
「iPhoneのカメラに黒点が入った」
普通なら少し気分が沈む程度の話だけど、ガジェット好きとしてはつい、こう思ってしまいました。「いよいよ、エクスプレス交換の出番では!?」と。
本来なら、ここから「Appleが神対応すぎた!」で終わる予定でしたが、まさかここから1週間も振り回されることになろうとは……。
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基礎をおさらい:「エクスプレス交換」って何?(知ってる人は読み飛ばしてね)
一言で言うと、「手元のiPhoneが壊れたとき、修理を待たずにすぐ新品(または新品同等品)を送ってくれる」という、Appleの非常に便利なサービスです。修理中でスマホが手元にない期間をほぼゼロにできるのが最大のメリットです。
利用の条件は、通常の1年保証ではなく、AppleCare+の契約期間中である必要があります。

iPhoneのカメラにゴミが混入したーッ!!!
ある日、iPhoneのカメラで写真を撮っていると、どのアプリでも超広角カメラに黒い点が映るようになりました。最初はレンズの汚れかと思い、クロスで念入りに拭いてみましたが、一向に消える気配がありません。

「これはセンサーの異常かもしれない」。そう嫌な予感がしたため、すぐにAppleサポートへ連絡しました。
担当の方に症状を詳しく説明したところ、「ハードウェアの不具合ですね」との診断を受けました。修理が必要とのことですが、今回はApple Care+の特典である「エクスプレス交換サービス」を利用できると案内されました。

交換機到着。そしてSIM抜き忘れ発生
エクスプレス交換サービスを利用。予定通り1週間後に交換機が到着しました。玄関で受け取ったその足で部屋に戻り、早速開封します。外箱を開けて、新品同様のiPhoneが出てくる瞬間は気分が高揚します。
新しい端末の電源を入れ、まずはiCloudバックアップからの復元を行います。データの移行が完了するのを待ちながら、各アプリへの再ログインや、使い慣れた設定への調整を一つひとつ進めていきました。
全ての移行作業をサクサク進めて、ひと区切りついたその時、とんでもないことに気付き、血の気が引きました。「元のiPhoneからSIMカードを抜いていない!」
エクスプレス交換は、「交換機を受け取ると同時に、その場で故障機を配達員に渡す(返送する)」か、あるいは「後日集荷に来てもらう」流れが一般的です。今回は後者のパターンで、すでに本体を返送用キットに入れて封をし、発送してしまった後でした。
SIMを挿しっぱなしで返送した時点で、通信手段を失い、ほぼ手詰まりです。
翌日ヤマトに電話するも「時すでに遅し」
翌朝、焦る気持ちを抑えながらヤマト運輸に電話をかけました。「先日送った荷物にSIMカードが入ってしまっていて、戻してもらうことはできますか?」
一縷の望みをかけて尋ねましたが、返ってきた答えは簡潔でした。
「もうAppleに向けて発送されています」
手元のiPhoneにはSIMがなく、Wi-Fi環境下以外では通信ができません。当然、電話番号も使えず、SMS認証が必要なサービスにもログインできない状態です。ここでようやく、ことの重大さをちゃんと理解しました。
「eSIMに切り替えればいいのでは?」という淡い希望
絶望感の中で、ふと人間の浅はかな希望が頭をもたげます。「物理SIMがないなら、この機会にeSIMに切り替えればいいのでは?」
実際、ドコモのWebサイトを確認すると、物理SIMが手元になくてもオンラインで再発行や切り替えができそうな記載があります。

「これなら店舗に行かなくても復旧できるかもしれない」と思い、早速手続きを進めます。Wi-Fiに接続し、dアカウントへログイン。eSIM切替の手続き画面までは順調に進み、完了まであと一歩というところまで来ました。
ここまでは完璧でした。しかし、最後の開通手続きの画面で表示されたのは、無情な一言でした。
「SMSで送信されたコードを入力してください」
……行き詰まりました。SMSを受け取るためのSIMがないから再発行しているのに、その手続きにSMSが必要だというのです。
結果、「eSIMに切り替えればいい」という甘い考えは、数十分で粉々に砕け散りました。SMSを受け取れる端末がないと認証を突破できず、手詰まりになります。
ドコモへ電話→店舗へ行けと言われる
仕方なく、ドコモのサポートに電話しました。事情を説明すると、返ってきた回答は次のようなものでした。
「今回のケースでは、eSIMの発行手続き停止も、SIMの再発行手続きも、店舗でしか行えない」とのことでした。
自分のミスとはいえ、オンラインで完結できないもどかしさに憤りを感じながらも、そのまま最寄りのドコモショップへ向かうことにしました。
店舗で再度事情を説明すると、手続き自体はスムーズに完了しました。新しいSIMカードを受け取り、ようやく通信が復活します。しかし、会計の段になって、ここでまた衝撃を受けます。
「再発行手数料は、4950円になります。」
財布に大きな痛手です。オンライン手続きであれば1100円で済んだことを考えると、その差額も含めてなかなか辛いものです。
後日談、Appleから謎の荷物が届く
SIMも再発行し、高い勉強代も支払い、ようやく日常が戻ってきた頃のことです。数日後、ポストを見ると、見覚えのある差出人から小さな荷物が届いていました。
「Apple?」
エクスプレス交換はすでに完了しているし、他に注文したものもありません。心当たりがないまま開封してみると、中から出てきたのは……「間違えて返送してしまったSIMカード」でした。しかも、着払いではなく元払いで返送されていました。

本来、エクスプレス交換で送った本体の中身(SIMやフィルムなど)がわざわざ返ってくることは想定されていないはずです。規定上は廃棄されても文句は言えません。
それにもかかわらず、わざわざ梱包して送り返してくれたApple側の気遣いが伝わってきて、正直かなり感動しました。
4950円はすでに払ってしまっているので、お金が戻るわけではありません。それでも、「ちゃんと中身を確認して、大事なものを返そうとしてくれた」という事実が、とても嬉しく感じました。
エクスプレス交換は神。ただし、「SIMカードの抜き忘れ」は地獄
今回の教訓を一言でまとめるなら「エクスプレス交換は素晴らしいサービスだけど、本体を返送する前にSIMだけは絶対に抜くべき」、これに尽きます。
黒点一つから始まったトラブルですが、いい勉強になりました。


















