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ソニーモバイルを苦しめる「事業部の壁」、Xperia 1は突破できるか?

ソニーのプロ技術結集で期待の究極スマホ「Xperia 1」

 MWC2019 にて、ソニーモバイルは 「1から再起を図るスマホ」として、 Xperia 1 を発表しました。

 Xperia 1 はソニーのプロ部門の技術を余すところなく取り入れ、ソニーとして究極のエンターテイメント・クリエイティブ体験を提供するスマートフォンとして位置づけられています。

 なんだかXperia Z シリーズが登場した時にも聞いたような言葉ですが…. しかし今度ばかりは少し事情が異なるようです。

なぜ?Xperiaシリーズのカメラ衰退期

カメラで優位だったXperia

 Xperia Z シリーズ時代の Xperia スマートフォンは何よりもそのカメラ性能の高さがアイデンティティを形作っていました。

 Xperia Z1 が登場した時、同社は今や馴染み深い存在となった DxOMark カメラテスト に Xperia Z1 のカメラ性能をテストさせ、スマートフォンとしてはトップクラスなスコアを同社公式サイトでも誇っていました。

編集長

各社がカメラスコアを競い合う、カメラ評価の権威DxOMark。最近のXperiaはそこから逃げ続けているので今では信じられない話かもしれませんが、長らくDxOMark首位の座に居座り続けたNokiaの4100万画素カメラ搭載Symbian S60機「808 PureView」を5年前、その王座から颯爽と引きずり下ろしたのは、当時One Sonyを掲げ登場した最強旗艦スマホXperia Z2だったのです。

他社に劣後

 しかし今はどうでしょう。 カメラ画質で優秀なスマホは何かと問われ、Xperiaの名前を思い出す人は少ないでしょう。iPhone との対比での「メシマズカメラ」の話から始まり、トップのSamsung、そしてその座を奪ったHuaweiには、今となってはもはや埋めようのない差をつけられています。

 プロ向けのカメラも製造販売しているソニーのスマートフォンが、何故このような状況になってしまったのでしょうか。

ノイズリダクションすらまともにかけていなかったことが判明

 海外サイトTrustedReviews は MWC2019 にて、ソニーのグローバル・マーケティング担当であるAdam Marsh 氏に聞いた興味深い話を取り上げています。

 今までの Xperia スマートフォンは JPEG に変換された写真データを元にノイズリダクションなどのポストプロセスを行っていたが、それがセンサーから渡された生のデータ (RAW) の時点で行われるようになる。これによってカメラの品質は大幅に改善するだろう、というものです。

 ある意味驚きの内容です。今、市場にあるフラグシップスマートフォンは既に、カメラセンサーから受け取ったデータを直接画像処理にかけ、ノイズの抑制や各種調整を行うのが当然の流れとなっています。

 それはなぜか?一度 JPEG にしてしまえばセンサーから得られた多くの情報は失われ、また JPEG 圧縮がされることで復元不可能なノイズが発生してしまうからです。

 しかし、 Xperiaは今までずっとJPG圧縮後にノイズリダクションをかけていた……ということになります。一体なぜこのようなことになっていたのでしょうか。

突き当たる「事業部の壁」

 記事中では、この当然の疑問にもわかりやすい回答がされています。

 今まで α(アルファ)シリーズのような画像処理を行ってこなかったのは、ソニーの部署間の対立によるものです。例えばあなたが 3000 ポンドを払って購入したカメラに搭載されている技術が当然のようにスマートフォンに搭載されたら、あなたは高価なカメラを買ったことを後悔してしまうかもしれません。

 わかりやすく、そして情けない内容に閉口してしまいます。ソニーグループの他セクションの売上に影響を及ぼしてしまう可能性を危惧していたからだ、というのです。

槙氏の登場で一新、One Sonyへ回帰

(SOMC 槙公雄副社長)

 しかし、ソニーのカメラ事業部でミラーレス一眼を成功に導いた槙公雄氏がソニーモバイルの副社長に就任してからその流れは変わったと言います。

 槙氏は製品開発責任者となり、Xperia XZ4になるはずだった製品の開発をキャンセル。αや映画撮影にも用いられる業務カメラCineAlta(シネアルタ)の技術をXperiaに投入するべく連携を進めました。

(CineAlta VENICE)

 以前よりも部門間の壁は減り、同じ体験を与えるカメラとスマートフォンを提供することは、ソニーにとって強みになるという判断に至ったのだそうです。

 実際、 Xperia 1 では α のアルゴリズムを取り入れた画像処理エンジンである BIONZ X for Mobile が搭載されています。これは部署間の連携の結果生まれたものであることもインタビューで説明されています。

総評

 TrustedReviewsのインタビューの内容は、現在ソニーモバイルが置かれる状況、そして没落の理由を示す何よりの根拠になっているのではないでしょうか。

 ちなみにこのインタビュー記事、ソニーから直々に「連携に影響を与える部署間の争いはない」と訂正が要求されたことが末尾に追記されており、ソニーに蔓延る病巣がまだまだ癒えきっていないのだろうなと却って勘繰らせる、何とも言えない味わい深さを醸し出しています。

 果たしてXperiaは「1からの再スタート」を切ることができるのでしょうか。その鍵は事業部間の壁の突破にありそうです。

続報:Xperia XZ3のカメラ、DxOMarkスコア79点の惨状。

関連:究極の映画スマホ誕生!ソニーの技術満載「Xperia1」国内発表レポ

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