昨年11月にSamsungが発表した、Android 9 Pieベースの新UI「One UI」。実は、Galaxy S10シリーズやGalaxy Foldといった最新モデルに搭載されるだけでなく、Galaxy S8/S9シリーズにもAndroid 9 Pieアップデートと同時に配信されています。
筆者としてはGalaxy S10の入手を目前に控えていますが、一足早く、新しい「One UI」の使い勝手をレビューしてみます。
Index
先代「Samsung Experience」
One UIの先祖にあたるのは「Samsung Experience(旧Touch Wiz)」です。Galaxy S6の頃に確立されたUIで、フローティングウインドウなどマルチタスク機能が秀逸でした。後に、Samsung DeXのデスクトップUIとしても採用され、スマホ / タブレット / デスクトップの3形態で破綻なく動作するなど、非常に完成度の高いUIでした。
「One UI」の特徴
One UIの特徴は、近年のトレンドであるディスプレイの縦長化に対応し、UIを手の届きやすい画面下部に集約したことにあります。また、マルチタスク画面などAndroid 9 Pieの操作体系も取り込んでいますが、使い勝手を良くする工夫が随所に見られるのも嬉しいところです。ここからは、One UIで大きく変更された点を紹介していきます。
リストの工夫
連絡先や設定画面、Bixby Homeといった縦スクロールのコンテンツでは、スクロール領域の先頭部に余白を持たせてあり、先頭の要素に手の届きやすくなっています。軽く上スワイプすると余白が見えなくなる位置に吸着スクロールするなど、細かい工夫も見られます。
ただし、ファーストビューで表示できる情報量が減ってしまうのが惜しい所です。
標準アプリのデザイン
電話、連絡先、メッセージ、時計、ギャラリーといった標準アプリのデザインにも手が加えられています。いずれも、タブが画面下部に配置されており、UI全体が下寄りになっています。
やや不格好な印象も否めませんが、片手ホールド時の使い勝手は確実に改善されています。
ダイアログの表示位置
一般のアプリにも影響するのが、ダイアログの表示位置です。One UIでは画面中央ではなく画面下部にダイアログが表示されます。ユーザとしては手が届きやすくて便利ですが、Androidアプリの開発をしている方は要注意ですね。Twitterアプリのようにダイアログを独自実装している場合は影響を受けないようです。
通知領域の工夫
Androidの標準的なUIでは、画面上部から引き出す必要のある通知領域。One UIでは、ホーム画面を下スワイプするだけで開くことができます。さらに下スワイプすると、トグルスイッチが画面下部まで降りて来て、操作しやすい位置に。いずれも、指紋センサのジェスチャ操作で操作することが可能です。
ナビゲーションバーのデザイン
Galaxy S7まで、頑なにハードウェアキーを採用してきたSamsung。Galaxy S8で導入されたナビゲーションバーは独特のデザインで、普段は非表示にしておく機能がありました。
One UIでは、標準的なデザインに回帰したものの非表示機能が消滅。代わりに、OPPO端末のようなジェスチャー式のナビバーが選択可能になりました。いずれも、ホームボタンを右スワイプしてアプリを切り替えるAndroid 9 Pieの操作体系に対応しています。少し気になるのは、ナビバーの背景色が灰色に固定されており、黒背景のアプリではナビバーがやや目立つ点です。
マルチタスク画面のUI変更
One UIで唯一、残念な変更となったのがマルチタスク画面です。
Android 9 Pieのお流儀に合わせた横スクロール方式となり、起動中アプリの一覧性が著しく悪化しました。
また、従来のようなジェスチャ操作での画面分割やポップアップ表示ができなくなりました。ここでも、Android 9 Pieのお流儀に従い、アイコン部分をタップしてメニューから選択する必要があります。ここは是非とも従来の使い勝手を取り戻して欲しいですね。
総括
ディスプレイの縦長化に適応する形で独自の進化を遂げたOne UIですが、流石にAndroid 9 PieのアグレッシブなUI変更を手懐けるには至っていない印象です。逆に、One UIにはまだまだ「伸びしろ」がある、という見方もできます。
ここ1, 2年を思い返せば、画面の狭額縁化、過渡期のノッチ、画面内指紋センサ、折りたたみ式ディスプレイ、とハードウェア面の大きな進化が目立ちました。そろそろ、ソフトウェア面(UI/UX)の大きな進化が必要な時期なのかもしれません。