華為(Huawei)を筆頭に、小米(Xiaomi)、OPPO、vivoなどの大手スマホメーカーがしのぎを削る中国市場ですが、その陰で、中小ブランドは苦境に直面しているようです。
中国・捜狐によれば最近、江蘇省政府の品質検査部門が市場に流通しているスマホの検査を実施、その報告によれば、錘子科技(Smartisan Technology)の「堅果3 (Nut 3 / OC105)」が不合格となったそうです。
不合格となったのはSARが原因で、一定時間あたりの電磁波量が安全基準を上回っていたとのことです。基準を満たさない製品を製造しているメーカーがある、というのは驚きに値します。
さて、この錘子(Smartisan)ですが、2012年からスマートフォンの製造を開始しているメーカーで、「新参」とは言えない位置にあります。ご存じのとおり、小米なんかは登場してから3,4年で急成長しており、何年やっているかはあまり関係のないところ。とはいえ、不具合が発生する可能性は、経験の蓄積によって、減少していくのが一般的でしょう。当初は酷評されていた日本のスマホも、だんだんと致命的な欠陥は発生しないようになっていきましたしね。
錘子科技は中国のカリスマ経営者、羅永浩が「世界最高のスマホを作る」との思いから設立したメーカーですが、羅永浩が考えるほどスマホ業界は簡単ではなかったと指摘されています。
錘子科技の製品は、T1以来、ほぼ毎回なんらかの問題をおこしていたと言います。錘子T1の品質は当時ボロクソに批判され、ゴム部品の脱落が多く発生していたそうです。羅永浩はこのスマホを当初「東半球で最も使いやすいスマホ」と言っていましたが、さすがに後から品質上問題があるモデルであることを認めたとか。
この頃、サプライチェーンの薄弱さが浮き彫りになっていたそうです。羅永浩は「最高のスマホを作る」ことを目的としていたなら、当然最高の代理生産メーカーを探さなければならないところですが、最初、鴻海にしたところ、価格が高すぎる上に錘子の販売台数がよくなかったため、次々とメーカーを換えることになったといいます。
その間には、代理生産メーカーが給料遅配をおこしたため、錘子のスマホが出荷不能に陥ったこともあるとか。結局、錘子がメーカーの給料を肩代わりすることで、なんとか製品を受け取ることができたのだとか。なんだかまるで昭和初期の話のようですが、商売って、大変ですね。
後にSmartisan Mシリーズが電波の問題をおこしたりしましたが、今までのところ、錘子で最も成功した製品は「堅果(Nut)シリーズ」だそうです。
現行には堅果Pro 2、Pro 2Sがあります。
錘子の成立当初は「最高のハイエンドスマホを作る」、という志があったものの、経済的な圧力から台数の稼げる堅果シリーズを作ることとなり、堅果シリーズがそこそこ成功したため、錘子は全てのシリーズを堅果に改めることにしたそうです。堅果R1は錘子にとってハイエンドシリーズの実験的機種になり、価格もこれまでにない高さのようです。
いまのところ堅果R1には致命的な問題は出ていませんが、カメラレンズに傷が入ったというユーザーが多く出現しており、メーカー修理で対応しているそうです。また、錘子は最近、レンズにシールを貼ることで解決したとか。なんともさえない話ですが、ともかく、「製品不良」とまでは言えないレベルですね。
錘子のスマホの歴史は様々な欠点との戦いであり、それも錘子は毎回設計に変更を加えるため、毎回様々な欠陥が出て来るのだとか。なんだかここらへん、日本メーカーっぽいですね。小規模メーカーが、資金と人材に限りがある中で連続して多くのシリーズのスマホをリリースすることは、簡単ではないと指摘します。
そんなこんなで錘子のスマホ本体の欠陥が並べ立てられてきましたが、システムには独特なセールスポイントがあるのだとか。例えば、画像ファイルなどから文字を認識する「大爆炸(Big Bang)」、音声メモを文字に起こして記録する「闪念胶囊」、メッセージを一斉発信できる「子弹短信」、本体を動かすことでスクロールできる「無限屏」など、目新しい細かい機能がてんこ盛り。なんだか、ここも日本メーカーっぽいですね。
独特な「細かいこだわり機能」をもちながらも、資金力が不足し、一貫した設計も持たず、競争激烈な中国市場での生き残りは難しいと囁かれている中国メーカー、錘子。
どうやら、錘子による失敗の軌跡を見てみると、日本勢の失敗は日本のメーカー文化的なところに原因があるのではなく、「弱者のたどる失敗の典型」だったのかも……と感じます。錘子のように「部品脱落」をやらかした日本ブランドはちょっと思いつきませんが、文鎮やホッカイロよりはましな気も。