10月12日、Googleから同社最新スマートフォンとなるPixel 8 / Pixel 8 Proが発売されました。さっそく入手して使ってみました。
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デザイン: コンパクトで軽くて持ちやすい
持ってみたときにまず感じたのは取り回しの良さ。
画面サイズが6.2インチと最近のスマートフォンにしては小さめに抑えられていることもあり、非常に手への収まりが良いです。横幅も70.8mmと、片手での操作も無理がありません。
一方でコンパクトすぎて背面のカメラバーに指があたり、カメラレンズが指紋で汚れやすいとも感じます。幸いなことにPixelのカメラには汚れを検出し警告する機能が備わっているので、そこまで問題にならない気もします。
カメラ: 編集マジックはそこまで使いやすくはない
Google Pixelといえば、AIを活用したコンピューテーショナルフォトグラフィや消しゴムマジックなどの加工処理の優秀さが有名なところです。
Pixel 8では消しゴムマジックが編集マジックに進化し、撮影後に表情を編集できるベストテイクや、消しゴムマジックが被写体のサイズや位置を変更できるようになるなどより豊富な機能が利用できるようになりました。
とはいえ編集マジックの利用には写真のバックアップが保存されていることが必須条件など、現状の使い勝手はあまり良くない印象です。このあたりは今後の改善に期待でしょう。
出荷時点でAndroid 14を搭載しており、Ultra HDRフォト、Display P3広色域の写真撮影に対応しているのも見どころ。後述するようにPixel 8シリーズはどちらも性能の良いディスプレイを採用しているので、写真撮影から閲覧まで一貫した映像体験を楽しむことができます。
巷で搭載されているカメラセンサーは何なのかと話題になっていたので非rootで可能な限り調べてみましたが、名称がコードネーム化されており特定には至りませんでした。
- DOKKAEBI: フロントカメラ
- BOITATA: メインカメラ
- SANDWORM: ウルトラワイドカメラ
ディスプレイ: 明るくきれいな有機EL。スムーズディスプレイはオン必須
Pixel 8のディスプレイは新たに設計されたActuaディスプレイが搭載されており、明るく色鮮やかで好印象。特に輝度が高く、HDRコンテンツを視聴すると目が覚めるような感覚があり、標準カメラのUltra HDR対応とのシナジーが生まれています。
一点注意点があるとすれば、最初は画面がガクガク。これはなぜか出荷時にスムースディスプレイが無効化されているため。
スムースディスプレイはいわゆる高駆動モードで、有効にしないと60Hz以上のフレームレートになりません。Pixel 8には120Hzのディスプレイが搭載されているので、購入したらまっさきにこの設定を有効化すべきでしょう。
もちろん電池消費は少々増えると思われますが、画面の内容が更新されていないときには自動的に60Hzまで下がるためそこまで大きな影響はないかと思われます。
余談ですが、発売に伴って公開されたGoogleの開発ログを見てみるとスムースディスプレイは出荷直前にデフォルトで無効化されるようになった様子。理由は定かではありませんが、バッテリーテスト等でより良い結果が出ることを期待してのものかもしれません。
部品単位で見ると、ソフトウェア上の解析からPixel 8は中国BOEまたは韓国サムスンディスプレイ製のOLEDパネルを採用しているものと思われ、そのうちサムスンディスプレイ製のものの型番はAMB616DG01であると思われます。
型番のAMBから分かるように非ProのPixelシリーズとしては初のリジッド (ガラス基板) ではなくフレキシブル (プラスチック基板) OLED搭載機となります。一般的にフレキシブルOLEDの方が軽く物理的な耐久性も高く、その分高価という特徴があります。
オーディオ: 良くも悪くも普通、アダプティブサウンドはオンがおすすめ
スピーカーの音量・音質は可もなく不可もなくというところ、音質最適化機能であるアダプティブサウンドはスムースディスプレイ同様なぜか出荷時オフになっているので、お好みに合わせて手動で有効化してあげましょう。
余談ですが、オーディオ周りも出荷前に再調整されたようで、特定の音量で映画バービーのサウンドトラックを再生しているとスピーカーが共振する問題の修正が行われています。
スペック: ミドルレンジ相当だが必要十分、ゲームには向かない
Pixel 8にはGoogleオリジナルのSoCであるTensor G3チップセットが搭載されており、国内で販売されている多くのスマートフォンで採用されているSnapdragonではありません。
性能的には可もなく不可もなくというところで一般的な用途で困ることはありませんが、唯一困るのはゲームアプリケーション。多くのゲームはSnapdragonのAdreno向けに最適化されており、Tensor G3の搭載するArm MaliシリーズではOpenGL ESでもVulkanでも物によって描画が乱れたりパフォーマンスが出なかったりすることがありました。また、CPUの性能もSnapdragon 8 Gen 2ほどは高くないため、ヘビーにゲームをするユーザーにはおすすめできません。
また、搭載されているTensor G2が処理できないため、32-bit (ARMv7A)アーキテクチャのアプリが動作しない点にも注意が必要。
ソフトウェア: ピュアAndroid 14で開発用に重宝
Google 純正ということもあり、ソフトウェアはピュアなAndroid 14で構成されています。良くも悪くもメーカーによる改変がされておらず、7年間のアップデート保証もあることから、Androidアプリケーション開発者にとっては非常に重宝するデバイスと言えるでしょう。
一方で普通に使う分にはGalaxyシリーズなどのカスタマイズされたデバイスの方が便利に感じることも多いのもまた事実であり、人ににおすすめできるのはどちらか、と言われると正直Galaxyなど他社デバイスになっちゃう感じも否めません。
その他: 開発者が喜ぶ要素盛りだくさん
Pixel 8にはアプリケーション開発者が求めているような機能が多く搭載されており、開発者向けデバイスとしての性質が目立つ部分が大きいと感じました。
- Linux Kernel 5.15
- CPU SVE / SVE2 命令対応
- CPU BTI / MTE 対応
- AV1 フォーマットのハードウェアエンコーダー搭載
- pKVMが有効・Android Virtualization Frameworkが利用可能
- 7年間のOSアップデート保証
- ブートローダーアンロック可能
- Android ベータ プログラム対応
総評: PixelというよりNexusかもしれない
総評としては為替等で値上げが大きく、各所を見ても一般消費者向けというよりは開発者向けな側面が目立っているように感じられました。
開発者はマストバイなデバイスですが、一般消費者は同じ価格を出すのであればSnapdragonを搭載した他社のデバイスを買ったほうが良いのではないかと思います。仮にコンパクトデバイスがほしいということであれば、より安いZenfone 10という選択肢があるため、選んでもらうのは難しいでしょう。
とはいえAndroidデバイスとしては異例の7年間のOSアップデートサポートや保守部品の提供保証など、一般的なメリットがないわけでもありません。あまりゲームをせず長い間使えるデバイスがほしいというのであれば、十分選択肢に入ってくるのではないかと思います。
アプリケーション開発者的にはかなり見どころがあり、マストバイとも言える構成に仕上がっています。かつてのGoogle Nexusシリーズを思い起こさせるデバイスだなと感じました。