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官能的操作感。Nothing Headphone (1) レビュー

 Nothing Headphone (1)をお借りしたのでレビューします。価格は3万9800円で、発売日は2025年8月28日。

 デザインは透明感のある外観と金属の質感。スクエア気味の大ぶりなハウジング。意匠はちょうどNothing Phoneの世界観と合わせつつ、かつてのスケルトンブームを思い出させつつ、もしかするとカセットテープの換骨奪胎かな?なんてジワジワ考えさせるスルメ系デザインです。昨今「画面にカセットテープを表示できるようにしました」というDAPもあるものの、そういう直接的な懐古趣味は個人的にはあまり馴染まないのですが、ちゃんと自分の世界観に落とし込んでいるNothing Headphone (1)のデザインは好きです。

 指先で気持ちよく回せるローラーやスイッチなどの物理操作系を備えて、触って楽しい道具に仕上げています。KEFとの共同開発やロングバッテリーまで盛り込み、見た目と中身の両方で勝負する意欲作です。

 装着感は、重量329gで数字だけ見ると重めですが、低反発クッションとしっかりしたヘッドバンドが面圧を分散しているためか、長時間でも頬や頭頂部への負担は低め。ただ側圧はやや強めかもしれません。筐体はIP52。

 難点は、イヤーカップが折りたためない構造で持ち運び時にかさばることや、左右の角同士が接触するので傷付きそうということ。この辺り、サードパーティが周辺機器を開発する動きもあるようなので、注目したいところです。

 特筆すべきが、極上の操作体験。タッチ誤作動と無縁の物理操作なのが素晴らしい。

 電源ボタンが物理スライド式なのはもちろん、特に音量を左右にぐりぐりとダイヤル感覚で調整できるローラーは直感的で気に入りました。カチッ、カチッと左右に傾けるパドルも快感。暗い部屋や電車でも手探りで確実に操作できますよ。ちなみにNothing Xアプリからはボタン割り当てのほかイコライザーも調整できます。

 Nothingスマホ限定ですが、ワンタッチでメディアを渡り歩く「Channel Hop」も面白い機能ですが、個人的には最近は専らApple Musicにどっぷり浸っているため、あまり役立つ機会はありませんでした。Spotifyなどとも併用している音楽ジャンキーにはおすすめです。

 それより最高なのが、ボタンからChatGPTを起動可能な点ですね。

 これはNothing Phone限定機能にはなってしまうのですが、ヘッドホンのボタンからChatGPTの音声モードをさっと呼び出せるのはクール。これが未来だよなぁ!と唸ります。込み入った調べ物には使えませんが、ごく簡単な質問や天気、どうでもいい会話ならこれで十分ですよね。ヘッドホンからAI起動して音声でAIと対話、これぞ未来!

 なお、消灯時には反応しないので、ヘッドホンから完全ハンズフリーで起動とはいかないのが残念な点。ただし画面を点灯させた状態なら反応するので、必ずしも生体認証を要さないのは救い。

 なお、ChatGPTの音声モードはリアルタイム応答を重視しており、「簡単な壁打ちや雑談の相手」として使うには最高なものの、GPT-5 Thinking/Proなどのような高度な知性はないので注意しましょう。

 ノイズキャンセリングは日常用途にきっちり効きます。電車やオフィスの空調音でもしっかり押さえ、カフェでの作業でも静けさを確保してくれます。電車内の走行音は車輪とレールの接触による轟音こそ消せませんが、それ以外は概ね消せます。ソニーなどのより強力なノイズキャンセリング技術を誇るメーカーには勝てないものの、それらのトップ帯の背中を追う程度には強力であり、個人的には十分だと感じます。

 Nothingは通知音もセンスがいい。機能名を言う製品も多いんですが、Nothing Headphone (1)は外音取り込みからノイズキャンセリングへの切り替えの音は、空気が抜けて真空になる音。その逆は空気が入ってくるような音です。使ってて心地が良いです。

 外音取り込みではその方向からの自転車の走行音や、人が喋ってる声も聞こえます。音量大きいと聞こえないが、中音量以下にしてみると多少雑踏の増える駅周辺部でもわりと定位があり、車や自動車の方向は視界に概ね連動。自己責任ですが、外さずに屋外も歩けるかなというところ。近くにいる人の話し声なら判別が可能なので、コンビニで買い物する程度ならヘッドホンを外さなくてもok。

 ノイキャンと外音取り込みをトグル操作で切り替えられるのはわかりやすいですが、正直「密閉型ヘッドホンならつけた時点でそこそこ周囲の音を遮断できるので、音質の阻害要因であるノイズキャンセリングなんていらない」「外音取り込みなんていらない、外して肩に載せて首にひっかけとけばいいだけ」という人もいると思います。そんな人のために、Nothing Xアプリからボタン割り当て変更可能になってます。好みや思想信条に応じてカスタマイズしましょう。

 なお1週間ほど使って、特に充電を行ったのは一度だけだったので、電池持ちは良いと思います。ANCオンで最大35時間、オフなら最大80時間まで公称し、5分の急速充電で約5時間再生できると公称します。

 接続面ではBluetooth 5.3に対応し、マルチポイントで2台同時待ち受けもこなします。LDACに対応しており、Androidで高音質な音楽再生が楽しめます。さらにUSB-C有線接続や3.5mmアナログ入力にも対応し、箱にはUSB-Cケーブルと3.5mmケーブルが同梱。

 基調はフラット寄りでクリーン、低域は量感より質を重視でタイト。迫力が凄まじいわけではないので、聴き疲れはしません。中域はボーカルの見通しを確保しつつ厚みは控えめで、極端に前に出てくるわけではありません。高域は情報量はあるものの、伸びすぎず、ジンバルクラッシュや歯擦音も刺さらず不快感はありません。抜群の派手さはなく、素材感と定位で聴かせるタイプ。ナチュラルな音なので、聴き疲れはしないでしょう。4万円の無線ヘッドフォンとしては十分な音質だと思います。

 ANCの音質影響は大きくは感じにくく、オンにすると重低音がわずかに持ち上がり、車内や地下鉄でもベースラインが埋もれにくくなるように感じます。

 長時間駆動、良好操作性の強力ノイズキャンセリング。ついでに気分の上がるデザイン。作業用ヘッドフォンとして素晴らしいのかなと思います。

 ただ低域が好きな筆者としては、ちょっと物足りなくも感じます。そこはEQで中低域をひとつ持ち上げるとパンチが出て楽しくなるかも。EQ弄らない人も、ベースエンハンスのオンオフを試すと、簡単に重低音が持ち上がってきて面白いです。

 さらに空間オーディオをオンにすると音場が一気に広がり、サラウンド感が強まり面白いです。奥ゆかしかったボーカルも、まるでライブステージで歌っているかのよう。ただしちょっと派手すぎ、高音の微細な音が埋もれてしまい聞こえなくなる部分があって歯擦音が気になるようにな場面も。空間オーディオとベースエンハンスはちょっと聞き疲れするかもしれませんが、「ナチュラルな音は疲れないけど飽きた」という場合の「味変」なので、気分転換にちょうどいい塩梅だと思います。ナチュラルは退屈と紙一重、そこも計算してちゃんと機能を織り込んでるのは偉いですね。

 結論として、Nothing Headphone (1)はデザイン重視の人、気持ちの良い操作性という新しい挑戦を応援したい人、カフェ等での作業用に集中できる最高の道具が欲しい人にぶっ刺さる一台だと思います。

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