AppleのiOS向けアプリストア「App Store」にて、2ヶ月以上に渡って削除されていたトレンドマイクロ製のアプリのうち、一部アプリの配信が再開されました。
配信が再開されたのはパスワードマネージャー、ウイルスバスター for Home Network、フリーWi-Fiプロテクション。
依然として、複数のアプリ群が削除されたままの状況となっています。その中には主力製品ウイルスバスターモバイルも含まれています。
トレンドマイクロは今回の一部アプリの配信再開について短いアナウンスを出していますが、配信停止から配信再開までAppleとの間でどのようなやり取りが行われたかなどの詳細については触れられていません。家電量販店などの店頭に置かれたウイルスバスターモバイルを購入してもインストールできないのは相変わらずですが、これについての補償や撤去などに関しても触れられていません。
平素は、当社製品・サービスをご愛顧賜りまして誠にありがとうございます。
当社アプリが2018年9月10日(日本時間)からApp Store上で一時公開停止されていましたが、
2018年11月17日(日本時間)より一部製品の公開が再開されましたのでご報告、ご案内申し上げます。
詳細については、こちら(https://appweb.trendmicro.com/SupportNews/NewsDetail.aspx?id=3271)のサポート情報もあわせてご確認ください。
お客さまには大変ご心配とご迷惑をおかけしていることを深くお詫び申し上げます。引き続き当社製品をご愛顧賜りますよう、よろしくお願いいたします。
トレンドマイクロは、ユーザーの同意を得ずにユーザーのデータを収集し無断送信する機能を備えたスパイウェア同然のソフトをmacOS向けApp Storeにて配信していたことが発覚し、9月上旬、全てのトレンドマイクロ製 iOS / macOSアプリが削除され、トレンドマイクロのデベロッパー登録ページにもアクセスできなくなっていました。
トレンドマイクロは10月31日、釈明文を掲載。セキュリティ事業者であればユーザーの情報を収集する必要があるとの主張を展開。セキュリティ事業者を医師になぞらえ、医師が世界中で分析を行うことで医療は過去100年間進歩したことを以て、ユーザーからの無断情報収集を正当化しました。
セキュリティとは関連性がないアプリ(例:バンキングアプリ)で悪いことが起きるのを適切に防ぐといった形で当社が一歩先を行くためには、一定レベルの状況把握が必要になると考えております。
(中略)
医療分野において過去100年間にもたらされた目覚しい発展によって、我々は恩恵を受けてきました。この成功の要因の一つは、エコシステム全体での世界レベルでのコラボレーションにあります。医師は世界中の事例を分析しています。サイバーセキュリティの分野でも同様で、エコシステム全体が役割を果たすことに頼っています。
本件に関する皆さまのご理解とご協力にあらためて感謝申し上げます。同時に、過去30年間取り組んできているように、当社は世界各地にいる数多くのお客さまに対して最善のセキュリティ保護、プライバシー保護を提供すべく、たゆまぬ努力を継続してまいります。
こうしたトレンドマイクロの声明について、セキュリティ研究家の高木浩光氏は、セキュリティ業界の信用を傷つける思想をトレンドマイクロが開陳したものであるとして厳しく批判しています。
セキュリティ企業Kasperskyが解説しているように、iOSにはその仕組み上、アンチウイルスアプリはそもそも存在できません。さもウイルスをバスターできるかのような紛らわしい名称のソフトがあったからと言って、安易に購入してはいけません。ユーザーはセキュリティに関する最低限のリテラシーを持った上で、ツールを取捨選択する必要があります。