バルミューダがスマートフォン「BALMUDA Phone」を発表し、ネット上で物議を醸しているのがスペックに対する価格。10万を超える価格に対してネット上では高すぎると批判があります。
これは本当に高いのでしょうか?私は高いとは思いません。その理由を書いていきます。
そもそもバルミューダとは
バルミューダは主に白物家電を販売している日本の会社です。
製品の性能はシンプルに使いやすく。それでもハイエンドに劣らないパフォーマンス、そして最高のデザインを備えたプロダクトを販売しています。
故にやや高級志向の製品を備えています。例えば数年前に話題になったオーブントースター。少しの水を足すことで普段のパンをより美味しく食べることができます。こちらの価格は2万5千800円。
そしてオーブンレンジは4万7千円から。炊飯器は4万5千円、扇風機は3万9千円……一般的な家電と比較するとやや高いことがわかります。
しかしながら、バルミューダの製品はしっかりと一部のニッチなユーザに受け入れられヒットしていました。
10万円は高いか?
さて、そのようなやや高級志向の会社が新たに販売するスマートフォンが10万4800円。果たしてこれは高いのでしょうか?性能を改めて確認しましょう。
SoCはSnapdragon 765、メモリは6GB、ストレージは128GB、画面は4.9インチのフルHD。FeliCaや耐水もあり。
普通のスマートフォンと思えば問題ない性能ですね。しかしこれに10万円はやや高い印象を受けます。
しかしこれはスマートフォンのスペックを理解しているユーザからすれば”高い”という印象を受けるだけです。ではこれを別のものに例えましょう。
例えばオタクに身近なカメラで例えましょう。SONYのα7IIIシリーズはわずか20万円で購入できるフルサイズミラーレスとして大ヒットしました。スペックを見てこれは20万円で安いとわかりますね。
ではライカやハッセルブラッドはどうでしょうか。2社のカメラは100万前後の製品も多い高級カメラメーカーです。そんなもの誰が買うのか?と思われると思われますが、2社とも一定のユーザから支持を受け、売れています。
しかしスペックだけで見るとどうでしょうか?果たしてこれらが100万を超える理由になるでしょうか?ほとんどの人が100万は高い!と思うでしょう。なぜならα7IIIは20万円で高性能。レンズもたくさん。ライカやハッセルブラッドは高いと思います。
車で例えましょう。税金や運転のしやすさでホンダN-BOXが売れています。なぜなら軽自動車ながら規格いっぱいの空間。でも運転支援やシートアレンジなどの機能は乗用車に劣らないとコスパ最強です。
では高いクルマは売れていないのか?いいえ、売れています。トヨタの高級ブランド、レクサスは過去最高の販売台数を記録しています。ただ総合的なランキングでみると、ものすごく売れているわけではありません。すごくニッチですが一部のユーザに受け入れられ、皮肉なことに盗難ランキングでも上位に入っているくらい人気です。
ではバッグで例えましょう。バッグはリュックサックが一番機能性が優れており、長時間の移動も楽です。荷物もたくさん入りますね。Amazonで売っている2000円の適当なリュックでOKでしょう。
ではなぜルイ・ヴィトンやシャネルの何十万のバッグが売れるのでしょうか?それらはその商品の本質を見て買っている人、そしてブランドに対してお金を払っているわけです。決して機能性だけで選んでいるわけではないのです。
改めてバルミューダで考えてみます。確かにSnapdragon 765のスマートフォンなんて5万円あれば買えます。しかし、直線を排除し、とことんこだわったデザイン。長年使うと味が出る仕様。これはどう考えてもコスパ云々の製品ではなく、ブランド品なのです。
ましてや”バルミューダ”というブランドで考えたときに5万で売るなど、それはブランドの安売りになりかねません。今回、バルミューダのコンセプトとしては上質な体験を提供すること。それに見合うアプリも必要です。それらの開発費を回収し、数年サポートを行うと思えばブランド料を考慮しても10万円という価格は妥当ではないでしょうか。
あなたはバルミューダにとってのターゲットではない
バルミューダも批判があることはある程度想定していたかと思います。なぜならバルミューダの製品は高いと言われるのは慣れているからです。最初にも述べた2万5千のトースター、それ2000円程度のトースターで良いでしょう?オーブンレンジは4万7千円から、それも1万円のレンジで良いでしょう?炊飯器の4万5千円、そんなのXiaomiの2万円しないやつで良いでしょう?扇風機3万9千円、こちらも5000円くらいので十分でしょう?そう思う人はそれでいいのです。価格に納得した人だけがバルミューダの製品を購入し、ここまでバルミューダは成長しています。
なお私は一時、バルミューダのオーブンレンジの購入を検討しましたが、やめました。コンビニのお弁当が入らないからです。陰キャが買うものではないです。
スマートフォンというプロダクトの難しさ
ただし、考慮しなければいけない点もあります。それはスマートフォンという製品寿命の短さです。
一般的な白物家電はだいたい5年~10年ほどで買い換えるかと思います。そしておおよその人は壊れない限り買い替えません。しかしスマートフォンはそうもいきません。24時間365日、持ち歩いて使うものです。そしていくら大切に使ったところでバッテリー劣化、パッキンの劣化による水の侵入、ディスプレイの劣化などハードウェアの劣化が避けれないデバイスです。
そして最も危惧するべきなのがソフトウェアです。10年前に販売されていたWindows 7搭載のPCはすでにサポートが打ち切り。ソフトウェアの寿命はとても短いのです。オーブントースターやオーブントースター、扇風機にはソフトウェアの寿命はありません。バルミューダとてこの辺りを一切考慮してないわけがありません。開発には京セラ、ソフトバンクも関わっています。まさかどこの会社も最後までこのポイントを指摘しなかったとは考えづらいです。おそらく白物家電同様にニッチな需要を攻める覚悟で、このスマートフォンという激戦区で戦う覚悟を決めたのだと思います。
ただそれらすべてを考慮した上で「売れる」「売れない」を判断しろと言われると難しいのです。なぜなら「売れる」「売れない」なんて売ってみなければわからないからです。たまに現実は予測を超えることがあります。
バルミューダが敬意を表示していたスティーブ・ジョブズも述べていたように、誰もみたことがないものは示してみなければわからないからです。ただ別の時期にはどんなマーケティングをしても駄作は売れないものは売れないと言っています。物を売るって難しいですね。私は今回の試みを応援したいと思います。
余談:ストーリーに関しては……
バルミューダの公式サイトで開発までのストーリーが以下のように掲載されています。
それらが、あくまでも私たち人間が使うものだと考え、人々にとって重要な芸術的な価値を付与することができたのは、彼だけだったのだと思います。このテキストの最後に。彼に最大の敬意を表します。故・スティーブ・ジョブズ氏に。
BALMYUDA Phone より引用
スティーブ・ジョブズといえば「自分の人生最後のときを使ってでも、Appleの資産400億ドルすべて(当時)を投じてでもAndroidを叩き潰す。Androidは盗作だ。全面的に争う。」と述べていたことが自伝で明らかになっています。それくらいAndroidを毛嫌いしていたジョブズに対してAndroidのスマートフォンを出す……うーん冒涜に等しい行為では……。