中国のディスプレイ製造メーカーであり、iPhoneのディスプレイ製造の一部を担っているBOEが、iPhone 14シリーズにおいて、Appleからのすべてのディスプレイ受注を失う可能性があると、韓国のTHE ELECが伝えました。
情報によると、BOEは、ディスプレイの多くが品質管理チェックに合格していなかったため、Appleの許可なく一部の仕様を変更し、検査をパスしていたとのこと。
現在、Appleがディスプレイの供給源として製造を委託しているのは、供給数順にSamsung Display、LG Display、そしてBOEとなっています。BOEは2022年当初、多くのモデルのiPhoneにおける4000万にも及ぶディスプレイの製造を目指していたとのこと。
しかし、同社は2つの問題にぶつかり、目標としていた数の製造が困難になりつつあるようです。
一つ目は、半導体不足。2021年から現在まで、新型コロナウイルスによる、在宅作業のにおけるパソコンやタブレットといった電子機器の需要増加や、製造ラインの混乱、さらに自動車メーカーによる半導体需要の増加によって、多くの電子機器メーカーが半導体不足に悩まされてきました。同社もこのあおりを受け、従来より生産能力が落ちていた模様です。
そして二つ目が、品質管理検査に合格したディスプレイの少なさ。Appleが各部品メーカーに課す基準は、他大手スマートフォンメーカーよりも厳しいことが多いことで知られています。最先端、かつ世界最大の有機ELディスプレイ生産能力を持つSamsung Displayでさえ、iPhone用ディスプレイ製造における検査に合格する割合は約60%であるとのこと。
BOEは、やはりSamsung Displayと比較すると技術力などで劣っており、結果他社よりかなり低い合格率に悩まされていたとのこと。そこでBOEは、ディスプレイの重要部位である薄膜トランジスタの回路幅を、Appleの許可なく秘密裏に下げることで、検査に合格する割合を増やそうとしたようです。
Appleは、この性能の不正操作に、今年初めに気付いたとのこと。既に性能が意図的に下げられたディスプレイを搭載した製品が市場に出回っていたため、すぐにApple本社にBOEの社員と幹部を招集し、理由の説明を求めたようです。
最終的に、BOEはiPhone 14シリーズにおけるディスプレイの受注を受けることができなくなり、AppleがBOEに発注する予定であった約3000万枚のディスプレイは、Samsung DisplayとLG Displayが製造することとなった模様。
Appleとの協議の上であればまだしも、独断で許可なく勝手に変更してしまうと擁護しようがありません。今後はディスプレイの製造をほぼ韓国勢が占めることなるほか、BOEが最大の取引先とも言えるAppleを失うとなると、今後の経営状況は厳しくなっていきそうです。