今さら聞けない基礎知識:総務省について

総務省とは?

 「技適」や「放送法」、「マイナンバー」など、なにかと話題にあがる総務省。「総務」といえば、なんだか「庶務」というか、「雑務」のようなイメージもありますが、いったいどのような官庁なのでしょうか。

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(総務省と警察庁の合同庁舎)

 「なんでこんな時代遅れな規制があるの?」「無意味じゃない?」という疑問への答えのようなものをお届けしたいと思います。なお、官庁の評価という性質上、記事の内容には筆者の偏見が含まれていることを、ご承知おきください。

 まず、総務省の任務については、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第三条で次のように定められています。

 総務省は、行政の基本的な制度の管理及び運営を通じた行政の総合的かつ効率的な実施の確保、地方自治の本旨の実現及び民主政治の基盤の確立、自立的な地域社会の形成、国と地方公共団体及び地方公共団体相互間の連絡協調、情報の電磁的方式による適正かつ円滑な流通の確保及び増進、電波の公平かつ能率的な利用の確保及び増進、郵政事業の適正かつ確実な実施の確保、公害に係る紛争の迅速かつ適正な解決、鉱業、採石業又は砂利採取業と一般公益又は各種の産業との調整並びに消防を通じた国民の生命、身体及び財産の保護を図り、並びに他の行政機関の所掌に属しない行政事務及び法律(法律に基づく命令を含む。)で総務省に属させられた行政事務を遂行することを任務とする。

 色々書いてありますが、要は、地方行政、消防、郵便、電波通信と、所掌範囲がかなり広い官庁です。ちなみに「マイナンバー」は「地方行政」業務の一環として位置づけられます。

 あまり関係ないんじゃないか?という疑問のあるとりあわせですが、なぜそうなったか。それを解き明かすには、まず総務省が誕生するまでの「歴史」を見なければなりません。 

名前は「総務」でも主流は「自治省」

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 総務省が誕生したのは、平成13(2001)年。橋本行革により、地方自治制度、消防や選挙制度を所掌していた「自治省」、統計や恩給などを所掌していた「総務庁」、郵便や電波通信行政を所掌していた「郵政省」が合併されて成立しました。

 「合併」といえば企業でも例えば「旧○○銀行系」と「旧××銀行系」で確固たる派閥が存在する場合が多いようですが、それは役所も同様であるどころか、そもそも業務自体が別々なので、むしろ同じ総務省であっても別組織のような観があります。

 「旧○○銀行系」といえば、某赤い銀行は旧財閥系銀行が圧倒的に強いことで有名ですが、総務省といえば「旧自治省」が主流となっています。

旧自治省の源流

 かつて、日本を「統治」していたと称しても過言ではない省庁が存在しました。それが「内務省」です。主管業務は、警察(警保局)、地方行政(地方局)、公共事業(土木局)ほか、多岐にわたりました。その範囲は「内政全般」と言ってもいいでしょう。なお、消防は当時警保局、つまり警察行政でした。そのうち、地方行政(地方局)が旧自治省・総務省の源流となります。

かつては強大な権力を誇った旧自治省・総務省

 「内務省」の権限の中でも現代の我々からすれば驚きなのは、戦前は都道府県知事の選挙が存在せず、知事は内務省の官僚が務めていた点です。東京都知事も大阪府知事も内務官僚でした。

 ちなみに、内務官僚のなかでもエリート中のエリートだけが到達できる「内務省三役」といえば「内務次官」「警保局長(警察庁長官に相当)」「警視総監(首都警察トップ、今もありますね)」であり、圧倒的に警保(警察)畑が強かったそうです。警察国家ですね。

 それに次ぐ勢力が、都道府県知事を輩出する地方局だったわけです。ちなみに、存命する唯一の官僚出身総理大臣経験者、中曽根康弘大勲位(100歳)は、海軍から内務省復帰後に警視庁警視などを務めています。

内務省解体

 戦後、内務省は連合国軍総司令部(GHQ)によって解体されて警察庁(警保局)、自治省(地方局)、建設省(土木局)に分割されました。このうち、先述のとおり知事を輩出する地方局を継承した旧自治省がいまの総務省に繋がります。

 なお、消防行政は昭和35(1960)年に国家公安委員会から自治省へ移管されました。「警察から自治省、要は内務省だし同じようなもの」というノリだったと思われます。

今も生きている「内務省」

 翻って現代。省庁間には「力関係」のようなものがありますが、某「やんごとなき省庁」も主要ポストは「旧内務省」と「外務省」からの出向が占めることになっており、「内務省」という枠組みは今も生きています。

 「旧内務省」長男の警察庁は「政治的影響の排除」というお題目のもと、警察庁長官を警察官僚が務める「独立勢力」として、地位を築いています。言うなれば、「内務省三役」のうち「警保局長」と「警視総監」は、ちゃんと今も持っているわけです。「内務次官」は消滅したという理解でいいでしょう。警察による総どりですね。

総務省主流「旧自治省」

 あれ……?もう一方の大勢力、地方局こと総務省は?

 実は、各都道府県の副知事以下、自治体職員には、旧自治省、総務省の官僚ポストが存在します。しかし、「副知事がせいぜいって……」という疑問もあるでしょう。伝統と格式ある旧内務省の旧自治省・総務省ですが、権限は大きく狭まってしまいました。

 困った、仕事がない。そう、そこで、総務省内では飽くまでも「旧自治省=地方局」が主流なので継子扱いしている、旧郵政省の出番です。 

旧郵政省の電波通信行政が主要権限に

 日本国内で「合法的」に流通しているスマホの裏面を見れば、「技適マーク」というものがついています。そう、〒です。旧郵政省の主管業務は、郵便・電波通信。郵便はオワコンとして、電波通信……つまり、旧郵政省には電波・通信行政くらいしか仕事がありません。

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(よく見ると郵便記号をあしらっている技適マーク 出典:総務省

 なんなら、地方行政も流行の「地方分権」を推進したところで旧自治省の仕事を減らすくらいの話なので、意地悪な言い方をしてしまうと、総務省は「電波・通信」行政、言い換えれば「規制」くらいしか、やることがないのです。

 さらにいえば、「インターネットと携帯電話普及によって、総務省は電波・通信行政で仕事が発生してよかったね」レベルの話です。「規制官庁」としての権限は存在意義を増しているようで、なによりですね。

 規制緩和と組織の存在意義消滅はほぼ同義なため、この辺りの抜本的な改革は容易ではないというわけです。