1年前、Trinityから発売されたスマートフォン「NuAns NEO」を振り返ります。
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ハードウェアは良し!
最大の魅力は「COREコンセプト」
「NuAns NEO」は、素体となるスマートフォンに、様々なスタイルカバーを組み合わせる「COREコンセプト」という方式を取っています。
特殊加工で素材を薄くコーティングした「テナージュ」、クラレの「クラリーノ」、高級車の内装に使われる東レの素材を用いた「ウルトラスエード」など、個性的なカバーが多数展開され、これらを2種類組み合わせるツートンデザインが非常に魅力的です。
スマートフォン向けのアクセサリや周辺機器を販売してきたTrinityならではの機種といったところで、非常に個性的な存在でした。
とにかく持ちやすい
昨今のスマートフォンはカタログスペックを追求して、とにかく薄型化しがちですが、NEOは「あえて」11.3mmという厚みを持たせ、楕円状にすることで、非常に握りやすくなっています。重心にまで気を配ったデザインの良さ、実際に持って体感してもらいたいところですね。
さらに最近ではやや珍しくなった「ストラップホール」をしっかりと完備。ハンドストラップを付ければ確実に落下を防止できます。
「おサイフ」みたいに?改札を通れる
背面にはカードを収納可能なスペースが用意されています。標準では画面を拭くためのクリーナーが入っています。
ここにSuicaなどチャージ済みのICカードを入れておけば改札を通れるわけです。
さらにNFC Type Fにも対応し、交通系ICカード内の情報を読み取ることが可能。後述するように、残高管理・使用履歴の保存を「NuAns NEO」側で行うことができます。持ちやすさも相まって、普段使いの電話機としてはなかなか優秀でした。
ただしセキュア領域は非搭載であり、実際の「おサイフケータイ」のようにICカードへのチャージなどといった高度なことはできないのは注意が必要です。(つまりチャージ時はカードを本体から取り外して、通常のICカードと同じ手順を踏む必要あり)
手帳型カバーがグッド!
私が組み合わせたカバーはブラックのフリップケース。交通系ICカード等をいくつも収納しておけるスペースを備えており、本体の裏面にカードを収納できるNuAns NEOとの相性は抜群。
本体と調和した高級感あるデザインで、さらに動画視聴時のスタンドとしても活用できる利便性をも兼ね備えていました。総じて満足度の高いハードウェアだったと思います。
基本性能
スペックはミッドレンジ
念のため基本仕様を確認しておきます。スペックは中位のいわゆるミッドレンジ。
OS | Windows 10 Mobile |
---|---|
CPU | Qualcomm Snapdragon 617 MSM8952 1.5GHz オクタコア |
メモリ | 2GB |
ストレージ | 16GB, microSDXC 最大128GB |
ディスプレイ | 5インチHD, 295ppi |
カメラ | 1300万画素 F2.0 裏面照射型 28mm広角レンズ |
インカメラ | 500万画素 F2.4 裏面照射型 24mm広角レンズ |
バッテリー | 3350 mAh 連続通話時間:960分以上 連続待受時間:400時間以上 |
寸法 | 141×74.2×11.3mm, 150g |
LTE | B1/3/8/19/28 Cat.4 |
3G | B1/6/8/9/19 |
その他 | USB Type-C, Wi-Fi 2.4 / 5GHz , NFC Type A/B/F |
電池持ちは良好
5型HDの端末としては電池は比較的大容量なので、電池持ちはなかなか良いです。充電を1日忘れた程度では翌日も問題なく使えます。
ソフトウェアは……?
OSはマイクロソフト社のW10M
OSには、Microsoft社の開発するWindows 10 Mobileを搭載しています。Windows Phone 8.1の後継となるモバイルOSです。
Apple社のiOSはApple ID、GoogleのAndroidはGmailアカウントでログインして、各社のクラウドサービスとシームレスに接続できるのに対し、W10MはMicrosoftアカウントにてログインして使用できます。
このため、One Driveと親和性が高く、スマートフォンとPC間のファイルのやり取りは標準でもやりやすいです。
他にもOutlookやWord/Excel/PowerpointといったOfficeアプリ、Edge、エクスプローラー、Xbox Live、Groove Musicなど、Windowsでお馴染みのソフトと同じ名称を冠した標準アプリが並んでいるのも面白いところです。個人ユーザー向けというより、ビジネスユーザー向けの印象が強く、実際、法人向けのニーズを満たすためのモデルも国内で複数投入されています。
コンティニュアム
Qualcomm社製のSnapdragon 617と実行2GBメモリを搭載しており、Windows 10 MobileをWindows風のUIでモニターに無線出力する「Continuum(コンティニュアム) for Phone」にも対応します。
Android TV搭載BRAVIAは無線LANを内蔵しており、アダプター等を別途接続せずとも、スクリーンミラーリング機能でW10M端末との接続が可能であるのは非常に良いですね。単純にブラウジングする程度ならば特に問題なく利用できます。
ただし、既存のWin32アプリケーションが動くわけでもなく、非対応アプリはグレーアウトして使えないなど、Continuum自体が発展途上の存在なので、実用性には疑問符。もちろん実用性はともかく、ガジェットとしてワクワクする機能ではあります。まあ、ミッドレンジながらもContinuumが動作するポテンシャルを秘めていていると捉えて、ここは素直に加点したいところ。
タッチパネル感度
初期の時点ではかなり反応が悪かったのですが、ソフトウェアアップデートにて改善しました。KATANA01などSnapdragon 210搭載の廉価W10M機と比べれば良好と言えます。(KATANA01はかなり感度が悪い)
しかしiOS/Android比だと、指を弾いてスクロールする挙動などで勢いが足りず、違和感を覚えます。スペックを考えても、おそらくOSの差異に起因する部分が大きいのではないかと推測しています。
日本語入力は最悪、アプリも足りない
W10Mは日本語表示にも日本語フリック入力にも対応しているものの、語彙や変換は今一つで、デフォルトからで変更不可。キーボードのサイズや細かい設定を変更することもできず、使い勝手はかなり悪いです。
アプリの充実度は悪く、SNS系も不十分でした。最近は、待望のInstagramアプリが登場し、TwitterがUWP(ユニバーサルWindowsアプリ)化されるなど、随分マシにはなってきています。それでもiOSやAndroidと比べるとそのアプリの少なさに困惑する人も少なくないでしょう。
電話として使う、SNSやSMSは短文で済ます、メールチェックはするけど返信はPC等で行う、など他デバイスときっちり使い分けできるユーザーにとっては、些細な問題かもしれません。
カメラはいまいち
W10M標準のカメラアプリが搭載されており、画質含めても、特に褒めるべき部分は見当たりません。カメラ重視で選ぶ端末ではありません。Instagramの登場により、フィルターが掛けれるようになったので、ぱっとしない冴えない写真を簡単に見栄え良く加工できるようになったのは救いかなと。
NuAns NEOの部分は良い
上記、やや辛辣なことも書いたものの、大半はMicrosoftとW10Mの問題です。NuAns NEO独自の部分としては、端末デザインとベゼルに合わせた黒い壁紙や、かつてないほど充実したAPN設定など、メーカー側の努力は伺えます。
残高確認アプリも便利
Windows 10 Mobile用アプリ「Kumalica」が公開されており、NuAns NEOの背面に収納した交通系ICカードの残高と使用履歴を確認可能。使用履歴はCSVとして出力可能であり、家計簿や確定申告に役立ちます。これはNFC Type F対応のNuAns NEOならでは。
総評:OS以外はとても良い、後継機に期待
COREコンセプトやW10M採用などは、少なくとも「ワクワクさせてくれるガジェット」としては最高で、確実に「買ってよかった」のですが、OS部分の問題が、少なくとも個人向けとしては足を引っ張っていた感は否めません。
最近では、Android 7.1採用でおサイフケータイにも対応した後継機が出るとの噂もあり、COREコンセプトはそのままに「もっとたくさんのアプリを使いたい」「快適に日本語入力したい」「本物のおサイフケータイを使いたい」といった需要を満たしつつ登場してくれそうな予感で、期待しておきたいところです。(追記:後継機[Reloaded]が出ました→購入レビュー記事)