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総務省有識者会議、端末と通信の料金分離を提言。

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 総務省有識者会議は、モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言案をまとめました。

取り組みの方向性

 今回の提言は主に「シンプルで分かりやすい携帯電話に係る料金プランの実現」と「販売代理店の業務の適正性の確保」の2つの軸で整理したとしています。

 取り組みの方向性としては、料金その他の提供条件に関する禁止行為を定め、電気通信事業法の改正を含め必要な措置を検討して速やかに実施に移す、といいます。

 措置の効果測定のため、販売奨励金や端末購入補助、端末に係る収支の状況といったデータを定期的に総務省が把握する必要があるとしました。

通信料金と端末代金の完全分離

現状の問題点

 問題点として以下が挙げられています。

  • 通信サービスと端末はセットで購入するものとの強い印象を与え、両者が本来は別のものであるという理解を妨げている
  • 購入端末によって料金が異なるプラン(おそらくdocomo withなど)は不公平である
  • ハイエンド端末とローエンド端末の(おそらく通信料金からの割引による)価格接近が、市場メカニズムの機能不全やMNOとMVNOの不対等を生んでいる
  • 実質価格により、端末代金と通信料金との区分がわかりづらい
  • 割引を受けるために利用者を過度に拘束、事業者間の公平競争が阻害される
  • 4年縛りは過剰な囲い込みである

提言

 端末の購入等を条件とする通信料金の割引等を廃止することが適当である、と提言しました。

 また、4年縛りについては改善が不十分であり、抜本的見直しを求めました。

行き過ぎた期間拘束の禁止

問題点

  • 期間拘束とその自動更新により、MNPのスイッチングコストが高くなっている
  • 期間拘束なしの料金プランは高かったり長期契約者割引を受けられないなど実質的な選択肢となっていない
  • 途中解約の違約金は算定根拠が明らかでなく、高額である
  • 携帯回線と固定回線の拘束期間がズレるため乗り換えの妨げになっている

提言:見直すべき期間拘束

 以下の期間拘束については、見直すことが適当であるとしました。

  • 期間拘束のない契約の提供条件が、期間拘束のある契約に比べて合理的理由なく著しく劣り、実質的な選択肢となっていない場合
  • 合理的でない高い水準の解約金
  • 期間拘束の自動更新
  • 携帯と固定のセット契約は、同時に無料解約できる期間の設定

 期間拘束の自動更新について。契約当初の段階で、自動更新とするかどうか選択可能とし、さらに拘束期間終了の段階で更新するかどうか利用者の意思確認を行えるようにすべきとしました。自動更新の有無によって料金差を設けるべきでないともしました。

合理性を欠くプランの廃止

問題点

  • 同キャリア内で、通話頻度・データ通信容量が同じなのに、プランによって通信料金が異なる
  • 基本料とデータプランを別々に提供しているのに、基本料が安いプランでは少ないデータ量を選択できない

提言

  • 利用者が理解できないような複雑・合理性を欠く料金プラン(使用する端末や選択するデータプランによって料金が異なる場合など)は、見直すことが適当

販売代理店の業務の適正性の確保

問題点

 販売現場における不適切な勧誘の例として、不必要な大容量プランを押し付けられた、不必要なタブレットやアクセサリーを売りつけられた、など。

 さらに、消費者からの声として、契約内容の複雑化や説明時間の長時間化、光コラボの勧誘で知らない間に契約先が別会社になっていた、実質0円等の表示は適用条件を認識しにくい、などが挙げられています。

 他には、販売代理店独自の過度な端末購入補助が利用者感の不公平やMVNOの新規参入・成長を阻害している懸念がある、としました。

提言

  • 販売代理店を、キャリアを介さず行政が直接把握するため、「届出制」を導入する
  • キャリアや販売代理店の不適切な勧誘行為を禁止し、違反した場合には業務改善命令

筆者の考察

ようやく自動更新を止められる

 今回の提言では、特に期間拘束や通信・通信料金の一体化が問題視されています。

 端末料金と通信料金の分離や期間拘束について規制する方向なので、当然ながら端末購入サポートを始めとする3社の期間拘束付き特価も禁止されると見るのが妥当ですが、特に提言内で期間拘束付き特価の具体的プラン名が例示されていないので、この辺りはまだ不透明な部分があります。

 ようやく契約自動更新に関する、より踏み込んだ提言が出たことについては大きいですね。自動更新有無の予約や更新直前での選択など、できて当然、今までできなかったのが恥だと思います。ちなみに自動更新関連は菅官房長官の発言よりも前の段階から検討されていたので政権の成果ではないです。

もはやパチンコ扱いの携帯業界

 筆者の個人的な考えでは、3年前から様々な改善が進んでおり、菅官房長官が携帯料金について過度に口を挟むのは間違いだと考えていますが、意外にも、口を挟むことに反対する声は世間にはそれほど多くは聞かれません。消費者の満足度に関わる部分で業界の自浄作用が効かないものが多かったがために、消費者のフラストレーションが相当たまっていたんだろうな、という皮膚感覚があります。

 今回の提言の中で、特に驚くべきは、販売代理店の届出制、総務省への販売に関する様々なデータの定期送信といった部分です。まさかパチンコ業界と警察の管理遊技機構想みたいなものを携帯業界で見るとは。さんざん下品な特価やキャッシュバックをしてきたせいか、もはや携帯ショップはパチンコ屋か何かだと見做されているのでしょうか?普通はこんな案、出ませんよねぇ……。

 届出制も、郵政官僚に新しい仕事ができてよかったですね。キャリアの三店方式に期待でしょうか?

利用者不在、言葉だけの空虚な分離

 通信と端末の分離は本来、値下げ云々よりも、自分の購入し所有権のある端末を自由に利用できるという消費者の権利と、メーカーの自立という切り口で論じられるべきだと思いますが、その辺りが欠落しているのは気がかりです。

 さて、完全分離と言う前に、本当に通信と端末を自由に組み合わせられる人がどれだけいるのか?

 有識者の皆さんのうち、どれぐらいの人が、キャリア端末に他社・MVNOのSIMカードを挿したことがあるでしょうか?使えない機能、使えないのに消せない数々のブロートウェア・クラップウェアに戸惑うのでは、と思います。

 どれぐらいの人がSIMフリー端末にKDDIやSoftBankのSIMカードを挿したことがあるでしょうか?対応バンドや通信規格、プラン、通信や端末ごとに細分化されたSIMなど。au VoLTE関係もそうですが、SoftBankなんて、一体何種類SIMカードがあるんだか。かなり難しいです。

 こうした現実の問題の全てに有識者がツッコミきれていないのに、分離したところで一般人がどこまで理解して組み合わせられるのでしょうか。まずは持ち込み契約の阻害要因を丁寧に除去し、端末と通信を組み合わせるスタイルを着実に消費者に定着させていくのが肝要です。

 根本的に、様々な問題のうち、キャリアが端末販売を行ってきたことによって生じてきたものが多々あります。なので完全分離と言うと、字面から、今さらやっと当然のことが来たのか……と感慨深くなりそうですが、ちょっと待ってください。間違えてはいけません、そもそも今回俎上に載ったのは、通信と端末ではなく、あくまで通信「料金」と端末「代金」の完全分離

 つまりキャリアが取り仕切る端末販売を手放す、という話ではありません。変わらないのです。それどころか通信契約を伴わずにキャリア販路から端末単体で購入できるという話でもなく、他社SIMで利用できないキャリア謹製ソフトの数々が綺麗さっぱり消えるという話でもないのです。(もしiPhoneやPixel 3のような『SIMカードを挿した時点でキャリア謹製アプリが自動導入される仕組み』を有識者会議が義務付けてきたら面白いかなとは思いますが……)

期待は禁物、しわ寄せはどこに

 筆頭株主が財務省で、NTT法の拘束も受けるNTTグループのドコモは、間違いなく率先して忖度し、料金プランの簡略化や値下げをしてくるでしょう。シンプルさや安さで売っているMVNOは、今後どうなるのか、心配ですね。

 SoftBankはウルトラギガモンスター+導入と従業員4割削減で対応。KDDIは乗り気ではなく、値下げ済みとの立場。ドコモがやるなら何らかの手は打ってきそうですが。

 どこかにしわ寄せは来るのではと思います。これまでのしわ寄せは販売店への補助金の削減でした。もしかすると、キャリア販売端末の代金がSIMフリー版よりも高額なものが増えるという展開もあるかもしれませんね。端末代と通信料のトータルでの支出は変わらないか、高くなる場合もありえるでしょう。端末定価は既に一部そうなってますよね。

 今後、ハイエンド機も、ローエンド・ミッドレンジ機と平等なプランになるため、ハイエンド偏重で大手キャリア依存に甘えているメーカー、特にSony Mobileは覚悟すべきですね。伸びるのは中国メーカーでしょうか。

 普通は端末販売の冷え込みを想定し、まずは店頭や広告の実質価格表記禁止から始めて、消費者に本当の通信料金と端末代金を認識させてから、ゆっくりとソフトランディングを図っていくべきものだったでしょう。本来なら、ガラケーからスマホに移行する段階で検討されて然るべきでした。SoftBankもKDDIも通信料からの割引はやめていく方向に舵を切っていたので、ドコモは併存で上手いこと行くのかと思いきや、政権の横槍でハードランディングを強制されそうです。

 さて、これは頭の体操ですが、それでも端末の販売サイクルをキャリアが無理やり維持するとすれば、端末を貸出、リースという建前にするとかですかね?北米ではT-MobileやSprintがリース形式で端末買い替えプログラムをやっていました。4年縛りのプランに似ている部分があるので、さすがにダメでしょうけどね。(というか、日本の携帯電話も昔レンタルでしたね。)閑話休題。

 所詮、今回の議論は政権の消費増税の目くらましのための携帯値下げという、発端が不正であり、それを元に尻に火のついた総務省が慌ててやってるのですから、良い結果になろうはずもなく、こんなものに期待するのが間違いです。

単なる「値下げ」というよりは「身の丈にあった選択」を想像しておくべき

 拘束や割引が無くなるほど、理屈の上では、消費者は端末と通信プランを自由に組み合わせやすくなります。(実際に組み合わせた場合に起きる前述の山積する諸問題の解決なくして、理想論だろうとも思いますが。)

 消費者はサブブランドやMVNOも含めて幅広く検討することが大事です。高品質高価格のMNOの価格がもし本当に値下げされるのであれば、その時は全ての選択肢の中から改めて比較検討して契約するまで。そういう姿勢で居れば怖いものはありません。

 端末も、思考停止で最新ハイエンドを選ぶという習慣をやめ、必要な性能や機能を吟味し選択することが大切です。現在はハイエンド以外の機種も性能が底上げされつつあり、十分選択肢になるものが増えています。

 期待せず、身の丈にあった端末と回線を選びやすくなることで安くなる場合が増える、という理解をしておくのが正しいでしょう。

情報元総務省
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