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新発表「Snapdragon X Elite」。Oryonコアで広がるAndroidの未来

 QualcommはSnapdragon Summit 2023を開催し、同社のモバイル向けチップセットに関連する様々な発表を行いました。今回はその中でも印象的だったSnapdragon X EliteとOryon CPUコアについて紹介します。

Qualcomm-image

 Snapdragon X Eliteでは、従来のArm社の提供するCortexコアをセミカスタマイズしたKryoコアではなく、完全新規開発のOryonコアが搭載されています。

 このOryonコアは元々ファブレス半導体開発企業NUVIAが開発していたもの。Qualcommは2021年にこのNUVIAを買収しました。

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 NUVIAの創業者であるジェラード・ウィリアムズ氏は元々AppleでiPhoneやMacに搭載されたApple Siliconを開発していた人物で、高性能・高効率を誇るApple Siliconの生みの親でもあります。

 もともと、SnapdragonはQualcommがArm社が提供するCortex-A8コアの性能・消費電力効率が自社の需要を満たすものではないとして完全独自に開発したScorpionコアを採用したチップセットとして登場しました。Qualcommはその後もCortex-A15と競合する独自のKraitコアを採用します。

Scorpionコアを搭載したQSD8250 (画像はwikipediaより)

 ただしこの独自コア路線は長くは続きませんでした。64bit (ARMv8) 化に合わせてQualcommは64bit ARMv8準拠の独自コアKryoを開発しますが、このコアはArm社が提供するCortexコアをベースに若干の変更を行ったセミカスタム品であり、性能面でのアドバンテージは失われてしまいました。

 一方Appleは64bit化に合わせて独自のCycloneコアを採用したApple A7を開発。その後も継続して独自コアの改善を進め、ついにMacにまでApple Siliconで置き換えられました。

初のMac向けApple Silicon M1

 Appleの独自コアは高性能かつ高効率であり、特にシングルスレッド性能の高さが際立っています。Arm CortexコアベースのSnapdragon 8 Gen 2 for Galaxyを搭載するGalaxy S23 Ultraのシングルスレッド性能と独自コアベースのApple A17 Proを搭載するiPhone 15 Pro Maxのシングルスレッド性能を比較してみると、両者の間には大きな差があることが見て取れます。

Galaxy S23 Ultra (Snapdragon 8 Gen 2 for Galaxy)

iPhone 15 Pro Max (Apple A17 Pro)

 PCと同様、シングルスレッド性能の高さはゲームのような重量級のアプリケーションで効果を発揮し、ロード速度やフレームレートの安定性に寄与します。特にUnityで作られたゲームアプリ(スマートフォン向けゲームの大半)はその傾向が高く、GPU性能では勝るものの、CPUが足を引っ張る形でゲームの実行性能ではiPhone一強とも言える時代が続いてきました。

 一方、今回発表されたOryonコアはシングルスレッド性能で宿敵であるApple M2をも越え、PC向けで電力的に有利なIntel 13th Core Hシリーズすらも上回っています。これはCortexコアの性能問題に悩まされてきたQualcommにとってとても大きな進歩です。

 ただし、今回発表されたSnapdragon X EliteはノートPC向けのチップで、スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイス向けに同時に発表されたSnapdragon 8 Gen 3では、残念ながらArm Cortex-X4のセミカスタム品のKryoコアが採用されています。

 しかし同時に、Qualcommは2024年に発表するモバイル向けSoCでのOryon採用も発表してしまいました。これではSnapdragon 8 Gen 3製品の買い控えが起こりそうなものですが、それだけOryonはQualcommとして大きなマイルストーンだと考えているということでしょう。

 QualcommはOryonコアの登場により、長年抱えていたCortexコアのパフォーマンス問題を克服しました。来年登場するであろうスマートフォン向けチップセットに期待がかかるところです。

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