韓国サムスンセミコンダクターは、スマートフォンに大口径なレンズの望遠カメラを搭載しつつ、モジュールを小型化するISOCELL ALoPテクノロジーを開発しました。
現在の多くのフラグシップスマートフォンの望遠カメラには光を90°屈折させ、レンズやモジュールを横長に配置することで長い焦点距離のレンズを実現できる、ペリスコープ式望遠レンズが採用されています。
長い焦点距離にしつつ、低いf値や大きなセンサーサイズを実現するためにはレンズの大きさ(有効口径)が重要となります。しかし、ペリスコープ式望遠レンズで有効口径を大きくするとモジュール全体の厚さが大きくなってしまいます。Xiaomi 14 Ultraやvivo X100 Ultraといったスマホは、もはやコンデジのように大きく厚みのあるカメラバンプ(突起)となっていますが、これは大きな有効口径のペリスコープ式望遠カメラを搭載している影響が大きいためです。
これに対し、ALoP技術はプリズムで光を屈折させる点はペリスコープ式と同じながら、センサーの手前ではなくプリズムの上に配置。そしてプリズムの反射面を40度、センサーを10度傾斜させています。
この結果、モジュールの最小の厚さを大きく削減することが可能に。
また、水平方向にレンズを配置するのに必要なスペースを減らすことで、モジュールの長さを最大22%短縮できるといいます。
プリズムの上にレンズを配置することで円形のレンズしか外から見えなくなるため、広角カメラなどの他のカメラに近い見た目にできるというデザイン面での利点もあるとのことです。
ALoPにより、下記の画像のようにカメラバンプの厚さと長さを大きく縮小することが可能になります。
ただし、画像からするにモジュールの高さの最長部はほとんど変わらないため、カメラバンプを薄くする分開口部が出っ張ってしまう点を留意する必要がありそうです。
ALoPは焦点距離が80mmでf/2.58のレンズに対応。サムスンは「このALoPソリューションは、より明るくコンパクトな望遠カメラモジュールを提供し、ユーザーはより魅力的で人間工学に基づいた使いやすいスマホで驚くほど鮮明でノイズの少ない夜間画像を撮影できる」としています。
なお、望遠カメラのモジュールサイズを抑えるための技術を搭載したスマホは既に存在しています。iPhone 16 Pro/Pro Maxに搭載されるテトラプリズムはALoPと同様レンズをプリズム上に配置し、独自の4回屈折するテトラプリズムにより最小の厚さと長さを縮小しています。
また、OnePlus 13やOPPO Find X8シリーズなどには、入射光を逆M字型に3回屈折させる独自形状のプリズムによるコンパクトな望遠カメラモジュールが搭載されました。
ALoPはこの小型化トレンドに沿ったソリューションの一つといえるでしょう。Galaxy Sシリーズなどのスマホへの実装に期待が高まります。