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日本で販売されるApple Watchはなぜ心電図機能が使えないのか。

 Apple Watch Series 4が正式発表され、購入しました。しかし、期待の新機能ひとつである心電図機能は米国以外では利用できないようになっているようです。なぜこのような状況になっているのか。日本の状況を調べてみました。

現状の規制

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 現在日本で販売されている一般向けの心電計はオムロンやその他のメーカから販売されています。ただ、これらの機器を販売するにはすべて厚生労働省により認可された第三者機関の審査が必要です。

 例えばこちらのオムロンの心電計は医療機器承認番号、管理医療機器、特定保守管理医療機器の3つの承認を得て販売されています。これらはすべて厚生労働省により認可された第三者機関、独立行政法人 医療品医療機器総合機構が主に承認しています。

 これらの審査を通った上で医療機器として一般向けに販売することができます。

 ではAppleもこの認可を得れば日本でも合法的に販売でき、心電図機能が利用できる!というわけにもいかないようです。

Appleが日本国内で心電図機能を利用できるまで

 Appleはアメリカに本社を置く企業です。おそらく医療機器等外国製造業者の登録申請が必要なのではと思います。

※Apple Japanは販売業であり製造業は行ってないのでおそらく必要なのではないかと推測しています。

 この登録申請は厚生労働大臣の認可が必要で、かつ5年おきに更新が必要な資格となります。そして登録申請時には巨額の手数料を払う必要があります。

 今回の場合、心電図機能と仮定した場合おそらくクラスⅡになるかと思います。その場合審査だけで1040万6700、適合性の費用で114万4700円、計1155万1400が必要になってきます。またこれらの検査を国外で行う場合は別途旅費が必要とのこと。

 そしてこれもまた推測ですが、Apple Watchのアルミニウムケースやステンレス、カラーバリエーションごとに審査が必要なのではないかと疑っています。理由としては後述していますが、安全性・無菌状態など厳しい条件の確保が必要となっています。製造過程においてバリエーションが違うことで、原材料が違ってくるのは当たり前ではないでしょうか。ただ、気になるのはその場合はバンドも審査基準になるのかどうか。

 仮に審査が必要となった場合、交換できるバンドはすべて審査にかける必要がありそうです。ただサードパーティは自己責任になり、そのあたりはグレーゾーンとなるのでしょうか……?

 それらを考慮した場合、日本で心電図機能を利用できるようにして販売するには億単位の費用が考慮されます。おそろしい、おそろしい。

 そして仮に審査を受け認可が降りた場合、今度はApple Watchがどのような性能、基準なのかリスク情報、安全性、無菌状態の確保など設計段階から厚労省基準の検査が必要な可能性があります。またこれらの情報はすべて独立行政法人 医療品医療機器総合機構のホームページで公開されるので、技術的な情報公開を拒むAppleがこれらを拒否した可能性も否めなくはないと思います。

登録の過程

 そのため、心電図機能を活かす過程として推測できるのは

医療機器等外国製造業者の登録申請

(厚生労働大臣認可)

医療機器のクラス分類

(推定でクラスⅡに該当する特別保守管理医療機器と推測)

管理医療機器及び特別保守管理医療機器の販売業・貸与業の許可申請及び医療機器承認番号の取得

販売

(販売する店舗ごとで販売業の許可申請、及び販売従業員の資格が必須)

と思います。

 仮に心電図機能が日本国内で利用できたとしても、販売できるのは販売許可の認可が降りた店舗かつ医療関係従事者や専用の資格を取得した者のみになるのです。近年ではドラッグストアの店員でも取得している人がいるなどハードルは低くなっているらしいですが、おそらくApple Japanの従業員でこれらの資格を持っている人はかなり稀となり、新規採用者を募る可能性があります。Apple Watchを売るためだけに時間も費用も人も必要になってくるわけです。

アメリカでは?

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 今回のイベントではアメリカ食品医薬品局(略称FDA:日本で言う厚生労働省と農林水産省や経済産業省の中で食品や医薬品、医療機器に関する管理承認を行う政府機関)の承認を経て販売されているとのこと。日本と違って審査が緩いのかと思えばアメリカも同等にクラス分類や製品審査があるそうなので、ここらへんは本国ならではの努力と交渉があったのではないかと思います。

 ただアメリカでもECGのアプリケーションは年末に公開予定なので、米国でも発売直後から使える、というわけにもいかないようです。(最近のAppleにありがちな開発遅れか法絡みの問題?)

日本では解禁されるのか?

規制のぬるま湯を打破する革命的便利さとコスパ

 国内において販売されているSeries 4のモデルはすべて従来の光学式心拍センサーに加え新たに電子心拍センサーが搭載されています。そのためハードウェアは共通のものを利用しているかと思われるので、後に厚生労働省と協力し承認されるようなことがあればアップデートにおいて心電図機能が解禁される可能性はあると思います。

 現在日本において心電図機能がある端末は安くても3万円~10万円台とちょっと高価です。それなのにネットワーク機能は有料だったり搭載されていなかったり、計測に時間がかかったり、そして計測するたびに体に取り付けたりと不便な面が多いのです。

 しかしApple Watchで心電図機能が解禁された場合、常に腕につけることが可能で、かつ30秒で取得でき、データはすべてクラウドに残る、さらにデータを医療機関やその他に転送することができて追加料金不要で使える、使い方は腕につけてデジタルクラウンを触るだけ

 常に体の一部としてつけておくことができて、その他にも機能があり、操作も簡単、データもバッチリ。それなのにたった5万円以下で購入可能となればそれはまさに黒船来航、日本の医療業界では大歓迎されるのではないかと思っています。これらの業界の後押しを受けて承認手続きがスムーズに進めばいいな、とは思っています。

厚生労働省としては

 厚生労働省としては海外の医療機器を日本で展開し辛い現状を打破するために近年、アメリカと承認の過程をできる限り近づけて、展開しやすいような環境づくりに取り組んでいるようです。ただその場判断や無意味な規制を打って出ている総務省とはまたひと味ちがうイメージを受けます。

まとめ

 さて、以上が発表直後に調べて数日でまとめた内容になります。しかしMed IT Tech様でも似たような記事が掲載され思わず「先手を打たれた!」とちょっとショックを受けていました。しかし、医療の本業の方がこのような記事を掲載され、筆者としては大変参考になりました。おおよその予想が当たっており少しうれしく感じております。

 そのMed IT Tech様の記事によると、今回のApple Watch Series 4ですが、FDAの審査でもハードウェアの審査ではなくECG/EKG、Heart Rate Alert の2つのアプリに対して認可が降りただけのようです。現在、ソフトウェアレベルで動作する医療機器に関してはAppleを含む世界の国々で国際的な審査と基準を策定中であるようです。

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 さて法律の厳しさを改めて感じましたが、まさかアメリカでもハードウェアではなく、ソフトウェアで認可を受けていたのは予想外でした。これらの可能性を踏まえると、日本国内でもソフトウェアという面で認可が降りた場合、そう遠くない未来に使えるようになるのではないのか、とちょっと期待しています。

 そして今後多くのウェアラブルデバイスがこのような健康面を考えた機能を搭載してくると思います。他社やベンチャー企業がこのような問題に直面することもありえなくはない話です。国民が健康維持のためにデバイスを購入しようとしているのに法律面で日本では使えないというのはなんとも皮肉な話です。多くの業界がスマートフォンの登場で法律やルールを改正したのと同様、健康機器にもそのような波が迫っているのかも知れません。新しい時代に適応した、判断そしてスムーズな審査基準を求めたいところです。

 以前、総務省の文字が刻印されたiPhone7が話題になりましたが、Apple Watch Series 4の認可が降りた場合は厚労省公認の文字が記載されたApple Watchが誕生(?)するのでしょうか……?

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