楽天モバイルは新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII(ラクテンアンリミット7)」を発表しました。
従来のプラン「Rakuten UN-LIMIT VI(ラクテンアンリミット6)」との最大の違いは、「1GB以下0円」が廃止された点です。既存プランの顧客も7月1日に強制的に新プランへと移行されます。
なぜ0円を廃止するのか。楽天モバイル新たな3つの課題のうち1つとして、黒字化を掲げていますので、その一環でしょう。急ピッチで進める基地局整備への投資から楽天モバイルは大きな赤字を強いられており、楽天グループ全体に影響を与えています。経営を安定させ株主を安心させるためにも黒字化は急務です。これが要因でしょう。
楽天モバイルの大きな魅力であった「ほとんど使わなかった月は0円」。これを無くすのは顧客からの大きな反発があるのではないか?
これについて、データ利用量が少なくても楽天市場の利用が多い場合もあり、新プランでは楽天市場のポイントも上がるので、多くの顧客に残ってもらえるだろうとの見通しを示しました。
また当初、既存プラン利用者は「1GB以下0円」で維持できるよう検討していたとのこと。
ただし電気通信事業法の第27条に抵触のおそれがあることから、これが不可能となったようです。
改正電気通信事業法第27条は期間拘束や長期割引に関して規制しており、おそらく「既存顧客のみ永年0円可(≒長期利用者のみ毎月980円割引)」とすることが長期割引の利益提供上限額を超えると解釈され得るため、既存顧客も新規顧客も一律で3GB以下980円にせざるを得なかったものとみられます。
これがもし仮に既存プランからの自動移行なく、新プランと併存(2プラン)という形であれば、事業法への抵触なく「既存顧客のみ1GB以下0円」を維持できた可能性はありそうにも思いますが、1プランへのこだわりからこれも断念したのでしょう。
このように今回の楽天モバイルの0円廃止は、早期黒字化方針から端を発し、誤算から既存顧客のみ0円が不可能となって生じているため、これをもって「直ちにpovoの0円も廃止されるのでは」とする巷の説は杞憂ではないかと思います。ただしKDDIにとってpovoは楽天モバイル対抗の役目も担っており、競争相手が0円をやめた以上、法令上ではなく単に商売上の理由から0円を廃止する可能性自体はありえないわけではありません。
なお新プランへの移行期間として、1GB以下のユーザーは、4ヶ月間はそのまま実質0円での利用が可能。このキャンペーンは既存顧客も新規顧客も平等に対象。2022年10月末まで実施します。
この1GB以下無料キャンペーンの「4ヶ月」について、矢沢社長は「『関係各所』と相談した」上で夏休みと被る期間なので問題ないだろうと判断しているとのこと。やはり総務省と協議していることが伺えます。
「ここが魅力だったのに」と感じていた消費者からすると、非常に残念な今回の0円廃止。政府の規制が要因とは言え、見通しや確認が足りなかった楽天モバイルに少なくない過失があると言えそうです。
2022年5月13日15時16分追記:楽天モバイル広報部より本日の発表会の補足説明を頂いたので、以下の通り全文引用して掲載します。
新プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」提供開始以降に、旧プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」の新規申込を停止した上で並行提供することについては、「電気通信事業法 第二十七条の三 第二項第二号」に抵触しうると当社としては考えております。
月間データ通信量が1GB以下の場合における両プランの差額を割引と捉えると、その額は「一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超える」に該当する可能性があると考えております。なお、当社は日頃より総務省とは密に連携をとっており、新しい料金プランについては、ご報告済みです。今後も法令遵守に努めてまいります。以下、該当法令について、ご案内致します。
■電気通信事業法 第二十七条の三 第二項第二号
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=359AC0000000086#88
その移動電気通信役務の提供に関する契約の締結に際し、当該移動電気通信役務の利用者に対し、当該契約の解除を行うことを不当に妨げることにより電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれがあるものとして総務省令で定める当該移動電気通信役務に関する料金その他の提供条件を約し、又は届出媒介等業務受託者に約させること。上記に紐づく施行規則は、以下の通りです。
・施行規則第22条の2の17第6号
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=360M50001000025#105
(電気通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれのある料金その他の提供条件) 第二十二条の二の十七 法第二十七条の三第二項第二号の総務省令で定める料金その他の提供条件は、次のとおりとする。 六 契約を一定期間継続して締結していたことに応じて利用者に対して行われる当該契約に係る移動電気通信役務の料金(付加的な機能の提供の料金を除く。)の減免その他これと同等の利益(特定経済的利益に該当するものを除く。)の提供であつて、それにより利用者が受けることとなる一年当たりの利益の額が当該契約に係る一月当たりの料金を超えるものであること。
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