台湾で「半世紀に一度」の水不足、半導体生産優先のため農業用水を制限 すまほん!!

 中国「網易科技」が4月9日に伝えたところによると、先進半導体チップの90%以上は台湾で生産されていて、全世界のiPhoneほか電子製品でも極めて大きなシェアを誇り、台湾現地経済に重要な地位を占めるところ、台湾で発生している旱魃(かんばつ)の影響により、半導体チップ生産に工業用水を確保するため、台湾当局は農地の灌漑システムを切断したとのこと。

 台湾当局は農民の損失に補償を実施しているものの、農民側は顧客が他の供給元を探すことになることから、長期にわたる収入低迷を招くのではと不安が広がっており、「政府はカネで自分たちの口をふさごうとしている」と不満を漏らしているといいます。

台湾半導体産業を直撃する「水不足」

 現地の役人によると、今回の旱魃は台湾で半世紀以上以来最悪の旱魃であり、台湾の半導体産業は巨大な苦難に直面している。スマホ、自動車やその他の現代生活の基礎となる全世界のサプライチェーンのなかで、半導体は日増しに欠くことのできないポイントになるとしています。

 半導体チップメーカーは、工場のウェハー(チップ基礎を構成するシリコン)の洗浄に大量の水を使用します。全世界の半導体供給は、既に電子製品需要激増から極度の逼迫状況にあり、欠水危機はハイテク産業がTSMCを主とした台湾への過度な半導体依存に不安を投げかけるものだと言います。

 世界の90%以上の先進半導体チップは台湾で生産されており、特にTSMCはApple、インテルなどの大ブランドにチップを供給。TSMCは今後3年間で1000億ドルを投資して生産能力を高め、市場での主導的な地位を更に強めるとしていました。

 TSMCは、旱魃は今のところ生産に影響がでていないものの、降雨量減少により、給水を維持するためには更に大きな努力が必要になるとしています。

農業用水が「犠牲」に

 ここ数ヶ月、台湾当局は既に航空機による人工降雨の実施、TSMC本社所在地の新竹に海水淡水化工場を建設したり、同市と隣接する河川からの用水路を修築するなどの対策を実施している他、各業界への水量削減を指導。水圧の低下により、毎週2日間の断水を実施している地方もある中、TSMCなどの多くの企業は水車を使用して他の地域からの送水を受けているとのこと。

 台湾がとっている対策の中で最も過激なものは、農地灌漑システムの切断で、7.4万ヘクタール(筆者注:群馬県の農地面積に相当)の農地に影響が出ています。

 新竹の63歳米農家田守実さんは「TSMCら半導体メーカーは水不足の苦労がわからない」と嘆いていますが、現地の役人の弁によると、深刻な灌漑が発生しているということは、灌漑設備が使用できたとしても、収穫はとても酷くなる。もし貴重な水資源を工場や家庭ではなく農地へ振り分けると「共倒れ」になるとのこと。

 農民の農業用水問題についての質問に対し、TMSCのスポークマンは「各業界と企業にとって、効率的な水の使用は非常に重要である」とし、また、同社は灌漑効率を高めるプロジェクトにも参加していると答えたそうです。

水不足は今年だけでは終わらない?

 台湾ではこれまでにも、2015年と2004年にも大規模な灌漑設備封鎖の措置がとられており、台湾大学土木工程教授遊敬雲は、「もし今後2,3年以内に同様の状況が再び発生したということは、台湾は深刻な水不足の時代に入ったと見れる」としています。

 TSMCによると、同社は2019年、新竹の設備で毎日6.3万トンの水を使用しており、現地のダム2箇所の給水量の10%を占めるとのこと。

 台湾成功大学水利工程教授王暁文によると、台湾の水資源供給の背後にある「最大の問題」は当局が水道料金を低すぎる水準に維持しており、浪費を奨励しているとのこと。

 一方で、当局は「水道料金の値上げは社会で比較的弱い層への影響が大きく、調整には非常に慎重」としています。

台湾世論は「半導体優先」「農業切り捨て」に理解

 新竹の農民、庄成登のビジネスパートナー、郭玉玲は、半導体産業の「悪魔化」は好きではないといいます。「もし新竹科技園(ハイテク工業区)が今日のように発展していなかったとすれば、我々もここに来て商売をしていない」。

 そう、TSMCのエンジニアは彼らにとって米農家の重要なお得意さんであり、「農民への経済上の貢献は少なく、水資源を浪費している」との批判は的外れだと述べています。

 台湾南部は農業地帯であると同時に新興工業の中心。TSMCの最先端半導体チップ設備も台湾南部の台南にありますが、付近のダムは既に渓流になっていたり、底が露出しているところもあるとか。

 台南付近の農業小都市では、多くの農民が当局の補助に頼っての生活に、少なくとも今の段階では満足していると話しているとのこと。但し、今後のことを考えると、台湾の世論としては既に台湾にとっても世界にとっても稲作は半導体ほど重要ではないと定まっており、商売替えを迫られるだろうとは感じているようです。

総評

 米中貿易戦争と半導体需要の逼迫により、台湾の半導体産業が注目されていますが、「半世紀に一度以上の水不足」という思わぬ敵に見舞われているようです。

 限りある水資源、台湾当局も世論も一致して「農業よりも半導体優先」。農民の「物分りの良さ」にも少し驚きますが、それだけ半導体が台湾の「基幹産業」として重要視されているということなのでしょうね。