中国スマホや、それに付随して世界各地域のスマホ事情をご紹介してきましたが、そういえば、隣国北朝鮮はどうなのでしょうか。経済制裁中なので「国産」しかないドメスティックな市場。
とはいえ基本的には中国メーカーのモデルがベースにある。
そもそも、北朝鮮人民はスマホを買えるのか。鳳凰網科技に北朝鮮で人気の機種と、人気機種のレビュー記事がそれぞれ公開されていたので、ご紹介します。
なお、元記事の趣旨としては、中国人にとって神秘のベールを被った「よき隣人」、朝鮮人民はどんなスマホを使うのか?朝鮮で2013年以来使用されているスマホ5機種を紹介する、というものです。なんとなくわかるというか、当たり前ですが、中国人が北朝鮮に向けている視線は、日本人のそれとあまり変わりませんね。
では、北朝鮮スマホ5大機種を見ていきましょう。
平壌タッチ
北朝鮮スマホといえば「アリラン」がごく一部でよく知られていますが、そのアップデート、「PyongyangTouch」というスマートフォンもあるそうです。ピンク、ブルー、ホワイトの3色展開だとか。若者向けだそうです。
なお、このスマホには外国語辞書アプリがプリインストールされていることから、学生と公務員から人気だとか。プリインストールのアプリがセールスポイントって、スマホの意味とは、という疑問が沸きあがってきます。
気になるOSですが、高度にカスタマイズされたアンドロイドと見られるとのことです。ボディデザインはiPhone3GCをもとにしたように見えますが、Galaxyっぽさも少しあると指摘します。どうですかね。
「朝鮮新報」が北朝鮮人民による「平壌タッチは以前のスマホより凄い、外観がスマートになった」とのコメントを紹介したそうです。また、北朝鮮官営メディアの報道によると、アリラン(Arirang)スマホは北朝鮮初の国産スマホであり、平壌タッチは2機種目だそうです。
初代アリラン
北朝鮮スマホを語る上で、北朝鮮が自主開発した「アリラン(阿里郎)」は外せないと言います。日本でもちょくちょく紹介されていますね。アリランは朝鮮民主主義人民共和国2013年5月11日工廠が北朝鮮自国の技術で生産されたスマホだとされているようです。
初代「アリラン」、即ちアリランAS1201の原型は中国メーカー優思(Uniscope)U1201らしいです。一説には勝手にコピーしただけとも。アリランAS1201のスペックは、4.3インチIPSディスプレイ、解像度540×960、Snapdragon S4 MSM8225クアッドコア 2GHz、実行768MBメモリー、4GBストレージ、容量1900mAh電池、Android 4.0だそうです。5年前と考えても、文句なしの低スペックですね。フリーズしそう。
Jindallae 3
このスマホの面白いところは、アップルとサムスンの雰囲気を同時にパクっているところで、北朝鮮は外のものを完全に拒絶しているわけではないようだと指摘します。
Jindallae 3は北朝鮮の科学技術企業「Mangyongdae」が自主開発・生産したとされていますが、Mangyongdaeはスマホの機種名と常用アプリのみ公表、利便性と安全性を向上させたと宣伝しているだけで、その他の情報はわからないそうです。
なお、このスマホは設計、OSともに北朝鮮国内で自主開発されたもので、今年3月に発売されたものの、写真が公開されているだけ、ブラックとホワイトの2色があるとのことです。
機種名となっているJindallae(チンダルレ)は、英語名でKorean Rosebay、日本語名ではカラムラサキツツジ。朝鮮半島では春の訪れを知らせる、日本の桜のようなポジション。
Blue Sky
2014年創立の「Phurunhanu」l社は今年の平壌国際博覧会で「世界最高峰」を誇る「Phurun Hanul H-1」、通称「Blue Sky」を発表したそうです。このスマホの最大の特徴は、6000mAhの大容量電池だとか。電池容量だけでいえば、確かに世界最高峰だと指摘します。
また、「Blue Sky」は5.5インチの高精細ディスプレイや指紋認証も搭載しているそうです。
アリラン171
アリラン171は、北朝鮮が最近開発、リリースした新型スマホで、公式サイトの紹介によれば、このスマホは画質がいいばかりでなく、Android系統も最高水準にある、ということです。こういう紹介、どんな機種にもつきますね。
アリラン171はタッチパネル、高精細カメラ、画質鮮明なゲームモードを搭載しているそうです。MediaTek X20、5.5インチFHDディスプレイ、実行4GBメモリ、32GBストレージ、1,300万画素背面カメラというスペックだとか。カタログスペックは、ずいぶん「まとも」に見えます。2016年の魅族MX6と同等だと指摘されています。北朝鮮側によれば、ファッショナブルな外観、ハイエンドな性能といい、北朝鮮スマホは他国の製品と比べても遜色ない、カメラの性能はiPhoneに勝てると豪語しているそうです。日本メーカーのどこかには勝てるかもしれませんね。
中国人ガジェッターがアリラン171をレビュー
なお、アリラン171は、これも鳳凰網科技で、差評君というライターが「北朝鮮の貴族が使うスマホを買ってみた」というレビューを発表していましたので、こちらもご紹介します。
まずは、付属品。とても充実しているといいます。充電器、コード、イヤホン、USBポートにSIMカードの針、それに「非常に生臭い」皮革カバーが付属しているとか。
さて、この写真を見て気になるところとして、大型のSIMカードトレイが付属していますね。差評君も、「2018年に大型SIMカード???」と驚いています。
しかし、本体のSIMカードトレイを取り出してみると、付属のトレイは使えないことが発覚。しかも、ダブルSIM、マイクロSDに対応しているとか。
これについて差評君は、「SIMトレイがタダでついてきた」「社会主義的良心」と絶賛しています。いいセンスですね。
さて、早速起動させた差評君、朝鮮語は読めないそうですが、アンドロイドなら慣れているので、Wi-Fiを起動させる画面には難なく行き着いたようですが。Wi-Fi起動スイッチが反応しないらしいです。
インターネットができないスマホは、ただの電話兼学習機器ということで差評君、言語を中国語に切り替えて、操作を進めます。朝鮮語、中国語、英語に対応しているようです。なんででしょうね。
差評君、「北朝鮮に監視されるリスクを冒して」中国のSIMカードを挿してみますが、対応していないそうです。「朝鮮を出たらこいつはネットも電話もできないのか」「朝鮮貴族が使うスマホだから、嫌われたようだ」と嘆きます。なお、「このSIMカードは使用できません」の窓を閉じたら、自動的にシャットダウンされ、「ふつうの嫌われ方ではない」とまた嘆きます。
読者の皆様方の中には、「開発者モードを使えばいいんじゃない?」とお気づきになられた方もいらっしゃると思います。
「朝鮮貴族のエンジニアが、それに気づかないわけがない」とは差評君の言。一生懸命試してみましたが、ダメだったようです。
ちなみに「朝鮮貴族の使うスマホ」についての差評君の解釈は、「このスマホは1台4,000元(1元=約16円)以上、朝鮮人民の年平均収入は3,000元余、普通の朝鮮人民は1年間飲まず食わずで貯金してもこのスマホを買えない」ところがその所以だといいます。
経済制裁により海外製スマホが輸入できない北朝鮮ですが、その国産スマホも高度に閉鎖的なつくりをしているようですね。スマホがWi-Fi接続できないことを前提にしているのなら、北朝鮮にWi-Fi環境が整備されるのは、かなり先の話なのでしょうか。