NTT docomoは、ユーザーのGPS位置情報をユーザー本人に通知することなく、警察などの捜査機関へ送信します。
朝日新聞は、2016年夏モデルにそうした機能が搭載されると報じましたが、共同通信は既存端末にもアップデートで適用されると報じています。
そのアップデートはOS・ソフトウェアではなく、プリインストールアプリに対して配信する形です。多くのドコモ販売のAndroidスマートフォンにプリインストールされた「ドコモ位置情報」および「ドコモ位置情報(sub)」がその役目を担います。その最新バージョンとなる0C.00.00004が、既存端末に一斉に配信開始されています。アップデートのリリースは5月19日。
以前からこれらのアプリのプライバシーポリシー規約には、国の機関に協力する時に本人の同意を得ることでそれに支障がある場合に勝手に位置情報を供与するとの条項(第三者提供の有無 ②-5)が存在しています。ここに予めユーザーが包括的に同意しているから問題ない、とするのが通知なく警察に位置情報を送信することを正当化するドコモ側のロジックと考えられます。
なお、本アプリを無効化することで端末内位置情報を警察に勝手に送信することはなくなります。ただし、比較的最近のモデルでは本アプリの無効化を行うことができないようになっています。ちなみにアプリを無効化していても、基地局の位置情報を警察が請求することは可能です。
問題としては、端末紛失時などの各種サポートサービスも、本アプリによる遠隔での位置情報取得が必要であることを考えると、ユーザーにとっては停止によるデメリットの方が大きいでしょうから、ドコモのAndroidスマートフォンを使う限りにおいては、「不信感を抱きながらも同意せざるを得ない」というユーザーも多そうだということです。そのような必須アプリに、重大な機能を埋め込んでいるわりには、契約時・利用開始時・アップデート時に説明する努力が欠けているように見えます。
捜査機関への端末位置情報送信には令状と本人通知が必須でしたが、総務省がガイドラインを改正したことで、本人通知は必須では無くなったわけですが、日本の現行司法制度において裁判所への警察の令状請求は99%が通っていること、こういう日弁連が懸念を表明している重要な変更が総務省のガイドライン改定だけで済んでしまうのはどうなのか、といった観点での問題もあります。