中国のデジモノ系ニュースサイト、天級網に「スマホ業界の者も国際主義にこだわらなければならない」という論評記事が掲載されていました。
「国際主義」とは聞きなれない言葉だと思いますが、国際貢献という意味ではなく、「無産階級国際主義」、つまり簡単に言えば、「万国の労働者団結せよ」のアレです。「そういやお前ら社会主義国家だったな」と、感慨深いものがあります。
筆者がどこまで本気なのかは謎ですが、論評の中で使用されている語彙が基本的に毛沢東時代のものなので、「中国版ネット右翼(バリバリ左翼どころか共産主義ですが)の怪気炎」、あるいは「本場中国人民による共産趣味ネタ」としてご覧ください。
世界に目を向けるに、それこそが中国スマホメーカーがとるべき態度である。
最近、雷軍は「小米(Xiaomi)は全世界で第二の携帯電話市場であるインドで、市場トップを獲得、あらためて小米によるビジネスモデルの先進性を証明した」と、喜びとともに発表。
喜びのあまり、雷軍は「小米内部の組織調整を実施し、雷軍本人はスマホ開発と供給サプライチェーンの管理業務を離れ、全国工商連盟の副主席を務めることとなった。重責に身が引き締まる思いだ」とも表明した。
いきなり、小米と政治を結び付けてきますね。
ちなみに「全国工商連盟」について簡単に解説すると、まず、中国には「中国人民政治協商会議」という制度が存在します。中国共産党の指導を前提として複数存在する与党が参加する、議会のようなものです。「全国工商連盟」は、この中国人民政治協商に参加しています。日本でいえば「経団連が参院に議席をもっているようなもの」、と考えればいいでしょう。
その「全国工商連盟」副主席となれば、当然重責ですね。
中国版ユーチューバーの「老羅」は、「携帯電話を作るのは遊びであり、カネもうけのためではない」と言っていたが、これは笑い話に過ぎない。規模なくして、なんの利潤か。携帯電話業界は名誉と利益のかかった場であり、参入するには覚悟が必要だ。老羅は中国で最も早期のネット有名人だが、サプライチェーン確保のため、少なからず人に頭を下げた。よって、国外展開は必然である。規模を高め、コストを低くし、サプライチェーンへの発言権を強化するのだ。
あまり共産主義っぽくありませんが、市場経済の発展は革命へ近づく第一歩なので、矛盾はないでしょう。多分。
もちろん中国のスマホメーカーは、非常に国際主義を有している。星辰大海を征くには、まず広大な「第三世界」へ目を向けなけれなならない。
「第三世界」とは。毛沢東主席の定義によれば、米国とソ連が「第一世界」、西側先進国が「第二世界」、その他が「第三世界」となっています。「中国は第三世界の代表として、米ソに対抗する」というのが、当時の基本路線でした。
最近も、「中国は発展途上国でもある」と主張して「いや、それはいくらなんでも」との反応が方々からありましたが、こういう前提があります。
アフリカ大陸、ブラジル、インド、東南アジア、中国の携帯電話メーカーは止まるところなく現地の市場に入り込んでいる。長期にわたってサムスンやアップルによる圧迫・搾取と、ローエンドで劣悪なスマホによる迫害を受けてきた群衆に安くて見栄えのいい、機能の整った中国製品を提供している。このようなことは中国ではなく、世界の大多数の部分で発生しているのである。
「毛主席は世界革命人民の紅太陽」という感じで、実にいい自画自賛ですね。
もしも中国の携帯電話メーカーが第三世界市場に進出しているのは、ローエンド製品を販売するためだというならば、これは酷い誤解かもしれない。インド市場に参入するために、中国の携帯電話メーカーは現地に工場を建設したばかりか、現地で求人もしている。
皆知っての通り、中国の労働者と比べてインドの労働者は少し怠け者である。
騰訊科技によれば、同じスマホの生産ラインをインドに持っていくと、生産効率は中国国内の7割にしかならず、しかも不良品率が高い。
当然、すべてのインド人民が怠け者なのではないが、国内の力ある労働者群と比べれば、中国のスマホメーカーは、外国の同胞に、やはり忍耐心が必要である。利益ばかりを見て、発展途上国人民群衆の生活水準向上を忘れるようではならない。
インドに対するしょうもないマウントですね。おそらく、既にGDPで4倍の差がついている上に、いまだに経済成長率も中国を下回る国をライバルとして挙げられるのが、よほど我慢ならないのでしょう。「金持ちになったやつの嫌なところ」を見た感があります。
「水深火熱」の中にあるアフリカの兄弟たちを忘れてはならない。
「水深火熱」は「地獄の苦しみ」の表現で、1970年台までは中国大陸と台湾、双方をこう呼び合っていました。
アフリカ人民が世界の速度に追いつくべく、国外の大企業も非常に関心を有しており、Facebookは光ファイバー網を整備、衛星も用意している。Googleは更に、気球によってアフリカ人民にインターネット環境を提供している。
しかし、これら資本主義国家の企業は、良いことをするには徹底しなければならないことを知らない。インターネット環境はできても、インターネットに接続する端末がない。アップルやサムスンのスマホが、一カ月の平均収入僅か1000元(約1万7千円)足らずのアフリカ人民に買えるだろうか。Dellやhpの3000元以上するパソコンが誰に買えるだろうか。よって、最後はやはり中国メーカーが面倒をみなければならない。
アフリカ蔑視記述がないかとヒヤヒヤしましてが、こちらは大丈夫なようです。
アフリカ市場のシェアの半分を占める中国携帯電話メーカー、伝音がアフリカ市場へ進軍して既に十数年になる。統計によれば、2017年上半期、伝音は5千万台の携帯電話を販売し、そのうちスマホは1100万台を占める。
アフリカで大画面スマホを使用することは、身分と地位の省庁であり、またアフリカの兄弟たちのために美顔技術を研究開発した。これは欧米のメーカーが目を向けてこなかったことだ。
中国メーカーが、徹底したローカライズによって成功をおさめていることは事実ですね。
国際主義を論ずるならば、発展途上地域ばかりでは不十分である。広大な先進地域でも、中国メーカーは同様に国際主義を発揮し、先進国の人民に中国の友情を提供しなければならない。
頻繁に国外へ行くのならば気づいているかもしれないが、欧米先進国では、人民群衆はみなが最新機種を使っているわけではない。倹約精神を十分に発揚し、徹底的に壊れないうちは使い続ける。君はきっと「壊れたのになぜ修理しないのか」と聞くだろう。すると「修理が買い替えるよりも高いからだ」との答えが返ってくる。欧米のスマホ販売の多くはキャリアとの「契約機」の形式をとっているのだ。
「契約機」というと、中国では歴史の一部になった感があるが、欧米ではいまでも主流である。ローンに相当する形式をとっており、契約してゆっくりと支払う。キャリアにとって、スマホ販売はカネにならず、ユーザーとの付き合いである。通話費でカネを稼ぐことになる。
しかし、数十ドルで4G接続し放題と思ってはならない。欧州の地下鉄の読書文化を語るなかれ、あれはネット環境がないのだ。
余談ですが、いまどき、日本の地下鉄でもあまり本を読んでいる人は見ませんが、バキバキに割れた画面と通信制限されたスマートフォンを使っている人ならよく見ますね。
しかし、やはり中国企業は力がある。華為(Huawei)は十数年前に欧州市場へ進軍、Vodafoneや英国電信と肩を並べだ。正面からの攻勢は得をするわけではないが、実際の経験を蓄積し、「農村で都市を包囲する」戦術をとり、華為は小さな市場、小国から始め、不断に陣地を攻略している。
確かに華為の通信基地局は世界で存在感があります。
初めて欧州で発表会を開催した中国携帯電話メーカーとして、華為はさらに成果を収めようとしている。欧州に多くのパートナーをもち、今日スマホを販売するようになっても、自然と販売チャネルがある。そう、華為がインターネット設備を提供している地下鉄では、当然のように華為スマホの広告があるのだ。
いま、残るは市場参入制限のため、救うことのできないアメリカ帝国主義人民だけとなった。
「このオチが言いたかっただけでは?」という気もしますが、中国メーカーによる「国際主義」の陰謀(?)は着実に進んでいるようです。