SEIKOのWIREDとコラボを果たした「wena wrist」。その意義と熱き想いを、若きプロジェクトリーダーに訊く

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 ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(“SAP”)から立ち上がった「wena project(ウェナプロジェクト)」、そして、そこから生まれた新カテゴリのウェアラブルデバイス「wena wrist(ウェナリスト)」。

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 基板やバッテリーを時計側ではなく、全てバンド部に収納するという野心的な試みは、多くの人の心を掴みました。ソニーの運営するクラウドファンディングとEコマースのサイト「First Flight」にてクラウドファンディングを実施し、目標金額1000万円を、たった一晩で見事に達成。最終的には国内初となる1億円以上の支援を集め、無事製品化に辿り着きました。

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(筆者も愛用のwena wrist Three Hands Premium Black)

 wena wristは、時計メーカーSEIKOの若者向け時計ブランド「ワイヤード(WIRED)」にて、数量500本限定のコラボレーションモデル「AGAA701」を出すことが決定。(関連記事) このコラボレーションモデルに関する取材を実施。wenaのプロジェクトリーダー對馬(つしま)氏より、様々な話を聞くことができました。

SEIKOとのコラボの意義

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 對馬氏より今回のコラボレーションに関する概略を伺いました。まず今回のコラボレーションの存在意義として特筆すべきは、これがSEIKOへのB2B(Business to Business)であること。つまり初の「時計メーカーとのコラボレーション」(※)であるとともに、wena wristとして初のB2Bであることから、「コラボレーション第二弾」ながらも、wena wristとしては初めて尽くしということになります。

(※)wena wristコラボレーション第一弾の相手であったBEAMSは衣料品や雑貨のセレクトショップであり、時計メーカーではない。BEAMSはVAIOともコラボレーションを行っていた。

 なお、今回のプロジェクトのきっかけは、家電見本市CEATEC(シーテック)においてwena wristを展示した際に、興味を示したSEIKO担当者側からのコンタクトであったそうです。

(wena projectの事業責任者である對馬氏)

 B2Bとしてバンド部分のみWIREDに納入する形を取っており、現時点の販路としてはソニーの販路はなく、SEIKO側のWIRED取扱店に。このためSEIKOの公式ホームページなどから販売店を確認する必要があります。

 一方でWeb通販にて購入したいとのソニーへの問い合わせも多いとのこと。予約開始当初はAmazonでも取扱があったため、予約を受け付けている旨を案内したものの、一時はAmazonの腕時計ランキングで一位を獲得していたほどの人気で、早くも売り切れてしまったとのこと。取材時点ではYahooや楽天での予約受付を継続しており、そちらを推奨しているそうです。

挑戦的な価格設定

 製品のターゲット層について。まず前提として、WIRED自体が20代~30代の若者向けという位置づけです。価格設定により、若者でも手の届きやすいものとなっています。発売時期と新生活の時期は一致しており、新入社員など、新生活をスタートする人に是非手に取って欲しいとのことでした。機械式ということで、ターゲットより上の世代にもウケれば良いとも。

製品の魅力

 SEIKOのWIREDとしては初のメカニカルウォッチ。このバンドにwena wristを組み合わせるコンセプトを、對馬氏は「最新技術・伝統技術のコラボレーション」と語ります。

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 WIREDらしい青基調のデザインで、若者だけではなく、昔ながらのクラシックなデザインを好む人にも受け入れてもらえればとのこと。

 文字板部分にメカニカルウォッチを採用したことによって、トルクが強く、太い針も力強く回せるとのこと。

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 以前のモデルとデザインコンセプトが代わり、側面部分は自然にラウンド。ダブルピンにより工具不要で取り外し可能。

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(左:筆者愛用WN-WT01B, 右:AGAA701の試作機)

 今回のコラボで標準付属するレザーバンド。

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 取り外しが容易であるため、wena wristとレザーバンドを日によって付け替えることができそうです。レバーピンは1つだけで、金属と違って「撓る(しなる)」ので、片方だけで脱着しやすく、ガタつきもありません。

 なお、背面の小窓部分からは中の機械の動きが見える仕様になっています。個人的には、メカニカルウォッチの心臓部分が鼓動する様子をシースルーで見られるのは大好きなギミックで、好きな腕時計を買って組み合わせようかと考えていたので、今回のような形で正式なコラボ製品としてそれが登場したのは歓迎したいところ。

 試作機はもちろんのこと、化粧箱まで高級感がありましたので、実製品に大いに期待が持てると感じました。

モデル展開の展望

(左:WN-WT01B, 右:wena-wrist -Three Hands White Limited Editon-)

 對馬氏は、「一般のスマートウォッチは、ガジェットらしいものから、モダン且つスタイリッシュなデザインに移行しつつあるが、一方で腕時計好きのメインストリームはやはりクラシックなものではないか。」と語ります。

 バンド部に機能が入ったwena wristであれば、腕時計好きのメインストリームはもちろん、ヘッド部のデザインによって、様々なお客様の好みに合わせていけると言います。今後もラインナップを拡充していく方針だそうです。

 多様な客層に刺さるような様々なタイプの新製品・コラボレーションを想定しているように伺えたので、今後に期待したいところです。

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(BEAMSコラボモデル)

―――商品発売後の反響はどうか

對馬氏:初めは本当にいわゆる「ガジェッター」の方々がぐわっと食いついて、凄まじい勢いでした。BEAMSコラボモデルの投入により、これまでと違う層にもアプローチできました。

 そして今回のWIREDコラボで、腕時計として wena wrist に興味を持ってくださるお客さんも増えると想定しています。予約数の多さからも手応えを感じています。

―――wenaは事業としては順調なのか?

對馬氏:事業開始初年度としては非常に順調で、今後も継続していく予定です。

製品に込められた「想い」

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(wena wrist -Three Hands White Limited Editon-)

―――製品で特にこだわっているところは?

對馬氏:やはりバックル部分にあるスリットですね。これはLED通知とアンテナとしての重要な役割を兼ねています。その部分を狭くするためにとんでもない努力をしています。それ以外は全て金属。このこだわりは必ず残していきます。

 左右対称(バックル受けのコマと反対側のコマが全く同じ形)という点もこだわりです。電池を格納するコマのデザインは簡単には変更できません。そこに合わせていかに金属としての綺麗さを維持できるか、今後もデザイナーと一緒にやっていきます。

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―――WIREDモデルにおける機械式時計の採用に対する反響は?

對馬氏:機械式時計は時刻が若干ズレるものです。それだけでダメ出しする人もいますし、逆に機械式というだけで愛着を持てると賞賛する人もいます。

 無感情な製品より、作り手の細かいこだわりや配慮が滲み出るような製品にしたいと思っています。物には作者の思想や想いが宿る、愛情の注がれた「作品」だと捉えています。映画や漫画、音楽といったものと同じだなと。たとえばある漫画の作品には、人間賛歌という伝えたいテーマがあります。やはり作品を通じて心を揺さぶりたい。

 初代iPod TouchやiPhone 4を使っていて、アップデートに置いて行かれて使いづらいけれども、それでも使ってあげたい。そういう気持ちに共感します。wenaだったらバンドだけを交換して時計を長く使っていける。そういうものづくりをやっていきたい。

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(連携用のwenaアプリ)

―――長く使っていく、という観点だと、既存製品のソフトウェアや連携アプリもアップデートしていくのか?

對馬氏:もちろんこれまで通りアプリ部分を更新していきます。できることは全部、ひとつひとつ検証して取り込んでいきます。

―――Androidの通知の部分に、edy残高や電池残量といった各種情報を表示できる機能について、iOSのウィジェットでは非対応の理由は?

對馬氏:iOSではBluetooth Classicであれば通知バー部分への電池残量表示が可能なのですが、BLE(Bluetooth Low Energy)だと仕様上できないためです。

 また、これまでシンプルに作ってきたアプリですが、UIも抜本的に刷新していく予定です。これはAndroidだけでなくiOSもそうです。

―――iPhoneとApple Watchがおサイフケータイに対応した今、率直な感想をお聞かせ願いたい。

對馬氏:wena wristが駆逐されるんじゃないか?なんて説もありましたが、決済できる腕時計Apple Watchが発表されたことによって、むしろ話題になりました。

 また、これについてはユーザー層に違いがあるとも思います。Apple WatchはあくまでもAppleのウェアラブルデバイスを求めている人。これに対してwenaはデジタルとアナログの両方に魅力を感じる人。できることとしてはApple Watchの方が多いですが、ターゲット層は全く異なります。色々収納できるナイロン製のハンドバックと、革製の鞄。このような違いです。また、wena wristはApple Watchよりも機能を絞っているため、一週間持続するスタミナを持っており、仮に電池が切れても普通の腕時計として使用できます。

―――wenaの優れた電池格納技術が、ソニーモバイルのSmartWatchシリーズに転用されることは想定しているか?

對馬氏:まず、SmartWatchの開発は全くの別部署。特許技術に関してはソニーとして出願中なので、もちろん要望があれば考えるでしょうが、現時点では特にそういった話はありません。

―――wenaでもっとやっていきたいことは?

對馬氏:もっと新製品を出したいですね。ヘッドセットやメガネを作りたいです。ですがリソースにも限界はあるので、まずは wena wrist に注力して優先度の高いものから着手しています。死ぬ気で働いてもまだ足りません。

 やはり構想を形にした瞬間が一番楽しいです。初めて試作機が動いた時!そして発表前で、それを世界でまだ5人しか知らない時!テンションが上りますね(笑)

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(wena wrist 最初の試作機)

 当初、コラボレーション第2弾ということで、目新しい情報が引き出せるか若干の不安はあったものの、嗅覚(?)に従って取材を敢行した結果、面白い話がいくつも聞けました。

 インタビュー予定時間を若干オーバーしてしまうほど、今回、ここでは書ききれない話もありました。ここに詳細を書くことはできないものの、いずれも今後もwenaの展開に期待の持てると確信できる内容であったことだけは、読者の皆様にもお伝えしたいところ。

 今後登場するであろうwena wristの新製品と、對馬氏が青写真を描く未来の製品が無事に登場することを願って、筆を擱くことにします。

(聞き手:きもば・rironriron)

wena公式サイト:http://wena.jp/index.html
First Flight:https://first-flight.sony.com/

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