「通信の秘密は重要」「ネットワークではなく『端末側で』制限を」。トレンドマイクロ社も登場した総務省アクセス抑止方式会合 すまほん!!

 総務省は、インターネット海賊版サイト対策として「アクセス抑止方策(アクセス警告方式)」について、有識者を集めた検討会議を開催しました。

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おさらい

これまでの経緯

 海賊版サイト対策から派生したブロッキング問題、違法ダウンロード拡大問題。これらは国民の権利侵害が大きく、ギリギリで阻止された経緯があります。

 憲法や法律上の問題が少ないものとして、宍戸常寿教授が昨夏、アクセス警告方式を提案。この実現のために2019年4月19日から総務省が検討会を開いています。

アクセス警告方式とは

 約款による事前包括同意により、ISPが海賊版サイトのアクセスに対して警告を表示するというもの。

 これについてはユーザーの同意が不可欠です。

 これについてインターネット上の海賊版サイトへのアクセス抑止方策に関する検討会 第1回・第2回会合で、結局はブロッキングと変わらず通信の秘密を侵害するだろう、技術的に困難との異論が噴出し、今回の第3回に至ります。

アクセス抑止方策、トレンドマイクロが登場

総務省会合にトレンドマイクロが登場、自社製品のフィルタリングの取り組みを説明

 冒頭から個人法人向けセキュリティーソフトを開発販売しているトレンドマイクロ社のコンシューマー向けセキュリティーソフトプロダクトマネージャー伊野氏が登場。フィルタリングの取り組みについて説明。

 PC向けウイルス対策ソフトは、未使用者は少なく12.2%に留まる一方、AndroidとiOSの利用状況は、まだまだ少ないとしました。

 ウイルスバスターの機能紹介。Webサイト評価機能として、2種類があるとのこと。ランサムウェアなど不正プログラムが埋め込まれているページをブロックする「Web脅威対策」と、親が子供に閲覧させたくないページをブロックする「URLフィルタリング」

 「Web脅威対策」は、ユーザーが任意に設定する形。様々な団体から提供されたURLをリストに追加しブロックしているとのこと。初期設定はオン。

 「URLフィルタリング」では、フィルタリングを行うカテゴリを選択。初期設定はオフ。「違法と思われる行為」というカテゴリに、海賊版サイトのURLも含まれているとのこと。

 このフィルタリング機能は、HTTPS通信にも対応。閲覧不能なサイトは空白としてブラウザ上に表示し、警告内容はウイルスバスターからポップアップで警告を表示しているとのこと。

 モバイルではiOSとAndroidに両対応。iOSではVPNを活用したコンテンツシールドという機能があり、iOS上でSafariや、Facebookなどのアプリ内ブラウザも対応するとしています。

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 現状の課題としては、違法と思われる行為に関するWebリストの強化において、法的機関やそれに準ずる団体からのURL提供が強化に不可欠、そしてペアレンタルコントロール利用率を向上するため青少年への啓蒙活動が必要としました。

トレンドマイクロ 質疑応答

Q.おすすめセットのようなものがあるのか、保護者がすべて個別選択するのか?

A. 高中低があり、選べばまとめて指定。その上で個別にカテゴリチェックの変更が可能。

Q. 閲覧不能なWebサイト、資料からするとそのまま見られるようにする項目があると見えるが、先に進めるのか?

A. ペアレンタルコントロールの一環であるため、そのまま見られるようにするには、パスワード入力画面が出てくるため、保護者がそのパスワードを入力するという形になる。

Q. 海賊版サイトブロックはWeb脅威対策にあるのか

A. アクセスしただけで攻撃してくるサイトがあるのでその場合にはブロックされる場合がある。

Q. 有償無償含め他社にはURLフィルタリング機能はあるか?

A. ベンダーによる。他社だと別アプリで提供の場合もある。

Q. URLフィルタリング機能をオンにしている割合は?

A. 全体の数としてはあまり多くはない。50%には満たない。モバイルではデータを持ち合わせていない。PCでいうと非常に低い。

Q. カテゴリ選択の「違法と思われる行為」は、海賊版サイト以外は?

A.知財を侵害するコンテンツが「違法と思われる行為」の中身。知財保護団体から提供されたリストを追加する形で強化。独自に基準を持って拡張していることはない。

Qリスト提供の更新頻度は?漫画村の新しいタイプが出たと伝えられたが、そういったものは?

A. 直近更新は3月。頻度は高くないです。

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Q. いつから海賊版がリストに入るようになったか?

A. 今情報を持ち合わせていない。

Q. PCではアプリのポップアップ、iOSでは通知。これはブラウザでは証明書を確認できないということか?

A. 技術的成約。証明書ゆえかは確認できない。

出版広報センター 補足:出版広報センター・漫画家協会に集約される情報では、海賊版サイトの3分の1にマルウェアやフィッシングが仕込まれており、「第二の漫画村」と呼ばれるサイトもマルウェアがあるようでアクセスするとトレンドマイクロのソフトによってブロックされた。

アクセス抑止方式 論点整理案

 事務局が論点整理案を説明し、この論点整理案について構成員らが意見を出しました。

ユーザーアンケートの結果、「違法DL拡大の有無」は誤差レベルと判明

 事務局が改めて論点整理案を説明。今回、ユーザーアンケートを実施し、整理したといいます。

 検討実施にあたって基本的な考え方と進め方として、静止画等のダウンロード行為が違法となる場合に、違法であることを知らせ、ユーザーの違法行為を防ぐという議論もあったとします。

 ただしユーザーアンケートによれば、ダウンロード行為の違法の有無意識の違いがあまりなかったとのこと。海賊版サイトにアクセスした際に警告が表示された場合、アクセスを思いとどまる人の割合は93.3%。静止画ダウンロード違法化想定の場合は95.9%。ほぼ誤差レベル。

効果

 効果については、思い留まると回答しているユーザーは多いことから、一定効果は見込まれる者の、一方でオプトアウトすれば効果はなく、SSL通信では警告表示が困難であり、海賊版サイト対策としては限定的効果ではないかとも考えられるとしました。

法的整理

 通信の秘密は、憲法上保証された基本的人権であることからユーザー同意の成否が慎重に判断されるべきとしました。有効な同意と言えるのは、個別具体的かつ明確な同意であることが原則。

 アクセス警告方式の実効性や普及率を高めるには、サービス約款に記載し包括的同意を取得する方法があるのではとの議論もあったといいます。

 総務省の過去の整理では「一般的類型的に見て通常のユーザーであれば許諾することが想定し得る」場合に、包括的同意でも同意として認められるとの結論が出ています。

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 では、肝心のユーザー意向はどうなのか?アンケートでは、通信事業者がアクセス先をチェックすることを気にならないと回答した人の割合は5割程度。さらに意見募集では、通信の秘密と検閲の観点から慎重的否定的意見が多数でした。

 なお、上記ユーザーの反応については、静止画等ダウンロード違法化の有無による違いは見られないとしています。

 以上を踏まえ、「一般的類型的に見て通常のユーザーであれば許諾することが想定し得る」とは言えず、つまり約款による包括的同意を有効な同意とは言えない。静止画等ダウンロードが違法である場合でも同じ整理になるとしました。

導入および実施のための技術的課題

 DNS+プロキシ方式、プロキシ方式、DPI方式、いずれの技術的方式においてもSSL、HTTPSでは警告が困難としました。また、多数の事業者があり技術的課題やコストの問題があり、誰がコストを負担するかという議論もあるとしています。

その他

 海賊版サイトのリストについて中立性公平性や管理運営の透明性が必要としています。また、オプトアウトしているか否かの情報は個人情報として慎重に取り扱うことが妥当としました。

アクセス警告方式まとめ

 やはり約款による包括的では同意とはいえない。そしてネットワークではなく端末側で実装する方が相応しいとの意見も多く寄せられ、端末側での対策を促進することを中心に海賊版対策を取り組むことが肝要としました。

 また、本施策は海賊版パッケージの一つであることから、政府内で取り組むこととされており、著作権教育・意識啓発・正規版の流通促進、国際連携・国際執行の強化、海賊版サイトへの広告出稿の抑制といった他の施策と組み合わせつつ総合的に推進することが重要としました。

端末側で対応

 インターネットのEnd to End原則に即しているし通信の秘密の問題が生じない。フィルタリングサービスにおける一定の実績がある。コストも比較的低廉。ユーザー自ら申し出て導入する必要があることから普及率としては限定的な効果になる。青少年の海賊版利用が多いことから、青少年向けのフィルタリング普及推進が海賊版サイトのアクセス抑制に資する。フィルタリングソフト利用にあたってのソフト事業者への迅速なリスト提供が課題。セキュリティー対策ソフトへの組み込みという対応策が考えられ、これはユーザーアンケートによれば受容性は比較的高いとしました。

 ブラウザやOSなどの端末側ソフトによる対応策はOSベンダーと連携すべきとの意見もあったといいます。フィルタリング利用にあたっての周知強化、リスト迅速追加、セキュリティー対策ソフトなどへの組み込みについて議論が必要としました。

論点整理案について、構成員から

 アクセス警告方式実現について、技術的観点から、日本インターネットプロバイダー協会理事の野口尚志氏は、ネットワークはEnd to Endの通信を前提としており、途中に手を加えることを許さない前提で、これを崩してとなると署名書不正取得や脆弱性という話になってくるので直ちに塞がれる性質とします。海賊版サイトになりすます方法があるとすれば、それは銀行のサイトになりすます方法があるということになると説明します。このためエンドポイント(端末側)での対策普及がよい、としました。

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 京都大学教授の曽我部真裕氏は、フィルタリング機能をセキュリティー対策に組み込むことについて、書き方が不明瞭なのでクリアにすべきと論点整理案に意見し、消費者行政第二課中川北斗課長補佐は意見を踏まえて検討すると回答。

 江崎座長代理は、日本の通信の秘匿性は、GDPRの議論や、米国での日本のプロバイダーへの評価といった、国外の場でも高い評価を得ている点であって、国家戦略としてもこれを重要として、著作権法だけの議論ではなく、大きなポイントとして報告書に出すべきとしました。

 弁護士の森亮二氏は、アクセス警告方式検討にあたっての提案募集結果では、ブロッキングと同じく通信の秘密侵害であることを懸念する意見が多く、通信の秘密について報告書に反映させるべきとしました。また、ネットワークや通信事業者側からお手伝いできることはCDN対策であり、それを検討することを書くよう求めました。

 虎ノ門法律事務所上沼紫野氏は、自分の意志でアクセス先を制限するという意味では、フィルタリングは青少年以外にも使えるよう、セキュリティー対策ソフトに入れれば普及しやすく、実効性を高められる。セキュリティー対策非利用が44%との数字が出ていたが、広めるべきではとしました。

 江崎座長代理はしっかりエンドユーザーが選択できることを担保し、通信の自由を日本がちゃんとやっていくと姿勢を示すべきとしました。

 日本インターネットプロバイダー協会理事の野口氏は産業機密は成長戦略の柱、全ての基盤が通信の秘密とし、これからもきちっと守っていきたいとしました。また、CDNの話について、通信の存在そのものを秘匿することは難しく、トレーサビリティはまだあり、発信者に代わってエンドポイントになっているCDNを通じて発信者に近いところ、隣ぐらいまで迫ることはできるとし、CDNへの対応を求める森弁護士の意見に説得力があるとしました。

 江崎座長代理は、「できること」「できるけどやってはいけないこと」の区別をしっかりやる、特にCDNはグローバルドメインとしてのプレイヤーの話になり、単独の国では難しく、域外適用のコンセンサスをしっかり作っていくべきとしました。

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 中川課長補佐は、整理案について、検討会のとりまとめを事務局で作成、次回会合で明示するとし、会合を終えました。

総評

 インターネットの自由、そのあり方を大いに変質させかねない重大事案でしたが、ブロッキングやアクセス警告方式が侵害する「通信の秘密」は、重要な価値というところで意見が一致。端末側のフィルタリングでの制限を普及させていくという真っ当なところに議論が落ち着きつつあります。

 今後も基本的人権、インターネットの自由、日本の国家戦略といった観点を踏まえながら、漫画をいかにして救っていくか、官民・業界の垣根を越えた知恵を出して海賊版サイトと戦っていくことが肝要であると考えます。