VAIO株式会社は、2021年2月18日、新製品発表会を実施しました。今回新たに発表するのが、ボディにカーボンファイバー(炭素繊維強化樹脂)を採用した、世界初フルカーボン筐体の旗艦モバイルPC「VAIO Z」。
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(VAIO株式会社代表取締役社長山本知弘氏)
ノートPCを高性能に、長時間駆動にするなど、簡単だといいます。重い部品、重い電池を搭載すればいいだけだからです。
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(VAIO株式会社取締役執行役員PC事業本部長林薫氏)
しかしVAIOはそうではない、「単位重量あたり」の性能/電池駆動という指標を提唱。軽量で処理性能、電池駆動、強靭さを実現。
VAIO Zのデザインは、炭素繊維強化樹脂の一本の繊維の流れから形作るという発想から生まれたといいます。曲げることで剛性を得られる一方で、その加工は非常に難しいものの、VAIOはカーボン素材をモバイルPCに取り入れてきた先駆者でもあり、東レを中心とした日本企業と協力、筐体立体構造をフルカーボンで立体成型。素材特性を理解し、量産可能な形へ。カーボンだからこそ必然の形状に。CFRP成型については、高い圧力と温度で成型。圧力をかけて作る本物のドライカーボンとのこと。
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(VAIO Zデザイン担当は森澤有人氏。SIEでPS5デザインも担当)
立体成型の優れた軽量と剛性を活かし、その余裕を、大容量電池や大画面搭載、大型アクティブクーリングファンと大型クリエイティブノート向けTiger Lake Hプロセッサーライン搭載といった充実仕様に繋げているといいます。
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(ビデオメッセージを寄せたIntel General Manager Fredrik Hamberger氏、IntelとVAIOの緊密な連携を強調、VAIO Zの発表を祝福)
低炭素時代に登場するフルカーボンのVAIO Z。もちろん炭素自体が悪いわけではなく、次世代モバイルPCに必要な素材。カーボンリサイクルは再生材の性能が十分でなく進んでいないことから、VAIOはパートナーとともに技術開発を進めるとしています。VAIOはカーボン技術で先頭にいる、未来のモバイルPCへの大きな一歩と自信を見せました。
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(VAIO株式会社 PC事業本部 エンジニアリング統括部 統括部長 巣山剛志氏)
VAIOはソニーからの独立から、2021年7月に満7年を迎えます。独立にあたり海外から全て撤退。しかし2015年から徐々に海外進出を再開し、現在は海外販売台数比率は約5割まで回復。
ところが上位モデルは、国内向けにVGAなどレガシーポート対応モデルを投入することに注力し、残念ながら世界においてはかつてのような評価を得られるには至っていなかったといいます。
VAIOの海外展開について、ビジネス戦略を担当する執行役員兼PC事業本部副本部長の宮入専氏が説明。
海外市場への製品開発には2つの手法があるといいます。
1つ目が、日本のVAIO本社/安曇野工場が開発した製品を海外展開する手法。この手法でVAIOブランドの本質を世界中の消費者に。
2つ目が、独自に作り上げた「ローカルフィットモデル開発スキーム」。各地域を熟知した現地提携事業者に商品企画を担ってもらい、日本側が監修協力して共に作り上げる手法。
ブランド一貫性を保ちながら現地化していくという課題を、こうした開発手法で解消、ヒット商品を生み出しているとのこと。とはいえ困難もあり、現地事業者と双方が真に納得できる製品が結実し始めたのは最近とも。たとえば2020年3月に南米で発売した「VAIO FE 14 / FE15」は現地販売ランキングに入るヒットに。
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(ビジネス戦略を担当する 執行役員 PC事業本部 副本部長 宮入専氏)
また、中国市場向け「VAIO FH14」は現地Web媒体ZOLによりRecommended Awardを受賞。
VAIO世界展開のパズルの、最後のピースが「VAIO Z」によって埋まったといいます。本機は「グローバルフラッグシップ」として北米、中国、アジア、日本市場にて同時発表。
山本社長は、Appleが新たに発表したMacBookについて「衝撃」と評し、M1プロセッサーの素晴らしさは、消費電力と処理性能の均衡を打ち破るブレークスルー(進歩による障壁突破)を成し遂げたことにあると分析。
一方でVAIOの立体成型フルカーボン筐体もまた、速さ、スタミナ、強靭さ、軽量性の均衡を破るブレークスルーを実現、このデザインと技術によるブレークスルーこそがVAIOの遺伝子であり期待されている革新であるといいます。
世界にお届けするVAIO Zは日本アルプスの安曇野本社工場から出荷。世界の利用者にとって革新の象徴となるよう挑戦し続けると、今後のさらなる海外市場への意気込みを語りました。
質疑応答によれば、グローバル旗艦「VAIO Z」についてまだ具体的販売目標は設けていないとのこと。世界市場はこれまで模索してきた中で、価値に共感してもらえる世界のユーザーはどれだけ居るのか、数量ありきは本来の姿ではなく、まだ慎重に考えており、「VAIOの海外事業かくあるべきか」を固めた上で具体的数量目標を設けていくとしました。
法人市場で、他社は遠隔勤務を切り口にしているが、VAIOはどのように攻略していくのか。VAIO独立直後は法人向けが半分を大きく下回る割合だったものの、2019年、2020年は法人が約8割。これに加えて、法人ニーズですぐに使える導入支援サービス(キッティング)や、ライフサイクル管理、様々な法人需要を満たすソリューションで応えていくといいます。もちろん遠隔勤務含む多様な働き方需要に対応していくとも。
Z復活で開発体制やキーワード「快」の変化や今後振り切ったモデルが増えるのか、そしてVAIOブランド認知世代の高齢化や若年層訴求について問われると、あくまで快は土台で、その先にZのような挑戦があり、今後もより一層取り組んでいく。その一環として、PCを使わない若い世代に価値をどう届けるかも真剣に検討しており、今後具体的な形で出していきたいと述べました。
Chromebookについて問われると、Chromebook自体は業界活性化の観点から歓迎。VAIOとしてどういう形でどのOSがベストか、常に柔軟に考えており、一切参入しないとの考えはないものの、いつ何を出すかも決まっていないと述べるに留まりました。
VAIO発表内ではMacBookに関する言及も目立ちました。AppleのM1チップについて、取締役執行役員PC事業本部長林薫氏は、Appleらしい先進的な取り組みでありリスペクト、歴史を振り返るとAppleは自社製品発表会でVAIOを引き合いに出していた例もあり、お互いにリスペクトしあいながら切磋琢磨する関係を目指したいとのこと。
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(思い返せばジョブズの初代MacBook Air発表会など、VAIOが比較対象として出されていました。VAIO Zの内覧会では『MacBook ProはVAIO Z 1.5個分の重量』といった挑戦的展示も。独立前、かつて追われる側だったVAIOが、今は追う側に回り攻勢を仕掛けようとしている新時代の構図を象徴)
VAIO Zに関する社内外反響を問われると、社外からは「いつ次のZが出るのか」という要望はひっきりなしにあったといい、社内では「Zを開発する夢のために仕事をして生きている開発者が多い」とし、設計チームの本機開発のモチベーションの高さを伺わせました。
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