総務省は競争ルールの検証に関するWG(第30回)を開催しました。
まず固定回線について。総務省は大手携帯三社が固定回線の顧客獲得のために行うセット割やキャッシュバックの影響を調査、三社に報告徴収して検証。その結果、NTTドコモとSoftBankは回線原価が収入額を上回っていたことがわかりました。
携帯回線について。米Appleや米Qualcommが値引き規制について見直しを訴えました。
一方でIIJとmineo、一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会といったMVNOが資料を提出。MMO各社による安値販売を問題視。安値販売を求めて何度も短期解約・MNPする「MNPホッパー」の存在を問題視しました。
一般社団法人テレコムサービス協会MVNO委員会は、MNOによる最新端末の安値販売は公正かつ自由な競争を阻害するのみならずMVNOの事業運営に深刻な影響を及ぼしているため、より踏み込んだ規律を提案。
代理店が単体販売拒否できないよう、手続きごとに端末在庫を分けることを禁止する運用ルール強化や、セット購入時の端末提供上限を2万円から0円に減額。こうした措置を講じてもなお解消されない場合、MNO各社から代理店への端末の販売提供に関わる一切の業務委託を禁止、安値販売をやめないMNOに対する周波数割当での減点を提案しました。
Appleの課す厳しいノルマを達成すべくMNOが代理店と「レンタル」を駆使して規制を掻い潜り、iPhoneばかり叩き売る現状は非常に問題であり、筆者も共感します。携帯キャリアが代理店をこき使い大きな支配力を持つことによる様々な弊害もあります。MVNO側からこうした提案がなされること自体、特に不思議なことではありません。
ただMNPホッパー、いわゆる転売目的の輩の排除や抑制については、厳しすぎる解約金1000円上限が原因であることは明らかであるので、まず対策として考えるべきは総務省の解約金上限の見直しです。
これは携帯値下げを主導し現在も影響力を有する菅政権による功罪です。さすがに今後の経営見通しを立てづらくなり、転売屋を抑止しにくくなる解約金上限1000円は行き過ぎていました。
しかしこれについて業界を長年見てきたなら、やむを得ない反動だとも思います。なぜなら「2年縛り『自動更新』」という極めて悪質な商慣習が長らく罷り通り、ほとんど是正できずにいたからです。もちろん国民や消費者はこうした業界には嫌気がさしています。一方解約金訴訟ではキャリア側が勝訴しており、司法でダメなら国民を代表する政治家がやるしかありません。政治主導、法律と省令で一気に規制されてしまったのは自浄作用のない業界の自業自得か、総務省の監督不行き届きとしか言いようがありません。
1000円どころか解約金0円の事業者も一般的になりました。長年の悪習を根絶したのは政権の大きな成果です。では、MNPホッパーを適度に抑制できる落とし所はどこなのか。たとえば契約3ヶ月間や半年間程度なら解約金上限を上げてみてはどうか。電気通信事業法改正後のデータも揃ってきた今、検証した上で軌道修正を模索すべき頃合いだと思います。
また総務省の一連の携帯値下げ議論で欠落しているのは、技術革新を担うのはハイエンド端末であるという観点だと筆者は思います。最新技術、最新通信規格を載せ、普及の最先端を担うのがハイエンド端末です。これには相応の補助が必要であり、ただでさえ安い廉価端末と同じ補助上限というのは解せないものがあります。
こうした主張を政府会議で行えるのは、携帯キャリアへのOEM供給という弱い立場に甘んじてしまった国内メーカーではなく、携帯キャリアに対して権力を発揮できる米Appleや米Qualcommである、という現状は本当に情けないと思います。業界への政府本格介入は少なくとも10年以上遅かったのだなと感じます。