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Huaweiのスマホは日本人が開発?中国で「新説」が話題に
最近、中国の亜洲通訊社社長徐静波が講演の中で、「華為(Huawei)のスマホは日本人が開発した」と述べたことが、中国で物議を醸したそうです。上観新聞が伝えました。そうだったら喜ばしいのですが、「もしそれが本当なら何故日本勢は……?」という疑問は置いといて、先へ進みましょう。
除静波にとって、高技術領域において、日本は「神」のような存在だといいます。ソニー、日立、東芝、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、どれも日本が最高ではないか?、と。中国製品が強くなった今日でも、彼らは本能で、中国は日本に勝てない、日本が中国に勝てない分野があるとすれば、日本がやらないというだけで、技術は日本が強い。中国が強いのは、日本人が手伝っているからだ、という考えがあるのだとか。日本ブランドですね。
だからこそ、華為が日本横浜に研究所を立ち上げ、400人を招聘したことが、「華為のスマホは日本人が開発した」という認識になったのだろうといいます。
スマホ開発とは何か、誰が作るのか
では事実として、華為は誰が開発したのか?華為を追って20年、毎年華為の生産ラインを見に行き、華為の世界各地にある研究センターを参観してきたという筆者が説き明かします。
スマホ開発とはなにか?という問題については、無限に話が広がってしまうので、境界線を定める必要があるといいます。華為のスマホはグーグルのAndroidシステムを使用しており、また、華為のあるスマホもクアルコムのチップを使用していましたが、それを以て華為のスマホはグーグル、あるいはクアルコムが開発したと言えるか?明らかに、そうではないでしょう、ならばスマホ開発とはなにか?
スマホ開発とは、製品マネージャーの指導のもとに、スマホに対して定義をおこない、スマホのなかで解決が必要な問題を解決し、既存の技術を整合し、スマホ製品を作り出して、商業生産することだといいます。
また、ここでも話がいくつかの層に分かれるようです。スマホの開発は生産マネージャーの指導のもとに展開されるものですが、これは一人の総監と複数の製品マネージャーを指す場合もあり、一人ひとりのマネージャーがそれぞれの受け持ちを担当するそうです。華為スマホの大将は余承東(Richard Yu)、スマホの方向性を決める総経理は何剛ですが、彼らは自分がスマホの研究者であると言うことはなく、彼らは指導者であり、開発に参加してもいるものの、一般には開発者とは呼ばないといいます。
ユーザーニーズ・技術・コスト
スマホの開発は製品に対して、グレードとユーザーグループの方面からの定義づけを行う必要がある、例えば女性向け、ビジネス向け、学生向けなどであり、これらは異なる基礎から、異なる技術を採用し、異なる機能を搭載する必要があるそうです。
スマホの研究開発には、ピンポイントなソリューションが必要になる、例えばiPhoneが登場したときには、ある場所を握ると電波が弱くなる「天线门(デスグリップ)」が発生したと指摘します。つまり、アンテナの場所を握ると、アンテナが塞がれて電波に影響が出たものでした。この問題に対して、開発にあたっては解決方法を示す必要があり、例えばアンテナを2つにして上下に配置する、しかしこれでは電池消耗が激しくなるので、上の方を握っていれば下のアンテナが働き、下の方を握れば上部のアンテナが働く、スマート化をする必要があったといいます。
ほかにも、カメラ機能ではみなが中望遠を望んでいましたが、今の技術ではレンズをそう長くするわけにもいかず、製品マネージャーが出した答えがトリプルレンズを採用して、そのうちの一つを中望遠にすることだったそうです。
スマホの開発には今の技術を採用する必要があり、コストが見合うことを前提に、製品を定義していくといいます。さらに、各方面の機能とも強調する必要があるといいます。たとえば、2万mAhのバッテリーを搭載したいとして、作れるかといえば、作れる。しかし、厚さ2cm以内というのなら無理だと。2TBの内蔵メモリが必要だとして、コストが1万元必要なら、これも無理だといいます。機能と価格のバランス、当然といえば当然の問題ですが、まあ失敗例はいくらでも思いつきますね。
とにかく、このように各種の技術と技術を整合させ、各種の問題を解決し、消費者の需要に合致した製品を定義し、見本を作って、最後に生産する、これがスマホ開発である、というのがこの記事での定義だそうです。
Huaweiはどこで技術研究しているのか?
華為には華為と栄耀、ふたつのブランドがあり、それぞれに多くの製品ラインナップがあります。また、華為には世界各地に多くの研究拠点を抱えていますが、実際にスマホを開発しているのは、どこなのでしょうか?
まず、「上研所」だといいます。これは華為ハイエンドスマホの開発拠点で、筆者も参観したことがあるとか。世界一流のスマホ検測設備を有し、数千人がスマホ開発に参加しているのだとか。李小籠(ジェット・リーと同姓同名ですね)というMateの製品マネージャーは以前上海で仕事をしており、数年前はMateの製品ラインナップの製品マネージャーに過ぎなかったのが、今では華為スマホ部門の副総裁になっているそうです。
上研所は華為ハイエンドスマホの最も核心となるチームであり、世界各国の人材が集まっているそうですが、少なくとも筆者は日本人のメンバーを見たことも聞いたこともないとか。これは少し残念ですね。
「北研所」、というのは北京北清路にある北京研究所だそうです。ここでは、多くの華為スマホの製品ラインナップを研究しているのだとか。
西安にある「西研所」では、青年向けのミドルレンジ・ローエンドを開発しているそうです。
これらはみな、華為スマホ開発の核心かつ主体であり、スマホそのものの開発チームは数千人だといいます。そして、スマホ開発を支える技術のチームは更に多いのだとか。そういえば、日本のスマホメーカーはどれも電機メーカーなので、「スマホメーカー」がスマホに関する各種機能の開発チームを持っている、という状況は、ちょっとなかったように思います。とはいえ、そこまで有機的に連関できていたかと言えばアレですが。
関連技術開発拠点で、最も有名なものは深圳の「2012実験室」であり、多くの基礎的な技術はみなここで開発されるか、最初に探索されているそうです。たとえば栄耀のMagicスマホに搭載されている「yoyo」という人工知能製品も、ここの作品だといいます。2012実験室の人数は4万人に及び、収益や市場のためでなく、未来のために技術開発しているのだとか。ここらへん、資金的余裕ですね。選択と集中…………うーん。
全世界に華為は十数箇所の開発拠点を構築しており、インド、フランス、ドイツにも拠点があり、スマホと関係があるものは、仏国パリの四角関連開発拠点だといいます。「フランス」というと突拍子もないようですが、要はライカと共有している開発拠点があるそうです。
また、華為はノキアの作っていた4100万画素カメラのチームも買収し、フィンランドにも開発拠点があるのだとか。
まさか、Lumia 1020 / Nokia 808 Pure View 開発チーム?ということは、ひょっとして、4000万画素カメラ含むP20 Proのトリプルレンズカメラを作っているのは……
今日の華為は、少数の中国人が開発しているのではなく、全世界の優秀な人材によって各方面の技術開発が進められており、これも華為が強大である一つの証明であるといいます。エリクソンがなくなったことで嘆いている場合ではありませんね。
横浜研究拠点はごく一部に過ぎない
本題に戻ると、具体的な話として、日本の横浜にも研究開発拠点はあり、求人の際に、給料が明らかに日本企業より高かったため、日本で話題になりました。
しかしこの研究拠点は400人前後に過ぎず、この規模は華為の数万人の研究チームの中でごく小さな一部分であって、筆者の知るところによれば、この研究所は主にECを研究しており、そうであるならば、基本的にスマホ開発とはあまり関係がないといいます。
中国人にとって、自分たちに足りないのは時間であり、どのような領域であっても努力すれば突破が可能である、製品領域は更に機会があるところだ、といいます。日本人に比べて、中国人は新しいモノを生み出すのに長けており、一方日本人は厳格で細やかである、日本人は生産管理に長けているというのは正しいが、イノベーションは中国人がやったほうがいい。そうでなければ、日本のスマホが何故ここまでボコボコにやられているのか?と、記事が結ばれています。
感想
最後についてはぐうの音も出ませんが、日本人もイノベーション力はある筈だと、私は思います。インスタントラーメンだって……いや、それはなしとして、空母機動部隊という概念の発明や、ウォークマンのように生活スタイルを変える製品も生み出してきたのですから、決して日本人が劣っているわけではないかと。
しかし、基礎開発に4万人の研究人員を配置、という華為の体制を見ると、「結局は資金力か」と感じざるを得ませんね。