ブロッキング中止か
共同通信は、NTTグループがブロッキングを中止する方針を固めたと、8月3日21時37分に報じました。理由は対象サイトの停止で効果が薄れたため。
一方で日本経済新聞は8月3日22時54分、ブロッキングを中止したものの、海賊版サイトが復活すれば政府方針に基づくブロッキングを再び実施する方針はNTTは変えていないと報じています。
ブロッキング、導入プロセスも悪い
ブロッキングについては憲法・電気通信事業法に抵触するおそれがあり、法学者・研究組織・業界団体などからの批判の声が相次ぎ、弁護士や消費者団体からの訴訟が起きています。
政府知財戦略本部・犯罪対策閣僚会議は、4月に「漫画村」「AniTube」「MioMio」への「民間の自主的取組」によるブロッキングを適当とする決定を行いました。憲法は国家権力を拘束しており、ブロッキングを指示すれば政府が憲法違反に問われかねません。このため、堂々と事業者への「忖度」を求めるという前代未聞の決定を行ったわけです。
他の諸外国でブロッキングを導入している例もありますが、いずれも立法措置・司法的サイトブロッキングなど、三権分立・民主主義の原則の中で適切に導入が行われており、「忖度」によるブロッキングを強行した異常な国はありません。
今後ブロッキング再開の可能性も
KDDIとSoftBankはブロッキングは行わず、慎重な姿勢を表明しています。
NTTグループのブロッキング中止は、一旦取りやめるということで間違いなく、もし仮に今後も同様の政府決定が行われれば、NTTグループは再びブロッキングを行う可能性があると考えられます。
8月4日7時4分現在、NTTグループはブロッキング実施宣言のプレスリリースはそのまま訂正や削除も行わず、ブロッキング中止を宣言するプレスリリースも出していません。
出版社としての矜持を持つべき
今回の一連のブロッキング騒動の裏には、カドカワの川上量生氏の「活躍」が取り沙汰されており、彼はまさに政商と形容して差し支えないでしょう。
憲法第21条は出版社にとって生命線のはずであり、出版社が政府に掛け合って自らそこに風穴を開けようとした事実は重大であり、出版業界の自殺未遂、汚点として語り継がれて然るべきです。海賊版漫画の被害額は自称「3000億円超」。損害賠償額110億円の海外ゲームROM海賊版サイトと正々堂々訴訟などの方法で真っ向から対決する任天堂の姿と比べると、何と情けないのでしょうか。
効果も薄く、弊害が大きいブロッキング。政府はこれを今後も行わないという決定を行う必要があると思います。
始まる公式漫画村
川上量生氏を擁するカドカワが出版社としての矜持を売り渡す一方で、メディアドゥホールディングス傘下でマンガ図書館Zを運営するJコミックテラスは、講談社からの出資も受け、海賊版全滅を掲げ、出版社と作家による「公式漫画村」「電子書籍版 YouTube」とでも言うべき実証実験を開始しています。真に海賊版の撲滅と日本の漫画の未来を考えるのであれば、このようなイノベーティブな試みを応援するべきだと思います。
それは、「出版社と作者が共同で漫画村(のような仕組み)を作り、ただし収益は作者と出版社に正しく分配する」というシステムです。この案に関して、来月以降に実際にある出版社と組んで実証実験を行います。海賊版データを乗っ取り、20年以上に渡るイタチごっこに終止符を打つのが目標です。
— 赤松健 (@KenAkamatsu) 2018年4月18日
【お知らせ】ご存じ #マンガ図書館Z を運営する「株式会社Jコミックテラス」ですが、このたびヤフーグループを離れ、電子書籍取次で業界最大手の「(株)メディアドゥ・ホールディング」の傘下に入りました。また、新たに「講談社」からも出資を受け、協力態勢を検討してまいります。
— 赤松健 (@KenAkamatsu) 2018年7月10日
メディアドゥホールディングの株主は小学館・講談社・集英社。この試みの成功を心から願います。
メディアドゥホールディングの大株主は「小学館・講談社・集英社」など大手出版社揃いであり、今回の決定には私も作家として「非常にポジティブな期待感」と「ある種の安心感」を持っています。赤松も取締役会長として、引き続き #マンガ図書館Z の現場指揮をとりますので、よろしくお願いいたします。
— 赤松健 (@KenAkamatsu) 2018年7月10日
実証実験を行うマンガ図書館ZのURLはこちら。