シャープより、最新スマートフォン「AQUOS sense9」を一定期間貸与していただいたのでレビューします。
キャリア版は本日発売で、今回お借りした公開市場向けSIMフリーモデル(SH-M29)は11月21日発売予定。公開市場版価格は6+128GBモデルが6万円から、8+256GBモデルが6万円台後半の廉価モデルとなっています。
AQUOS senseシリーズと言えば、「いかにも安そうなやつ」「カメラが中央に寄ってるやつ」といったイメージが強かったと思いますが、今作はAQUOS R9・AQUOS wish4と同様、自由曲線を採り入れたカメラデザインとなり、突起部も左寄りに。
色はCoral。ピンク色ですね、かわいいです。電源ボタンと兼用の指紋認証は側面配置なので使いやすいです。音量ボタンと離れて配置となっています。
前面は現代的に。あえて言うなら筆者がボイスレコーダーとして使っているPixel 8のローズピンクに似ています。デフォルトの壁紙は各カラーに合ったものとなっているようです。
AQUOS R6以降、画面はこってりした色調。特にR6辺りは輝度にもよりますが暗部の階調表現が劣悪だった印象ですが、その後徐々に改善、廉価モデルの本機においてもそうした問題は緩和されており、普通に綺麗に見れると思います。アプリによって画質を変更する機能は、カメラ重視の人は一貫性のために「おススメ」以外を選ぶと良いと思います。ちなみに全白輝度の高いパネルを採用しているので、屋外での視認性はsenseシリーズとは思えないほど高いです。
ベゼルを見ても分かる通り、従来のAQUOSシリーズと比べると相当「今風」の前面に進化したと思います。
タレ目のゆるキャラっぽい感じがして可愛いです。イメチェンしたAQUOSの2024年モデルの中では一番、成功してるんじゃないかなと思います。
デカい廉価モデルも多いですが、サイズ感はiPhone 16 Pro無印に近いので持ちやすい一方、持ってみると、「あ、可愛くなってるけどいつものsenseだ」となります。金属筐体なのでひんやり、そして公称166gと軽いためです。この軽さで防水防塵MIL規格、耐衝撃対応は嬉しい点です。
SoCはSnapdragon 7s Gen 2という、名前負けしている極めて微妙なチップセットです。8シリーズに迫るSnapdragon 7+ Gen 2という超強力なチップセットまで存在する7シリーズの名前を冠するにも関わらず、実態はSnapdragon 6 Gen 1の強化版に過ぎないためです。
このようなQualcommのおかしな命名規則に対して消費者は十分警戒する必要がありますが、Snapdragon 6 Gen 1搭載のAQUOS sense8シリーズの後継機なので、特に問題ありません。「あ、めちゃくちゃ強くなったと勘違いしてたけど、そうじゃなくて、ちょっと強くなったのね」と正しく理解して選択すればOK。
- AnTuTu 10.3.6: 60万6567点
- Geekbench 6 CPU Single:1011
- Geekbench 6 CPU Multi:2932
- Geekbench 6 GPU:1771
- Geekbenck AI 1.1.0: Single Precision 740, Half Precision 659, Quantized 1406
- 3DMark Wild Life Extreme Stress Test:Best loop 809, Lowest loop 805,Stability 99.5%
- Steel Nomad Light Stress Test : 最大255, 最小252, 持続性98.8%
- Work 3.0 performance: 12693
体感的にはXアプリのメインTLが、120Hzでほとんど不快感無く動作。また、SoCのグレードの低い廉価機はどれだけ上っ面のスクロールが快適になったところで、ストレージ速度等もボトルネックとなり、たとえばファイラー、Google Driveからファイルを一括でアップロード中、フォルダ内をスクロールや遷移する時に露骨に動作がモタついたりしたものですが、本機はそうした引っ掛かりもなし。Google Play等で大容量のゲームアプリをインストールする際などにはまだまだハイエンドとの差を感じますが、そのように差を感じる場面が日常では減ってきたのではないかと思います。
カメラはメインの広角と、超広角の二眼構成。左がメインの広角、右が超広角。
基本的に広角はよく撮れています。
2倍でも綺麗に撮れます。
プレビュー画面では微妙かなと思ってもしっかり撮れている実力派。もちろんパワーを有り余らせている機種だと、プレビュー画面でさえゴリゴリに加工後の結果をシミュレーションして近づけてるなんてパターンもあるんですけど、基本的に廉価モデルだとそのような余力は足りなくなります。重要なのは撮影後の1枚の出来栄えですからね。
AQUOS senseシリーズでは、気合を入れた1枚を撮るので、撮影直後はバックグラウンドで加工を実施。そのためプレビュー画面はいまひとつで連写やモード切替に少しもたつく印象ですが、「おお、廉価機のSoCでこれだけの1枚が撮れるならいいか!」となると思います。実際、リソースに制約がある廉価機における正しい判断だと思います。
実際、暗いところでもしっかり撮れます。
品位の高い夜景が撮影できます。左右ともにメインの広角レンズ。右は2倍。
ご飯も料理判定が入り、非常に美味しそうに撮れます。これはちょっと手前のボケの流れる感じ(ブレ?)が気になりますが、肉の照った質感が非常に美味しそうに感じられる良い按配です。写実性を維持しながらも、美味しい食事の記憶色として非常に妥当だと思います。
周囲の寒暖よりも、少し皿の白い色に寄せる傾向があるので、格式高い料理ほど本機との相性は良いと思います。そうであっても肉やスープのシズル感やディテールは損なわれていません。本機は上位モデルと違ってLeicaコラボは謳っていないものの、上位モデルの研究開発で得られた画質処理の知見が、確実にトリクルダウンされています。
おそらく本機もシャープ特有のカンタツのレンズかと思います。可変絞りがないけれど出てくる光芒やフレアなどは、他社製品にもしばしば見られますが、シャープは特にそれが個性的な印象。広角レンズのこうした事象に関してはLeicaコラボのシャープ機らしいイメージに反しません。
それに対して超広角は周辺のパープルフリンジなど悪い方向に安っぽさが目立つ印象のレンズですが、そもそもこの迫力ある画角を楽しめるだけでも十分です。あくまでメインは広角。
また、超広角の最短撮影距離の短さを活かして、かなり寄れます。iPhoneではUIが滅茶苦茶で超広角の画質が悪い割に自動切り替えが標準ですが、AQUOS sense9の場合はあくまで「マクロ撮影のために超広角へ切り替えた方が良い状況で、画面上に遷移ボタンを表示する」というだけなので、ライト層もこだわり派も納得できる折衷案。
なお公開市場向けSIMフリーモデルであれば、SIMカード挿入時でもシャッター音が消去可能。日本の携帯キャリアの自主規制に従ったキャリア版はマナーモードでもシャッター音が鳴りますが、それらと違ってシャープの公開市場版は、ペットや子供の寝顔も被写体に苦痛を与えず撮影でき、プレゼンスライドの撮影やカメラOKの美術館でもマナーを守ることができます。消費者は積極的にこのようなマナーのあるスマートフォンを選択すべきです。
従来のAQUOSシリーズを考えると、あまりにもスピーカー音響への配慮がなく、音が箱鳴りによって分散して音質も音量も足りず、画面に秀でたAQUOSの魅力を削ぐほどでした。たとえば筆者はシャワーを浴びながら動画を視聴するので、いくらアクオスが「お風呂防水対応」と謳ったところで、シャワーの音で掻き消されるアクオスのお風呂防水対応もスピーカーも完全に無意味でした。
AQUOS sense9のスピーカーは、肝心のスピーカー音質自体は解像感が低く、一般的に高音質と呼べるものではありません。しかし本体から独立させるボックス構造のスピーカーなど設計面では努力し、少し立体的に聞こえるの恩恵はあり、広がるような音など改善は見られます。構造を見直したおかげで箱鳴りも抑えつつ、シャワー浴中でも「じゃあニュース番組でも見るか、おお聞こえるな」ぐらいの音量は出てきているので助かります。
ハプティクスは重厚感はなく相変わらず良くはありませんが、控えめに調整されています。カメラ起動時は短く振動。また立ち上がりが機敏のため、IMEの入力フィードバックとしてはオンにして利用してもいいかなと思える程度にはなっています。
電池容量は5000mAhで、賢い充電制御機能も備えます。
足りない部分もありますが、より優れた上位モデルであるRと、最上位のR proが存在することで、ラインナップとして非常に締まりが良いと思います。
日常利用重視の廉価機にはバランスの良いSoC、SoCの制約のギリギリまで粘った素晴らしい画質処理と広角レンズ、軽量で頑丈など、製品単体で見ても価格帯では十分な魅力を有していると思いますし、何より見た目が可愛い。ぜひ検討してみて下さい!
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