KDDIは3月7日、スマートフォン向けのメタバース・Web3サービス群「αU (アルファユー)」を正式発表しました。メタバースを中心に5つのサービスを展開します。早速、体験してきました。
サービスはそれぞれ異なるアプリで展開。まずはサービスの核となる「αU metaverse(アルファユー メタバース)」。
自室から仮想空間上の渋谷や大阪など、様々なワールドに行き来できます。初期設定時には自身の分身となるアバターの見た目を改変可能。改変の幅はまだ狭いですが、今後拡充予定。
自室を模様替えしたり、ベッドで寝たりできます。今後実装を予定するフレンドを自室に呼べる機能は面白そうですね。基本的にはスマートフォンでの利用を想定。現時点ではVR HMDには非対応。
街中には人やロボットの姿のNPCのほか、接続中の他のプレイヤーが闊歩。複数人での会話を楽しめます。仮想空間なのに現実の交通ルール同様「横断歩道以外の道路を歩けない」仕様を不思議に感じましたが、これはメタバース上と現実をリンクさせた施策を想定して安全性を優先してのもの。
フレンドと遊びに行けたりアバターを踊らせたり色々できますが、まだまだ自由度は高くない印象。まだ検討段階の事項としつつも、VTuberが自身の姿で入れるような形や、Unity上でユーザー自身が編集したアニメーションの持ち込みなども構想はしているとのこと。もしインカメラやトラッカーで身振り手振りをアバターに投影できたら、もっと簡便にコミュニケーションの幅が広がりそうですね。
続いて2023年夏以降予定で別アプリの「αU shopping」。渋谷の街を歩いて様々な買い物を楽しめます。実店舗と連携したバーチャル店舗で店員が遠隔で接客、商品を紹介してもらえたり、カメラで実際の売り物を見せてもらえたりして、そこから購買を想定します。
点群データと写真から生成、再現された渋谷の街中を散策、テクテク歩くのは新しい発見があって良いと思いますが、飽きたら移動がダルくなると思います。この点については、今後お気に入りの店舗へのワープ機能を実装するなどの対策を考えているとのこと。まあSplatoonですら店舗や設備への移動には徒歩だけではなく地図からのワープ機能もあるので、ここは当然ですね。
ワールドの中にはバーチャルなauショップもあります。店内は街中よりもしっかりモデリングされており高解像度。店内を見渡すため、三人称視点から適宜一人称視点への切り替えも可能。遠隔接客の仕組みも備えます。テキストチャット・音声・ビデオチャットでの接客を選択可能。各スマホの3Dモデルが配置された什器からは購入ボタンの導線が、現時点では未機能ながら備えられていました。いずれは実際の購入などにも対応していく見通しです。
αU place。au/UQ店舗あり。接客もある。まだないけどゆくゆくは契約も pic.twitter.com/ymbmNaEaKT
— すまほん!! (@sm_hn) March 7, 2023
現実で外観と店内展示をスマートフォンで撮影するだけでもバーチャル空間にワールドを作るなど、店舗が出店しやすい仕組みも用意。リアル店舗でスマホをかざすとARで商品情報を表示するといった連動機能も今後提供予定。
アーティストと会場をバーチャル空間に再現し、高精細な音楽ライブを楽しめる「αU live」。Google Cloudの「Immersive Stream for XR」技術によってサーバー上でレンダリングする形式のため、高精細な映像をスマートフォンで楽しめるとしています。360度自由視点でグリグリカメラ視点を動かせます。現時点では「αU metaverse」フレンドとライブを観に行くことはできないとのこと。
αU Live pic.twitter.com/XRlPxypxLD
— すまほん!! (@sm_hn) March 7, 2023
デジタルアート作品の購入ができるαU market、αU dotadp、暗号資産を管理できるαU walletも提供。
著名アーティストの作品がPolygonブロックチェーンのNFTとして購入可能。現時点で決済はクレジットカードとauかんたん決済。
INFOBARの裏面がPDAになっている初代コンセプトモデル「info.bar」を題材としたNFTも販売。今後はこれをαUメタバースに持ち込んで、アバターに持たせるなども可能になるのだとか。
INFOBAR NFT。今後αUメタバース内に持ち込めるようになるそう pic.twitter.com/025f3LVfN0
— すまほん!! (@sm_hn) March 7, 2023
特定のNFT購入者にのみ、実店舗で値段割引するデジタル会員証的施策も用意しているとのこと。買っても何ら意味のないNFTに、KDDIなりに意義を持たせようと腐心している様子が伺えます。
まだ審査等の仕組みが整っていないため実装には至っていませんでしたが、今後は有名アーティストだけではなく、ユーザー作品の販売もやっていきたいとのこと。
かつて「Web3はこうなる」と持て囃されていた頃の、虚実入り乱れるメタバース・NFT像をもとに、有象無象の怪しい業者ではなく、大手通信企業であるKDDIが真摯に、包括的に取り組んだサービス群という印象を受けました。
メタバースも「自律した商圏」も、ユーザーが居てこそ初めて意味を持ちます。熱心なユーザーをどこまで定着させられるのか、そのための魅力や自由度をどこまで付加できるかが成功の鍵を握るでしょう。今後の展開を見守りたいところです。
今回発表の各サービスを無料体験できる「αU spring week 2023」を、渋谷区Hz Shibuyaにて3月8日から3月12日まで開催します。