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MVNOは競争相手と見られていないことに反省。大手プランの値上げでMVNOはこの先生きのこれるのか、3社が激論

 ドコモが新プランを発表してirumoを廃止へ、そしてauも値上げに踏み切る、大手各社値上げの最新情勢。安さを重要な武器の一つとするMVNOはどうやって客を奪っていくのか?

 MMD研究所は2025年5月23日、都内にて「第9回MVNO勉強会 主要3社に聞くMVNOコンシューマ市場における競争戦略」を開催しました。大手キャリアによる低価格プランの提供や、MVNO業界への新規参入が相次ぐなど、市場環境が急速に変化する中、mineo(オプテージ)、イオンモバイル、メルカリモバイルの担当者が登壇し、MVNO市場の現状と今後の展望について意見を交わしました。

サービス開始10周年、オプテージの「mineo(マイネオ)」松田守弘氏。契約回線数134万回線突破、料金プランは「マイピタ」と「マイそく」の2本柱で展開、2025年3月には50GB「マイピタ」コースと、通信速度を向上させた「マイそくプレミアム」コースを追加。コミュニティサイト「マイネ王」は利用者との直接的な対話を通じてサービスを共創する独自のビジネスモデルを確立、利用者満足度向上と解約率の低下に貢献していると認識しているとのこと。

「安くないとイオンモバイルじゃない」。同じくサービス開始10周年、100万回線を目指し、以前から「商人の作ったMVNO」を一貫しているイオンリテール「イオンモバイル」井原龍二氏。契約回線数等堅調。料金の安さ、柔軟な料金プラン、利便性高く安いシェアプラン、全国の店舗でのサポート体制などが強み。今後イオングループの金融サービスなど持っているが活用しきれていない各アセットとの連携を強化したい考え。

「メルカリやってるならメルカリモバイルやらない理由がない」という方向に持っていきたいとの考え、2025年3月4日にサービス開始「メルカリモバイル」永井美沙氏。メルカリ提供フリマアプリ「メルカリ」の強みを活かし、利用者が余ったデータ容量(ギガ)を売却したり、足りない容量を購入したりできる日本初の容量売買を提供し、活況。契約利用者の2人に1人が容量売買を経験しているとのこと。同氏はまだ入社して浅いものの、メルカリのマーケットで容量売買できる企画を持ちかけられた時、「これはいける!」という確信があったそう。

 勉強会の冒頭、MMD研究所の吉本氏がMVNO市場の最新動向について解説。MVNOは1割程度、メイン利用者のサブ回線としての需要が伸びている点などを指摘しました。

 まず大手キャリア(MNO)の新料金プランが実質的な値上げにあることについて議論が交わされました。

 マイネオの松田氏は「生活防衛意識の高まりから、MVNOのシンプルで分かりやすい料金プランへのニーズは高まっている」、メルカリモバイルの長井氏は「MNOの料金体系が複雑化する中で、ギガを無駄なく使えるメルカリモバイルの『ギガ売買』は、より一層魅力的に映る」と、MNO値上げを機にMVNOが改めて注目される好機であるとの見解を示しました。

「平日12時台は超低速、それ以外は5Mbps」という独創的なプランも用意するmineo

データ容量売買が目玉のメルカリモバイル。現時点ではドコモ回線のみだが、取り扱い回線拡大よりもまずは他の事項や黒字化を優先したい構え

 一方、イオンモバイルの井原氏は、より踏み込んで分析。家計を見直す中で通信費用という固定費の見直し機運が高まっているとしつつも、「MNOがこうした料金戦略をとれる背景には、我々MVNOが競争相手として認識されていないのではないか」「反省しなければならないのでは」と警鐘を鳴らしました。さらに「MNOからすれば、MVNOに流れるユーザー数は限定的で、それよりもARPU(1ユーザーあたりの平均収益)を下げず維持する戦略なのかなと」「MVNOの我々の立場からすると、そういった強気のMNOさんの料金戦略に対抗できるのかできないのか、すごく難しい判断」と述べ、業界に課題を提起しました。

 続いて、今後のMVNO業界の注目点として、マイナンバーカードを活用したオンライン本人確認についての問題が挙げられました。2026年4月から携帯電話契約時の本人確認方法としてICチップ読み取りが必須となる法改正を控えており、各社の準備やNFC非対応スマートフォン利用者への対策など様々な課題があります。

 イオンモバイルの井原氏は、全国の店舗網を生かして店頭での対面サポートによって解消できる強みを挙げました。また、ようやく投資してeKYCに対応した事業者が、またマイナンバーカードIC対応によって出費を強いられ、退場するケースもあるのではないかとの懸念も示しました。

 一方、メルカリモバイルの永井氏は、サービス開始当初からオンライン・マイナンバーカードによる本人確認プロセスを導入している強みを強調。今回の法改正は、メルカリモバイルの仕組みと親和性が高いと考えていると述べ、円滑に対応可能であることを示唆。

 さらに、5G SAや衛星通信といった新しい通信技術の活用について問われると、マイネオの松田氏は「技術動向や展開状況と慎重に注視しつつ、MVNOとしてどのような独自の付加価値をユーザーに提供できるのか、検討していきたい」と述べました。

 カブアンドやJALなどの新規参入事業者の動向について、各社とも業界活発化のために歓迎しつつも、強みを生かした独自のサービス展開で差別化を図っていく重要性を強調しました。

 また、3Gサービスの終了ついては、各社はこれを機に乗り換えを促進する機会と捉えている様子でした。マイネオの松田氏はSIMフリー端末を拡充、そして近年では需要が高まっている中古端末の取り扱いに力を入れているとのこと。メルカリモバイルの長井氏は、当面はSIM単体での提供に注力するも、将来的にはメルカリのプラットフォームを活用した中古端末との連携も検討していきたいとの考えを示しました。

 イオンモバイルの井原氏は、幅広い端末を取り揃えているだけではなく、店舗スタッフによる初期設定から使い方、セキュリティ対策までサポートを提供しているため、長年3G端末を使う高齢者にも対応できると自身を見せました。

 ただし質疑応答で井原氏は「アンケート調査では7割がMNOから乗り換えたことない人」との数字を挙げ、MNOが値上げしたからといって単純にMVNOに目が向かない可能性があり、別のアプローチを仕掛ける必要があると指摘。なおイオンでは大手キャリアもイオンモバイルも売り場で横並びで取り扱っているので、MNOが値上げした事実も顧客に伝えることで、バランスよく目に届くように仕掛けていく方針を示しました。確かに、これは他のMVNOではとれない、イオンらしい作戦ですね。

 大手三社メインブランドだけではない格安SIMや格安プランという括りでは確かにユーザー数は増加しているものの、依然として1割の利用者数に留まり、存在感をいまひとつ発揮しきれていないMVNO。今後各社がどのように独自の価値を提供し、存在感を高めていくのか、注目です。

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