日本政府は、各インターネットサービスプロバイダーに対し、海賊版掲載サイトのブロッキングを要請していると報じられています。
この件について、各団体が声明を出しています。
一般財団法人情報法制研究所は、緊急提言を発表。プロバイダーが特定サイトの遮断にあたって、ユーザーの通信内容を逐一確認する必要があることから、典型的な「通信の秘密」の侵害行為に当たるとしました。
既にマルウェア感染サイトや児童ポルノについてもアクセスブロックが行われていますが、これらは法的に問題がないよう慎重に実施されています。マルウェア感染サイトへのアクセス遮断は、アクセス先を機械的に参照した上で、利用者本人の明確な同意と、事後的に撤回可能な同意の下で初めて適法性が許容。児童ポルノ遮断についても、被害児童の人格への重大かつ回復不可能な侵害と、ブロッキング基準を定める民間団体のブロックリストを参照するなど、緊急避難の要件を定めた上で実施しています。しかし今回の要請は政府が具体的に特定サイトを指定しているなど、憲法21条2項前段でも禁止されている検閲にあたる恐れがあるとしました。
さらに一般財団法人情報法制研究所は、今回の政府要請は、個人の権利の制限や義務を課すのには法律に基づく必要がある、憲法にも定められた法治国家の基本原理を逸脱するものであると厳しく批判しています。
このほか、インターネットコンテンツセーフティ協会や一般社団法人インターネットユーザー協会など各団体からもアクセスブロッキングへの反対声明が上がっています。
以下は筆者の私見です。漫画の海賊版への取締や、海賊版よりも便利な正規サービスを展開する、といった取り組みによって漫画を守り発展させていくべきところを、ブロッキングによって対処するというのは、将来的に禍根を残すのではないかと懸念します。サーバー会社と広告配信会社への働きかけやDMCA申立など、様々な手段があります。違法ダウンロードに悩まされた音楽業界も今は上手くビジネスモデルをインターネットに適合させています。表現を守る存在であるべきはずの出版社が無為無策の行き着く果てが事実上の検閲であるとすれば、それはもはや自殺行為ですらあるのではないでしょうか。ブロッキング以外の手段が尽くされることを切に望みます。