日本にも進出している中国の大手スマホメーカー・OPPOが、500億元(約8,000億円)の巨費を5G/6G、人工智能、ビッグデータ、ハードウェア、ソフトウェア、システムの研究開発に投入すると表明したと、中国メディアが報じています。
OPPOは2008年に影像コンテンツ事業を「断捨離」し、スマホ事業に集中した経緯があるだけに、「何故今になってまた『OPPOはスマホメーカーにとどまらない』と言い出すのか?」「勝算はあるのか?」と注目されています。中国「英才雑誌」が詳しく伝えました。
OPPOが研究開発に巨額投資
中国メディア伝える「OPPOのこれまで」実店舗に注力
まず、OPPOのこれまでについて紹介されています。OPPOは2008年に最初の携帯電話をリリース。これ以前、OPPOは影像コンテンツ事業が好調でしたが、業界の衰退にあわせて、陳明永は切り捨てを断行、携帯電話市場に専念することで、「千元携帯電話時代」の恩恵を享受したといいます。
その後、AppleとGoogleが参入し、ノキアが倒れ、携帯電話業界はスマホ時代に。OPPOの売れ行き停滞と大量の在庫は、OPPOと販売業者の間に深い溝を作ることとなり、ここで陳明永は7億元を投じて、実体店販売チャネルとの関係を強化したそうです。
2011年、小米が興り、ファン経済、インターネット販売が中国国産スマホブランドに新たな局面をもたらしました。陳明永はここで逆張りをし、オフラインの実体店整備に注力することに。
最終的に、スマホの爆発的な成長と、地方都市の消費拡大の中で、スマホブランドの販売台数トップになりました。
市場の変化
OPPOがこれまでに乗り切った3度の難局は、いずれも陳明永の「逆張り」により乗り切ってきたが、過去の「スマホを作ることに集中」という路線と比べると、OPPOの投資は「ブレ」ているようだ、と指摘します。
ここで、中国のスマホ市場について説明されています。Canalysが発表した第3四半期中国大陸市場スマホ出荷統計によると、OPPOの市場シェアは17.4%まで後退。2018年の21.1%から、前年同期比で20%下落。華為が伸びている他は、vivo、小米、Apple、いずれも下落しているそうです。
また同時に、中国では5G商用が2019年に開始、技術面で華為が先行していることは疑いなく、5Gスマホのニーズが高まるほど、華為の他ブランドに対する優位は増していくと言います。
競争では不利になりつつありますが、スマホ市場全体も不景気なようです。2017年以降、グローバルでのスマホ出荷台数は下降傾向にあり、中国のネットユーザーに占めるスマホユーザーの割合も既に99.1%。スマホ市場は既にボトルネック時期を迎えており、人口ボーナスによる市場成長は既に続かないものと指摘。
スマホメーカー脱皮に新戦略
昨年12月10日、OPPO創始者・陳明永は未来科技大会にて、世界レベルの核心技術の構築、スマホを中核的な入り口とした多元インターフェイス・スマート端末エコシステムの建設、ユーザーサービス発想の持続的な向上を、OPPOの今後の3大核心戦略にすると発表したそうです。
「OPPOは既にただのスマホメーカーではない」との叫びは、やはりこれまでの「逆張り」路線とは明らかに異なる、といいます。
陳明永は今後3年、OPPOは500億元の研究開発予算を投入し、5G/6G、人工智能、AR、ビッグデータ、ハードウェア、ソフトウェア、システムなどの各領域を注視し続けると表明。
また、「今後、業界全体として、純粋な意味でのスマホ会社というのはなくなっていくかも知れない」とも述べておりますが、これについても「ブレているのでは」と厳しい評価。
技術で言えば、OPPOに先んじて華為が既に5G技術領域を広く開拓しており、世界で4社(クアルコム、サムスン、メディアテック、華為)しかないスマホ5Gチップメーカーにまでなっています。3G~4G時代のスマホチップ戦争はクアルコムが席巻、MediaTekは低空飛行、サムスンは自給自足、華為は後発ながら成長し、巨大なスマホ市場の中で、チップの黄金時代も僅か数社を残すばかりになったと指摘します。
公開資料によれば、OPPOの国際特許申請数は4万件以上、ライセンス件数1.4万件以上。特許項目はスマホにとどまらず、5G、AI、ビックデータ、IoT、クラウド、AR等の各先進技術に及ぶのだとか。
ここで、華為事件を連想してしまう、と「英才雑誌」の記事では言います。技術領域で世界最先端にある華為ですら、外部からの制限を受ける環境下での最悪の想定をしており、スマホ市場、さらに言えばスマートメーカーの核心技術のピラミッドの中で、OPPOが5G時代に一角を占めようとすれば、直面する圧力と困難が如何に大きいかうかがえるだろう、と言います。
IoTでXiaomiと激突か
また一方で、OPPPは今後の戦略として「万物の融合」を強調、IoT業界へ進出しようとしていますが、OPPOと小米の対決は避けられないとしています。
2019年初、小米グループは「スマホ+AIoT(All in AIoT)」のWエンジン戦略を発表、5年間で100億元を投入するとしています。5G時代にあわせて小米グループは迅速に戦略をアップデートさせ、CEO雷軍は全社員へのメッセージで、「5G+AIoT」の戦場に今後5年間小米は少なくとも500億元投入する、としているそうです。
小米の実績ですが、2019年通年で、小米のIoTと生活消費品は40%の成長を維持、2019年Q3には営業収入に156億元寄与したとのこと。
これまでOPPOは逆張りにより大成功を収めてきましたが、今回の業界変革期は、華為や小米が先行している分野での戦いになります。他分野への巨額投資、果たして吉と出るか凶と出るか。いずれにしても、「どんなものが出てくるんだろう」と、単純に楽しみではあります。