公正取引委員会と経済産業省は、「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(通称:スマホソフトウェア競争促進法)の施行に向けて、関連政令等の改正案を公表し、意見募集を開始しました。
スマホソフトウェア競争促進法は、アップルやグーグルなどが提供する基本動作ソフトウェア(OS)やアプリストアなどに対して規制を設け、アプリ開発会社間の公正な競争環境を整備するための法律です。指針案では、OSやアプリストアを提供する指定事業者が遵守すべき事項や禁止行為についての考え方が示されています。
指針案では、例えばOS提供事業者による代替アプリストアへの参入障壁となる行為や、アプリストア運営事業者が自社の決済システム以外の利用を妨げる行為などが禁止されることが明記されています。また、利用者データの不当な使用やアプリ開発事業者への不公正な取扱いも禁止されるなど、様々な内容が盛り込まれています。
基本動作ソフトウェアやアプリストア、ブラウザ、検索エンジンなどを提供する大規模事業者に対して、公正で自由な競争を阻害する行為を禁止します。特に、自社または関連会社の商品・サービスを競争上有利にする目的で取得したデータの使用を厳しく制限することが特徴です。
具体的には、指定された大規模な事業者は、自らの提供するソフトウェアを利用して取得したスマートフォン利用者の属性情報や利用状況などのデータを、競合商品・サービスの開発やマーケティングに使用することが禁止されます。また、指定事業者が競合する個別アプリ事業者に対して、不当に差別的な扱いや不公平な取引条件を課すことも禁じられます。
さらに、代替アプリストアの新規参入を妨げる行為を禁止することで、消費者に多様な選択肢を提供し、健全な競争環境の整備を目指しています。
また、OSのスマートウォッチとの接続についても公正な競争条件を設定することが求められています。
特定ソフトウェアを提供する事業者が、コンパニオンアプリと事実上一体として提供されるスマートウォッチなどのスマートフォン周辺機器に関し、Bluetooth規格を用いたスマートフォンとのデータ通信機能について、自社製品が利用できる用途の範囲に比べて他社製品の利用可能範囲を制限する行為が法7条2号違反になるといいます。また、他の事業者が個別ソフトウェアの提供に利用するために必要なAPI等を提供しないことも法律違反となり得る行為として挙げられています。
この法律から、OS提供事業者が他社スマートウォッチに対してAPIを差別せず開放するなど、公平なスマートフォンのOSでなければならない、ということは言えます。しかし一方で、スマートウォッチを他社OSで利用できるよう開放することを要求していないので、この法律がこのまま施行されたことによってAppleがAndroidとApple Watchを接続できるようにするということには必ずしもならない点には注意が必要です。
あくまで、たとえば「Appleが、iPhoneとのスマートウォッチ接続においてGalaxy WatchやPixel Watchを差別するような反競争的行為が規制され得る」と考えておくのがよさそうです。
また、音声通話機能に関しては、指定事業者が提供する通話アプリ(例えばFaceTime)が通信速度などが優れたプロトコルを利用できるようにする一方で、他の事業者が提供する通話アプリを劣ったプロトコルに制限する行為も禁止対象とされています。
この法律はまだもう少し先で、2025年12月18日の施行を予定しています。意見募集は2025年6月13日まで行われ、公正取引委員会および経済産業省のウェブサイトや電子政府の総合窓口(e-Gov)を通じて受け付けています。