漫画村運営者特定。ブロッキング論根拠崩れ立法も違憲か

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 一般財団法人情報法制研究所(JILIS)は、日本政府の知的財産戦略本部の海賊版対策タスクフォースについての意見書を発表しました。前提条件に重大な誤認があったため、ブロッキングを一度白紙に戻すべきとしています。

 このタスクフォースは設置目的として、「海賊版サイトは運営者特定が困難で削除できない」という前提があり、その上で、通常なら憲法上に保障された「通信の秘密」を侵害するブロッキングも、他に手段がないことから緊急避難の補充性の要件を満たし、許されるのではないかという議論が展開されてきました。

 カドカワの川上量生代表取締役社長がブロッキング実施を強力に主張。NTTは通信事業者としてあるまじきブロッキング実施宣言を行い、電気通信事業法違反のいわば「犯罪予告」をするといった場面もありました。

 ところが、弁護士の山口貴士氏が、米国の地裁で漫画家を原告とし氏名不詳の海賊版サイト発信者に対する訴訟を提起。海賊版サイトが大量のアクセスに耐えるために利用するCDN「クラウドフレア」に対し、ディスカバリー制度を活用した発信者情報開示請求により、海賊版サイトの発信者を特定したとしています。Buzzfeedなどの報道によれば、この海賊版サイトは漫画村で間違いなく、今後は日本国内で管理者に対し刑事告訴、民事告訴を行うとしています。

Mangamura

(日本政府の知財本部で名指しされていた海賊版サイトの筆頭『漫画村』)

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 CDNは応じないから手段がない、などと出版社側は主張してきましたが、実際は手を尽くしていなかったか、虚偽説明を行っていたということになります。表現・出版・言論という国民の重要な権利を守るべき出版社が、この根拠となる憲法21条をビジネスのために破壊し、さらにはNTTに違法行為宣言まで行わせていたとなれば、大きく歴史に汚点を残すことになるでしょう。川上量生代表取締役社長が株主総会で株主からの怒号の中で解任されたとしてもまったく不思議ではない、大変な事態です。

 海賊版対策会議ではブロッキングが世界42カ国で導入されているなどとの資料が提示されていましたが、JILISによると、少なくともこの中で15カ国では15年間実施実績がないとしています。

 なお、この点については参議院総務委員会で吉川沙織議員が指摘している通り、もちろん立法または司法的手続きを経ることなく「忖度」でアクセスブロッキングを行っている滅茶苦茶な国は存在しません。

 JILISは、CDNへの開示請求などブロッキング以外の手段が存在するにもかかわらず、ブロッキングに関する立法を行い通信の秘密を制限することは、憲法違反と評価されると指摘。ブロッキングについての検討はいったん白紙に戻し、リーチサイト違法化や電子出版のダウンロード違法化の立法措置や、民事訴訟法やプロバイダ責任制限法の改正を議論すべきとしています。