一点突破型のスマホは生き残れない?個性派「meitu」スマホ撤退の背景 すまほん!!

 自撮りアプリで有名で、「セーラームーンスマホ」や「カードキャプターさくらスマホ」までリリースしていた中国メーカー「美図(meitu)」が、スマホ事業から撤退です。

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中国メディアが分析するmeitu撤退

黒字化できず

 4月14日、日本でもスマホアプリ「美図秀秀(meitu)」で有名な美図の微博公式アカウントが、「最も美しい美図スマホユーザーへ」と題した「告別の手紙」を発表、スマホ事業からの撤退を改めて表明し、「中国経営報」が美図のスマホ事業撤退の背景についての解説記事を発表しました。

 「女性向けの美顔自撮りスマホ」という、一見するとニーズがありそうなものでも、機能特化型スマホは生き残るのが難しい市場環境が浮かび上がっている記事です。

 「中国経営報」の調べた美図社の投資家向け情報によると、2013年5月16日から現在まで、美図は10数種のスマホを発売、累計400万元のスマホ・ハードウェア営業収入を実現しながらも、黒字化には至らず。なかでも2018年に美図は8.79億元の純損失を計上し、スマホ業務は約5億元の赤字になったといいます。

小米が引き継ぐ

 事実上、撤退は既定路線でした。小米集団(Xiaomi)が2018年11月19日に美図スマホハードウェア製品の最高30年間独占利用許諾を獲得したと発表した後、美図社が2019年3月下旬に発表した2018年決算報告でも、2019年中にスマホ業務を完全閉鎖すると予告しており、4月14日の「告別の手紙」は業界にため息をもたらしただけだ、といいます。

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 「中国経営報」の取材に答えたある業界関係者は、「IPO(株式の新規上場)後、美図スマホ業務は使命を終えたとしかいえない」といい、他にも「小米に頼った時点で、美図スマホは終わった」、「小規模、細分化市場のスマホブランドは、ますます生き残るのが厳しくなった」などの声があったといいます。美図内部関係者からは、「美図スマホブランドの権利を小米集団へ譲渡し、美図美粧のEC業務を寺庫(secoo)の持株会社に譲渡したことで、美図はますます軽くなり、粗利の高いインターネット業務に集中できる」との声も。

美顔カメラアプリの苦戦からスマホ事業へ

 スマホなどハードウェア業務の規模拡張は、美図社が2016年12月15日に香港証券取引所への上場に成功した最大の原因だと指摘します。

 美図社のこれまでを振り返ると、董事長・蔡文勝とCEO・呉欣鴻は2008年10月に協同で美図社を設立、美図秀秀PC版を発表。簡単で使いやすいソフトウェア製品は、ユーザーが簡単に写真を美化できることから、「傻瓜式(バカ式)」のフォトショップだと呼ばれたそうです。その後、美図秀秀のモバイル版を2011年2月、自撮りに使用する美顔カメラを2013年1月、美顔カメラ海外版Beauty Plusを2013年5月、動画とライブSNS「美拍」を2014年5月、美粧カメラ、潮セルフィーを2015年5月、9月にそれぞれ発表。いずれのアプリも累計1千万人規模のユーザー規模を誇ったものの、いかにして収益化(マネタイズ)するかが難題だったといいます。

 アプリの商業化を推進するに当たり、美図が思いついたのがハードウェアだそうです。2013年3月1日に美図移動(モバイル)が成立、美図スマホなどスマート・ハードウェア業務を運営することに。これこそが「告別の手紙」にあった、「こんなにも多くの女性が自撮りを好んでいるのに、メーカーはスマホの前面カメラの効果を考えていないし、女性の自撮りニーズを考えていない。我々は女性が更に簡単に美しくなれる、彼女たちのためのスマホを持てればいいと考えました」という、ずっとアプリ開発をしていた美図がスマホなどハードウェア業務への進出の始まりなようです。

市場成熟により差異化された製品の生存難しく

(セーラームーンやドラえもんとコラボしたスマホも発売していた)

 美図スマホの出発点は正しく、市場の反応もそれを証明しているといいます。投資家向け情報と、これまでの財務報告など公開情報を「中国経営報」記者が調べたところによると、美図スマホは2013年に最初のスマホをリリースして2.79万台を販売、以降、2014年3機種リリース・27.75万台、2015年2機種・37.77万大、2016年3機種74.82万台、2017年5機種157.37万台、2018年1機種72.17万台、2019年は最後のモデル「美図V7」を発売し、最後となりました。

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 スマホなどのハードウェア業務は、始めてからすぐに美図社の重要な営業収入の柱になったといいます。2013~2018年の営業収入全体に占める比率は、59.7%、87.8%、89.9%、93.4%、82.6%、66.0%だったとか。スマホなどのハードウェア業務規模拡張が香港市場上場に成功した重要要因、というのは、こういうことだそうです。美図社は2017年3月20日に23.05香港元の最高株価を達成、時価総額1,000億香港元に迫りました。しかし美図スマホの衰退により、今の時価総額は140億香港元前後を低迷しているといいます。2013~2018年の純損失はそれぞれ2580万元、18億元、22億元、62.6億元、4595万元、8.79億元になったそうです。

 スマホ市場は既に成熟化し、徹底的に消耗品へと変わったことから、差異化された製品が絶対的な吸引力をもって細分化されたユーザー群を維持し続けるのは難しいと指摘します。

 「中国経営報」の記者が発見したのは、2013年に最初のスマホをリリースして以来、美図スマホの平均販売価格が上昇を続けていたことです。2013~2018年の平均販売価格はそれぞれ1834元、1533元、1699元、1959元、2365元、2519元。2019年1月にリリースされた美図V7は立ち上がりの価格が4799元に達し、フルスペックモデルは1万元の大台を超えたとか。最後、ヤケクソっぽいですね。

競争加熱によりコスト上昇、黒字化できず

 では、なぜ美図のスマホ業務はずっと黒字化できなかったのか?重要な原因は、スマホ市場の競争がどんどん激烈になったことから運営コストが上昇、とくに必要な研究開発資金がますます多くなったことにあると指摘します。データによると、2015~2018年の研究開発支出は、1.19億元、2.43億元、4.47億元、6.99億元と、右肩上がりになっていったそうです。

 中国国内のシンクタンク分析師によれば、美図スマホの撤退は非常に残酷な問題、細分化された隙間市場を狙ったメーカーは生き残れないことを表しているそうです。「消費者の選択はさらに大衆化とブランド化へと傾いていくだろう」と分析。

 「ソフトウェア企業として、ハードウェア業務に90%前後の営業収入を占めさせているのは、長期的に見て必ず問題がある」

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 「ここ数年、スマホの購買コストは上昇しており、激烈な市場競争のなかで必要な研究開発資金も、美図の小さな生存空間を完全に消耗させた。美図社の営業収入水準はずっと合格ライン付近にあり、たまに儲かるかもしれないが、長期的に見るとやはり赤字が多くなる」(いずれも前出分析師)

美顔カメラの「罠」

 また、河南省のあるスマホ販売業者は、「女性の美顔カメラ」という定義が、美図スマホの発展空間を限定したと指摘。「美図スマホの定義は美顔カメラだが、美図スマホが登場したばかりの頃、他メーカーの美顔効果は追いつかなかったため、美図スマホの最初はまだよかった。その後、中国国内主流スマホメーカーのカメラ機能が既に世界トップクラスになり、美図スマホの市場吸引力も小さくなった」

 また、ある女性ユーザーが思うに、美図スマホのセールスポイントは「セルフィー神器」であり、これ以外の機能はずっと他に劣っていた。ということは、美図スマホのユーザーは事実上、美図アプリのためにおカネを出しているわけで、ユーザーからすれば一度試してみればいい話であり、セルフィーのためにその他の部分で他所に劣る製品を使い続ける可能性は高くない、と指摘します。

男性ユーザーばかりの小米には良い買い物

 ここで注意しなければならないのは、美図スマホは今年中にスマホ業務を終了し、美図社自身はスマホを作らなくなるが、2018年11月にスマホ業務を小米集団へ権利譲渡したため、今後の美図スマホは小米が研究開発、生産、販売し、美図社は営業利益から配分を得るそうです。

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 双方提携後の最初のスマホは、今年中に出るのだとか。「小米にとって、女性美顔市場を向けの美図スマホは、男性ゲーム市場向けの黒鯊(Black Shark)スマホなど小米自身の細分化領域と、良好な相互補完関係にある」(前出分析師)

総評

 以上、美図のスマホ事業撤退についてでした。「自撮り機能に特化した女性向けスマホ」、なんだか聞いた感じ市場がありそうな気もするジャンルでしたが、このような「隙間商品」自体、生き残るのが難しい時代になった、ということだそうです。

 そういえば先日、スマホを買い換えようと思って売場をぶらついていたら、「スマホを何に使いますか」と販売員さんに話しかけられ、戸惑ってしまいました。営業トークとしてはまずニーズを聞いてくるのは当然ですが、「インターネット閲覧、SNS、通話、簡単な写真撮影やMicrosoft Officeで作成された書類ファイルの閲覧など、常識的なスマホの使い方をします」と回答しても、だから何だという話だよなぁと。

 「この機能なら、このスマホ」みたいな売り方が難しい時代になってしまったようですね。