華為(ファーウェイ)、OPPO、小米、vivo……。巨大国内メーカーがしのぎを削る中国市場ですが、なんと有名メーカーから「販売数ゼロ」のモデルが誕生したとの記事が、7月24日に鳳凰科技で掲載されていました。「14億人もいてゼロってなんだ?」と理解に苦しむところですが、ともかく紹介します。
長期にわたり、oppoとvivo(OV)のスマホが高価格低性能の代表と呼ばれている。両社のスナップドラゴン660のモデルが、他社のスナップドラゴン845のモデルよりも高い。
しかし、高価格低性能でOVより酷いところがある。信じないのなら、海信(ハイセンス)のスマホ「Hisense H20」を見るといい。
おそらくほとんどの人は、このスマホを聞いたこともないだろう。百度百科(Baiduの運営している、中国版Wikipediaのようなもの)の資料も非常に少ない。
そういや、東芝のテレビ部門を買収したハイセンスって、スマホも作っていたんですね。スペックを見るとスナップドラゴン636、実行メモリ6GB、保存容量128GB、Android 8.1、19:9の1080×2280解像度のベゼルレスディスプレイ搭載。「ふつーの低価格モデル」という印象ですが。
もし小米のこのようなモデルなら、おそらく1,000元強(1万円台後半)だろう。ハイセンスは? 2,999元(約5万円)だ。この価格が信じられるだろうか。もしサムスンやアップルがこの値段で出すならいいだろう、だが、お前みたいな誰も聞いたことのないブランドが何故?
んー、低性能のモデルを平気で高価格で売っているこういうメーカー、我が国にも(以下省略)。
XiaomiのSnapdragon 636搭載機というと、最近韓国にも投入されたRedmi Note 5あたりだろうか。価格1099元(約1万8千円)から。実行6GBメモリ/ストレージ128GBのモデルが定価1699人民元(約2万7千円)。ブランドの確立されたXiaomiでこの値段なのに、確かにスマートフォンでのブランド力の乏しいハイセンスの機種としては、異常なほど強気な値段だ。機能にもデザインにも目新しさは感じられない。
結果、どうなったか?このモデルは発売から約1カ月になるが、各サイトの販売台数が全てゼロ、最も悲惨な国産スマホとなった。
「可哀想そうな人には恨むべきところがある」とは言うが、このスマホはこの性能でこんなに高い価格を設定しているのだから、自殺行為と言っていいだろう。
販売台数ゼロは流石に極端な気がしますが、たしかに小米の同等機なら半分の値段、CPU以外を抑えれば3分の1の値段で買えるものを、わざわざ5万円も出して買わないのは、キャリアから実質ゼロ円だとでも言われない限り、当然の判断でしょう。自由市場は恐ろしいですね。
なお、「ゼロ」はさすがに盛っているのではと心配になり、中国最大のECサイト、京東のハイセンス公式ショップで確認してみました。
……うん、確かに評価ゼロ件でした。
ハイセンスといえば誰もが知るテレビメーカーです。テレビでは世界シェア1位ですね。テレビと比べるとスマホは手を抜いてやっているのかもしれません。
珠海格力電器(GREE、白物家電を扱うメーカーでエアコンでは中国最大手)も同じくスマホを展開しています。格力の董明珠は、自社製スマホを従業員に使うことを強制していました。ハイセンスはそれすらやっていないとのことです。ある意味、ハイセンスがホワイト企業ということかもしれませんが。
あるネットユーザーは、「ハイセンスのスマホは今後テレビの販促に使うためだ。考えてもみたまえ、もしテレビを買ったら2,999元(約5万円)のスマホがオマケにつくと言えば、お得感がないか?」と言う。この評論もすばらしい。
筆者も不思議なのは、今日のようにスマホの競争がこんなにも激烈で、次々とスマホメーカーが脱落している。以前、楽視、酷派、金立は日の出の勢いだったが、今ではもうダメだ。多くの国外の巨頭が次々と中国市場から脱落しており、コスパのいいレノボ、魅族(Meizu)、锤子(Smartisan)も風前の灯火になっている。
「テレビのオマケ用に値付けを高くしている説」、なかなかエスプリきいてますね。どこかで使いたいです。
そういえば、パソコンでは圧倒的なシェアを誇るレノボも、スマホでは苦戦しているようですね。テレビメーカーのハイセンスが、なぜノコノコ出て来たのか、確かに理解に苦しむところです。
それにしても、低性能で高価格だと、ほんとにレビューすらつかないどころか、そもそも1台も売れないって、シビアな市場ですね。
携帯事業者が顧客の通信費を原資にして競争力のない製品を安売りして延命させる閉鎖市場と比べれば、メーカーが容赦のない激しい競争と評価に晒される多死多産の自由市場の方が、評価の低い製品は淘汰され、メーカーは鍛えられ、真に強い製品が生き残るので、結果として国民・消費者にとって幸福なのではないだろうか。