Qualcommは19日、スマートフォン向け新型SoC「Snapdragon 7s Gen 4」を発表しました。5月には「Snapdragon 7 Gen 4」が登場し、こちらは「vivo V60」や「realme 15 Pro」「HONOR 400」など、すでに複数のスマートフォンに搭載されていますが、「7 Gen 4」と「7s Gen 4」の2つのチップは名称が非常に紛らわしいです。名前に「s」が付くか付かないかで、いったい何が違うのでしょうか?
最も大きな違いは、先代からの性能の向上幅です。Snapdragon 7 Gen 4は、一世代前のSnapdragon 7 Gen 3と比較して、CPU性能が約27%、GPU性能が約30%、AI処理を担うNPUに至っては約65%もの大幅な性能向上を達成。この飛躍的な性能向上は、CPUコアの世代交代と配列の最適化、GPUとAIエンジンの刷新、そして各所を繋ぐメモリ帯域の拡大といった、チップ設計全体にわたる複合的なアーキテクチャ改良の結果といえます。
一方のSnapdragon 7s Gen 4は、前世代のSnapdragon 7s Gen 3から性能向上がCPU・GPUともに約7%に留まる、小幅なアップデートとなっています。7 Gen 4は昨年のモデルより相当な進化をしているのに、7s Gen 4のさざ波のような変化の無さには、個人的に「あんまり力を入れていないのかな?」という感想を持ってしまいます。
あくまでも目安の数値ですが、ベンチマークスコアで両者を比較した際にも両者の差は明確に表れています。Geekbench 6のスコアで比較すると、Snapdragon 7 Gen 4はシングルコアが約1351点、マルチコアが約4145点。

7 Gen 4搭載「HONOR DNN-AN00」のGeekbench(6.2.2)スコア
対するSnapdragon 7s Gen 4は、シングルコアが約1228点、マルチコアが約3230点で、特にAI処理機能で重要になるマルチコア性能で大きな差が見られます。

7s Gen 4搭載機「Redmi Note 15 Pro+」と思われるGeekbench(6.4.0)スコア
Qualcomm曰く、公式には「Adaptive Performance Engine 3.0は、熱と電力のダイナミクスをインテリジェントに管理し、高負荷下でもゲームの速度、安定性、そして冷却性能を維持します」と謳います。
対応する最新技術にも差があります。7 Gen 4はWi-Fi 7と下り最大4.2Gbpsの5G、LPDDR5X(最大4200MHz)に対応。それに対して7s Gen 4はWi-Fi 6EとLPDDR5-3200想定で、周辺機能は抑えめです。ゲームを頻繁に遊びたいユーザーにとっては通信やメモリ帯域も重要になるため、やっぱり7s Gen 4だと長くは使えず選択肢からは外れるかも。
以上、これらの点を踏まえると、両者は同じ「7シリーズ」を冠しながらも、全く異なるターゲット層に向けた製品であるのが分かります。
ゲームや生成AI、ネットワーク通信の安定性などを重視する人に訴求するのは7 Gen 4。そして安価でコスパがいいのが7s Gen 4といった位置付けです。
Snapdragon 7 Gen 4 | Snapdragon 7s Gen 4 | |
---|---|---|
CPU構成 | 1+4+3構成 (Kryo) | 1+3+4構成 (Kryo) |
最大クロック | 2.8GHz | 2.7GHz |
製造プロセス | TSMC 4nm | TSMC 4nm |
性能向上 (vs 前世代) | CPU: +27%, GPU: +30%, AI: +65% | CPU/GPU: 約+7% |
実行メモリ | LPDDR5X (最大4200MHz) | LPDDR5 (最大3200MHz) |
Wi-Fi対応 | Wi-Fi 7 | Wi-Fi 6E |
5Gモデム (下り) | 最大4.2Gbps (Snapdragon X63) | 最大2.9Gbps (Snapdragon X62) |
Geekbench 6 (S/M) | 約1351 / 約4145 | 約1228 / 約3230 |
AnTuTu v10 (推定) | 約97万点 | 約87万点 |
市場での位置づけ | 性能を重視するミドルハイレンジ | コスパを重視するミドルレンジ |