TCLは、「NXTPAPER 4.0」を採用したスマートフォン「NXTPAPER 60 Ultra」を海外市場で正式に発表しました。
ヨーロッパ、ラテンアメリカ、アジア太平洋地域で9月から順次発売予定で、日本での販売予定については現時点で発表はありません。執筆時点の価格は、12GB/256GBモデルが399.9ユーロ(約7万円)から、12GB/512GBモデルが549ユーロ(約9万5000円)で販売されています。
「NXTPAPER」は、「電子ペーパーっぽさ」を醸し出すためのメーカー独自のマーケティング用ブランディングです。特殊な光学処理と調光制御によって「発光型液晶でありながら紙に近い表示」を目指したハイブリッドディスプレイを謳います。要するに液晶ですね。
さて、電子ペーパーといえば「電源を切っても表示が残る」「表示維持時に電力を消費しない」という特徴は有名ですよね。おさらいしておくと、電子ペーパーは電気泳動方式という仕組みを用いており、LCDとは全く異なる性質です。マイクロカプセル内の白黒粒子を電界で動かし、外光を反射して白黒表示を行うこの技術は、目への負担が少ないとされ、Kindleなどの電子書籍端末で広く使われています。リフレッシュ速度は遅く、カラーや動画には不向きですが、静的なコンテンツを長時間表示するのに適しており、消費電力の低さも大きな利点です。
そして透過型液晶ディスプレイ(LCD)はあくまでもバックライトからの光をカラーフィルターにあてて画面表示を行います。表示し続けるためには電力を消費しますし、電源を切れば当然表示も消えます。また、反射を利用する反射型ディスプレイでもなく、発光を前提とした構造です。
液晶と電子ペーパー、2つの技術の「いいとこ取り」をしているかのようなNXTPAPER。本当にそんなことが可能なのでしょうか?
NXTPAPER 4.0は、短波長のブルーライトをハードウェア側で低減。読書モード時には色温度を暖色側に調整することで目への負担を軽減しているとのこと。
画面には円偏光フィルム(CPL)を組み込み、発光の偏光面を回転させることで、ナノマトリクス・リソグラフィ技術によるマット仕上げで外光の映り込みをほぼゼロに抑え、まるで自然光が当たっているかのような柔らかい光を再現しているとのこと。
さらに、画面の明るさ調整にはDC調光(直流駆動)方式が採用されており、PWM方式のようなフリッカー(ちらつき)を排除。
これらによって、電子ペーパーに近い目の快適さを持ちつつ、液晶らしい色の鮮やかさと動画性能の両立を可能にしたと主張しています。
直射日光下での視認性という点では、Nxtpaperはナノマット加工と円偏光によって反射を極限まで抑制しているものの、あくまで透過型である以上、コントラストはバックライトに依存します。そのため、太陽光ほどコントラストが向上する反射型のE Inkと比較した際に、日中屋外の環境下での「紙のような読みやすさ」に関してはやはり電子ペーパーに軍配が上がるでしょう。
また、読書向けの「インクペーパーモード」、色付きの「カラーペーパーモード」、通知を遮断して白黒表示に切り替える「Max Inkモード」の3つをワンタッチで切り替えることができます。
たとえば、Max Inkモードでは通知を遮断し、白黒表示に切り替えることで、省電力で長時間の読書を快適に楽しむことができるとのこと。
これでまったくもって電子ペーパーではないというのはおわかりいただけたかと思いますが、たとえば「バックライト付き電子ペーパー端末使ってるけど、結局ほとんどバックライト点けて使ってるんだよなぁ。たまに動画も観たくなるし。でもモノクロ表示で低反射、マットな仕上げの電子ペーパー端末の感覚も恋しい」みたいな人にはぴったりの可能性もあるので、あくまで変な謳い文句に騙されず、きちんと考えて選ぶ分には、選択肢の一つとしては全然悪くないと思います。
スペック面では、SoCにMediaTekの「Dimensity 7400」を搭載し、実行メモリは12GB、内蔵ストレージは最大512GBまで選択可能で、内実はミッドハイスマートフォン。
カメラは、背面に5000万画素のメインカメラと超広角カメラを含むトリプルカメラ構成を採用しており、広角からマクロ撮影まで幅広く対応可能です。日常のスナップショットから風景まで、様々なシーンに対応するとTCLは主張しています。

TCLが本機の公式サイト上で掲載している写真。ステージフォトグラフィーを撮影できるとしているが、特に本機で撮影したとの注釈はない。
バッテリー容量は約5200mAhで、33Wの急速充電にも対応。また、IP68等級の防塵・防滴性能も備えています。
本体は幅が7.57mmの薄型ですが、重量は227gと比較的重いです。この重さは片手操作や長時間の読書の際に疲れやすさに直結しそうで、懸念点です。カメラに期待するかどうかで判断がわかれそうです。
スペックは以下の通り。
Nxtpaper 60 Ultra | |
---|---|
ディスプレイ | 7.2インチ FHD+(2340 × 1080)、最大120 Hz、NXTPAPER 4.0ディスプレイ(反射ゼロ・アンチグレア・ブルーライト低減・DC調光・ナノマトリックス) |
プロセッサ | MediaTek Dimensity 7400(4 nm) |
実行メモリ/内蔵ストレージ | 12 GB/256 GB、12GB/512 GB |
背面カメラ | トリプル:50 MP メイン(OIS)、50 MP テレフォト(3倍、OIS)、8 MP 超広角(4K動画対応) |
前面カメラ | 32 MP(2K動画対応) |
バッテリー | 5,200 mAh(33 W急速充電、約90分でフル充電) |
本体サイズ・重量 | 厚さ約7.57mm、重量227g |
防水・防塵 | IP68 等級 |
カラー | Lunar White、Nebula Black |
ソフトウェア | Android 15、3回のOSアップデート保証、7年間のセキュリティアップデート |
参考価格 | 399ユーロ(256GBモデル:約7万円)、549ユーロ(512GBモデル:約9万5000円) |
発売地域 | 欧州、ラテンアメリカ、アジア太平洋にて2025年9月以降発売予定 |