である井深大氏のリクエストで開発されたものでした。wenaプロジェクトでは、WALKMANのような良い製品を創り出すため、仮想的なペルソナではなく実在する人物を思い浮かべながら、開発を進めるようにしているとのことです。
主観を大切に
大手企業の中には、統計データやマーケティング分析に基づいてストーリーを作り、これに沿って製品を展開する手法を採用する所もありますが、wenaプロジェクトでは各メンバーの主観を大切に、ユーザーの視点に立ったモノづくりを心掛けているそうです。
その分野のオタクじゃないと新しいモノは作れない
以前のインタビューで「ガジェットオタク」を自称していた對馬さんですが、オタクというアイデンティティは新しいコンセプトを作るのに必須のスペックとのこと。作ろうとしている製品分野を、ユーザーとして知り尽くしているからこそ、目に見えるユーザーの期待や要望の先を的確に拾い実現できるのだそうです。
最後に、開発メンバーを含めた参加者全員で記念撮影を行いました。開発メンバーと同じ「wena Tシャツ」を着用すると、まるで自分もwenaプロジェクトの一員になったかのように感じられ、より一層wenaへの愛着が深まりました。
次期モデルの開発が進むwena wrist、どのような進化を見せてくれるのか、とても楽しみです。