今回はレポート:中国家電量販店の中の「日本メーカー」の続きをお送りします。
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中国家電量販店、テレビ売り場はどうなっているのか?
つい10年ほど前まで、テレビメーカーといえば日本勢が強かったものですが、日立やパイオニア、NECなどは撤退、「REGZA」ブランドを展開する東芝テレビ部門は中国海信(ハイセンス)に売却、シャープは丸ごと台湾鴻海(ホンハイ)傘下。ヨドバシカメラ各店舗のテレビ売場特等席は、5年ほど前からLGが占めています。
世界最大の市場、中国のテレビ売場はどうなっているのか?上海市虹口区の量販店をのぞいてみました。
テレビ売り場
売場の特等席、エスカレーター上がってすぐの場所を占めているのは、「創維(Skyworth)」というメーカー。写真では中央のテレビ以外は画面が暗くなっていますが、実は全部電源がついています。中央は有機EL、他は液晶という違い。他のメーカーブースも同様で、どうやら日本のようにバックライトを強くしまくって画面を綺麗に見せる、という売り方をしていないようです。
中国家電量販店のテレビ売り場で店員に訊いてみた
まずは世間話から
とりあえず、ここの販売員のおばちゃんに話を聞いてみました。日本と中国、どちらがいいというわけでもありませんが、売場の見せ方、セールストークの展開の差異も注目していきます。
東京から来た、55インチあたりが見たい。
東京は人が多いでしょ?
いや、上海の方が多いね。地下鉄の混雑具合は上海の方が酷い。
でも上海市の(戸籍)人口が1,800万で、東京は……
東京は1,300万だが、郊外交通機関が発達しているから、一概に比べられんところはある。都市範囲は東京のほうが広い。
でも東京は部屋が狭いでしょ。100平米だと分譲価格いくらくらい?
そんな大きな物件自体、あまりないんだよなあ。1億円、500万元台くらいかな?
けっこう安いのね。
のっけから話が大脱線しましたが、割愛してテレビの話へ進みます。
「創維(Skyworth)」について訊いてみた
創維というメーカーは日本だと聞かないけど、(中国)国産?
中国国内メーカーだね。30年やってる老舗で、WEB販売でも基本的にずっと販売台数1位の人気メーカーだよ。ハイエンドモデルのQ6Aは韓国LGの有機ELパネルを使ってる。
(韓国製部品って、自発的に言うんだ……)
少し驚きながら値札を見ると、2万6,998元(約45万円)。65型の有機ELとしては「安い」けど……。
55型だと、Q5Aがキャンペーンで5,000元(約8万4,000円)だよ
(最上位機種はスルーするのか……!)
え、4Kテレビの55型で8万円台?!
ちょっと驚き。それと、ほかのブースでも同じようなやりとりがありましたが、表示価格の端数を切った額を提示するスタイルのようです。
これがQ5A。デザイン的には、幅狭で黒の枠ぶちにシルバーのスタンドと、「普通の今風のテレビ」って感じですね。スマホもそうですが、枠が狭くなるとデザインで差をつける余地がなくなるので、どうも「見たところで……」というところがあります。
もはやスマートテレビが一般的
Q5Aのセールスポイントは?
創維開発のAI搭載で、実行メモリ2GB、保存メモリは16GB
(ん、スマホの話か?)
一瞬、スマホの話かと思いましたが、どうやら中国では電源を入れるとホーム画面が立ち上がる「スマートテレビ」としての使用が一般的なので、「テレビ受信機」というよりも「映像コンテンツ視聴を主要な用途とした大画面端末」という認識が、日本よりも強いようです。
OSは?
Androidベースで、創維と百度(バイドゥ)が共同開発した独自OS。サクサク動くよ。
料理名をリモコンに向かって話すと「3分間クッキング」のような作り方動画が出て来る実演を交えたりしつつ、プロモーション用画面を見せてくれました。完全にスペック表ですね。
「音響は米国の名門メーカー、JBL」というのも、セールスポイントなようです。ただ、画質についてはとくに説明なし。私の感想としては、「普通の4Kテレビ」でした。
日本の売り場との違い鮮明
こういう会話、日本の売場だと、以下のようなマニアックな話が展開されがちです。
ソニーは動きのある映像に強い、とくにサッカー観戦で威力を発揮❗
ただ、ソニーの画質補正は滑らかに動きすぎるので、それが気持ち悪いという人もいる😣
映画のようなコマ送りを前提とした映像だと、パナや東芝の方が~(以下略
こういうマニアな画質比較が話の中心になりがちですが、「まあ、もはや利き酒とかの世界だよな……」という疑問もあるので、売り方として、「画質はとくに悪くない」ことを前提として、スペックや機能の話を進める中国のやり方もアリなのかなぁ、と。
もちろん、「テレビは映像を視聴する機器」という基本はもっともなので、画質比較自体を否定するものではありませんが。
日本メーカーについて
つづけて、おばちゃんと雑談。
それにしても中国メーカーは安い、日本メーカーのテレビが売れないわけだなあ。
ほら、日本メーカーは高技術分野でまだ強いから……
そうは言っても、ハイエンドモデルのテレビに日本の技術をどこで使ってるんだよ、パネルは韓国、音響は米国でしょ。
中国市場は大きいから、中国人の消費者を満足させれば商売が成り立つ。日本の人口は1億人だっけ?日本メーカーも外に出て行かないとダメよね。
日本は国内市場がそこそこ大きいから、その危機感微妙なんだよなあ……
日本メーカー、SONYのBRAVIAコーナーを発見
日本ブランドはソニーとシャープがブースを設置していました。シャープは台湾企業の子会社なので飛ばして、ソニーを見てみましょう。日本のソニーのブースと同じデザインです。
ソニーといえば、日本で初のAndroid TV採用テレビを発売したメーカー。出したものの売場展開は尻すぼみになってしまった感がありますが、スマートTVが中心の中国市場では、売り方が変わっているのでしょうか。訊いてみました。
OSはなに?
Androidだよ
実行メモリいくら?
たぶん、2GBじゃないかな……
なんだか頼りない感じ。スペック表を表示させていた創維と比べても、「スマートテレビ」としての機能推しが、あまり感じられませんでした。
ちなみに、手前に展示しているモデルはローエンドのX7500Eの49型で、表示価格は5,200元(約8万8,000円)と、けっこうお求めやすいお値段。
ただ、「これが高技術のソニー製品だ」という主張はあまり感じられない売場かな、と感じました。色々やってみたうえで、「日本メーカーだけど、そんなに高くないですよ」という路線になったのかもしれませんが。BRAVIAの画面スピーカー(アコースティックサーフェス)とか、好きなんですけどね。
中国のスマートテレビ事情については、今後も追っていきたいと思います。