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完全新生AQUOS R9レビュー。雰囲気カメラ最高、弱点も克服した待望の一台

 シャープのAQUOS R9をお借りしたのでレビューします。本機は公開市場向けに販売されるSIMフリーモデル。携帯事業者の販売するプリインストールアプリや消せないシャッター音が邪魔だなと感じる人はぜひ公開市場版を検討してみて下さい。

無駄なアプリが最小限。iフィルターぐらいは入っている。ちなみに青少年インターネット環境整備法で携帯ショップでのフィルタリング提供が定められているので、行儀の良いメーカーなら公開市場版でもこの程度は入っていることがある

 デザインは従来のAQUOSからは大幅に一新されました。自由曲線と称するカメラ突起、うーん、ジブリっぽい。

 R proラインのカメラハイエンド旗艦ならば、デジカメ然とした中央配置のカメラデザインの方が良いかもしれないとは思います。一方で、たとえばファーウェイのカメラデザインは明らかに変ですし、そのような「変化球」はトレンドといえばトレンド。そして、そもそも本機はミッドハイなので、個人的には可愛さも感じるこのデザインはアリかなと思います。

 パネル、変えました?画面は120Hz駆動で、「普通に」綺麗でした。良くも悪くもクセがマイルドになったと思います。ピーク輝度が2000nitまで向上、後述するような音質も良くなったことで、ダイナミックレンジの広いHDR動画視聴に没頭可能。そしてHDR動画再生時にしか当てにならないピーク輝度を謳うばかりのメーカーも存在するなか、驚異の全白最大輝度1500nitによって、しっかりと屋外での視認性も確保。日中屋外でも快適に利用できます。

 正面から見た時の狭額縁設計が美しいです。筐体はIPX5/IPX8防水防塵、しかもMIL規格、さらに電池容量5000mAhを確保しつつも重量は195gに収めています。

 SoCにはSnapdragon 7+ Gen 3を搭載。ベンチマーク計測結果は以下の通り。

  • AnTuTu 10.2.9:1179448
  • Geekbench 6 CPU Single:1834
  • Geekbench 6 CPU Multi:4882
  • Geekbench 6 GPU:7719
  • 3DMark Wild Life Extreme Stress Test:Best loop 2811, Lowest loop 1642, Stability 58.4%
  • Steel Nomad Light Stress Test : Best 955, Lowest 453, Stability 47.4%
  • Work 3.0 performance: 15090

 放熱については各社の考え方と技術が反映されます。国内メーカーなどでは「さっさと性能抑制」という傾向が強く、海外メーカーでは「発熱上等、とにかく限界までぶん回せ!」という端末もけっこうあります。個人的にはPCゲーマーなので後者の方が好きです。

 AQUOS R9はあくまで前者だと思いますが、原神のデイリー消化ぐらいなら60fps設定で快適でした。とはいえ相応に重たいステージや長時間のプレイではフレームレートは40台など落ち込んできますので、スマホだけで深くやり込む人にはより高級な機体を検討すべきだと思いますが、そうでないならこれでも十分かなぁと思いました。AQUOSにしてはベイパーチャンバー搭載で健闘していると思います。

 特に驚いたのが本機のカメラ。「別に撮像素子もハイエンドほど大きくもない1/1.55型だし、Snapdragon 7+ Gen 3で大丈夫なの?」という感じですが、ハマった時のエモい写真のエモさが凄い。普通に雑に撮ってもこう。

 さらに、マニュアルで撮影しても良し。え、この空気感、スマホカメラのjpg撮って出しで出る……?

 以前のAQUOSのUIはかなり乱雑で使う気が起きませんでしたが、AQUOS R7以降けっこう良くなってるので、買ったらぜひマニュアルでも撮ってみて下さい。説明はこれだけで十分でしょうけど、見る人が見たら感心するのは「あ、マニュアルでもちゃんとHDRのオンオフができるのね、使い勝手よさそう」「ボケいいね」「え、これ4倍ズームなの!?w」という点だと思います。楽しくエモいカメラに仕上がっています。

 AQUOSをモノとして素晴らしいと思う点は望遠カメラを省いてデザインを優先する割り切り、特にハイエンドの「究極の撮像素子一眼で全画角を担う」であり、そして同時に、本機を個人的に選択しようと思う時の障害も望遠カメラの非搭載です。ただ、2倍で廉価モデルにもリモザイクをしっかり搭載してきたAQUOSらしく、本機のデジタルズームは、もちろんハイエンドみたいな10倍20倍は無理ですし、被写体にもよりますが、ちょっと背伸びやポートレート向きの画角はそこそこはイケますよと伝えたいですね。ただ、下の作例を見るとわかる通り、やはり望遠カメラも別途欲しいなとは思います。

 超広角と広角。

 AQUOSはLeica協力でカンタツのレンズという一風変わった構成で、このソフトウェア処理ではない謎光芒出るのもエモくて気に入ってるポイントです。

 オールドレンズみたいなフレアは機材の味として楽しむのをお勧めします。うまく作品に落とし込んでみて下さい。

 飯の打率も高くて良いです。

 マジで色んなものがエモく撮れる。AQUOS Rシリーズ最上位モデルの良さをうまく引き継いでいると思います。光学面でも個性的ですし、画質処理においても、SoCのISP/DSPの性能に決して制約されずに、ソフトウェア処理もよく作り込まれていることが伺えます。

 「ま、でもAQUOSでしょ、いくらカメラよくてもスピーカー酷くて無理だわ……」といったところだったかもしれません。従来モデルと比較すると、明らかにスピーカーの音圧が強くなっています。

 解像感も大幅に向上しています。元々中音域は出ていましたが、AQUOS R8/proでは明らかに汚いかパワー不足だった低音域、これも迫力と豊かな厚みが感じられ、音楽体験を大幅に下支えしてくれます。出てるには出ていたが繊細な音はスカスカになってしまう高音域は、AQUOS R9では綺麗に鳴らしきってくれます。

 従来モデルと比べて圧倒的に高品位な音楽・動画視聴体験が可能となりました。いくらAQUOSが映像美を謳ったところで、イヤホンを繋げなければ興醒めだった状況はこれで終わりでしょう。

 音量もXperia 1 VI程度には出ています。風呂場でイヤホン・ヘッドホンは使えず、スピーカーを使うわけですが、シャワー中は非力なスピーカーのスマホでは使い物になりません。お風呂防水対応を謳うAQUOSは、上質なスピーカーを持つAQUOS R9で完成したと言えるでしょう。

 なお、スピーカー音質に優れた20万円前後の上級ハイエンドモデル、iPhone 15 Pro Maxなどのほうがさらに強い音圧で高い解像感の音が滑らかに美しく響いており、そうしたトップクラスの機体の圧倒的な美音には勝てないことがわかります。ミッドハイとしては備えているべき品質を立派に備えている、ということに大きな意義があります。

 画面は元から先進的、カメラも克服したが、音が……というAQUOS最大の欠点を克服した本機の音響エンジニアの努力に敬意を評します。AQUOS史上、最も高音質だったsense7 plusを上回っていると思います。これでAQUOS sense7 plusのようにフレーム強制補間まで備えていたら最強のモバイルオーディオビジュアル端末として購入していたかもしれません。

 生体認証は側面で、画面内指紋認証よりも正直使いやすいです。めちゃくちゃ下すぎるということもなく良いです。

 ハプティクスは流石に酷かったAQUOS R8よりは改善していると思いますが、特段に良いわけでもありません。安っぽく感じるのでまだ不満はあります。ただカメラ起動時の漫然と鳴り響く安っぽいバイブレーションのようなよくわからない演出も無くなっていますし、明らかに「ハイエンドで安っぽいのは駄目だな」と認識して作っているのは伺えます。

 文字入力時は、Gboardの標準設定のバイブ振動だと、まあ許してやってもいいかなぐらいのライン。「バイブは気にしません」「振動系は全部切ります」といったユーザーなら問題なし。

 超急速充電ではないものの30W程度の実力はあり、まあ普通に使えるかな?といった具合。Qiもないですし充電は一見微妙な機種ですが、最大充電量90%によるいたわり充電や、発熱抑止・電池劣化防止のダイレクト給電(バッテリーを介さず直接システムに電力供給)といった注目の機能にはしっかり対応しています。

 個人的には「大型撮像素子のproがない」「ハプティクスは前より良いけど相変わらず満足はできないな」と不満はありますが、勧めやすいモデルです。

 かつてのAQUOS Rで「10万円ぐらいだよね?」と思っていたら、なんか20万円近くになってて機種変更できなくなっていた人はまさに本機のメインターゲット。買いです。

 AQUOS R8は完成度が低く、キャリアが14万円で売っていた状況は、せっかくAQUOS Rを好きでいてくれるユーザーを難民化させていないかと心配でした。

 それがこの完成度で10万円前後という安さ。キャリア版の12万円前後は若干高いですが、端末返却残債免除プログラムを利用する人はキャリアで、一括で買う人は公開市場版を買えばいいだけです。

 AQUOSのエモくなったカメラを体験してみたいが、20万円近くじゃ高すぎて手が届かないという人にもおすすめです。新規顧客にAQUOSを勧める時には、いくらなんでも音響が悪すぎて……ということも今回なくなったので、非常に良いモデルに仕上がってると思います。後で「あれがない、これができない」と文句を言われそうな逆にsense以下の安物モデルよりかは、しっかりしたミッドハイモデルのほうが勧める側としても安心です。どうせなら、「後で見返したら思い出が綺麗に残せてた!」と喜んでもらえる機種の方がいいですよね。

 個人的には、「三辺狭額縁」「究極のデジカメ撮像素子搭載」「薄型軽量240Hz」で見せてくれたような、滾るプロダクトが見たいと思います。そのDNAが息吹いている本機も良い出来栄えですので、本機が売れてもっとシャープらしい機種や、完成度の高いハイエンドモデルを出して欲しいと願うばかりです。

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