普段「スマホの海外市場」にはあまり目が向くことがありませんが、どのような情勢なのでしょうか、中国メーカーを通して、東南アジア、印度、欧州をみてみましょう。腾讯新闻が報じました。
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進撃の中国メーカー、現在の戦況
2019年、中国主要メーカーの概況は、次のとおりだといいます。
華為(Huawei)のスマホは米政府の制裁により海外市場で全面的に縮小。
OPPOは同系列のRealmeブランドを引っさげて東南アジアやインド市場で堅調に推移しつつ、欧州市場の隙間を狙う。
小米は「意外にも」欧州市場で成功、インド市場を制覇した後のさらなる成長へ。
vivoはオンライン販売チャネル開拓段階が未だ中国国内に留まり、海外市場ではライバルの後塵を拝しており、オフライン・チャネルはインドで成長しているものの、全体的には「出遅れ」ている、とのこと。
さて、「5G」と「IoTエコシステム」が重要キーワードと目されている2020年、各強豪のグローバル市場での展望や如何に?主に、小米とOPPOの海外市場での戦いにフォーカスされています。
Xiaomi
Xiaomiを語る上で避けられない「非正規ルート」
まず、小米。「元小米社員」のコメントによると、「小米は海外で大量の在庫が発生している」とのこと。
同社は海外市場を「東南アジア市場」、「インド市場」、「欧州市場」に分類。
東南アジア市場で小米は一定の知名度を獲得しているものの、現地代理店の関係がうまくいっていないのがネックだとか。2018年年明け頃から、各チャネルの在庫が増え始め、一括支払いを求め始めたとか。とくにインドネシアの代理店Erajayaは、在庫が「多いときで200万台」まで達したとか。
小米の販売システムですが、前出元小米社員は「水貨(バッタもん)」という言葉を使わなかった日はない、といいます。
一応「バッタもん(大阪弁?)」について簡単に説明すると、非正規ルートで流通する正規品のことです。秋葉原や日本橋の安売り店に出現する正規新品をイメージすれば、だいたいそんなもんでしょう。
小米内部から貿易会社に在庫を流し、貿易会社は適当に高く売れる市場を探して利鞘を稼ぐ、というシステムで、「一時は海外販売の半分をバッタもんが占めた」そうです。
インターネットでのスマホ販売は供給にズレが生じることから、バッタもんがその調節作用を担い、ブランド価値を下げることなく在庫を処理する手段となっているとか。
もちろん弊害もあります。バッタもん市場に依存するのは「阿片中毒のようなもので、バッタ屋は利鞘をとるしか考えておらず、小米ブランドへの忠誠心はない」と指摘。
ただし一方で、バッタもんはグローバル市場への「通り道」にもなっているとか。小米がインド、インドネシア、スペイン、ウクライナなどに進出した際、いずれもバッタもん市場が小米にフィードバックをもたらし、後に小米の公式チャネルの参考になったとか。バッタもん市場が、市場調査の手段になっているということですね。
「上空まで飛び立てば、中間会社を切り離す」
2019年、小米は東南アジア市場でrealmeを含むOPPO系に攻め立てられ、市場シェアの成長が停止したとのこと。realmeはOPPOの培ってきたオフライン店舗の資源と、コスパの高さで小米の市場を奪った他、小米のスタッフも引き抜いていったそうです。
2019年第2四半期、Canalysのデータによると、東南アジアのスマホ市場は全体の出荷台数が3,070万台(第1位・Samsung)。OPPOが730万台で第2位、vivoが410万台の第3位、小米は370万台で第4位にとどまり、後ろにはrealmeが170万台で続いて小米のシェアを食い続けているとか。
インド市場では、小米印度の責任者・マーシャルがバッタもんの流入を阻止し、「独立王国」の維持に努めていると言います。数字を見ると、IDCによれば2019年9月現在の同年シェアは小米27.3%と首位を守っているものの、前年同期27.3%と比べれば、やや下落。
ただ、インド市場で小米は単価アップに成功しており、同社2019年度の総収入は348億元と、前年同期比54%増の大躍進を達成しているそうです。
スペイン市場で小米は、正規の代理店による販売チャネルを構築した他、インフラ関係でスペインでも強い華為から幹部を引き抜き、通信キャリアとの「コネ」を獲得したといいます。
通信キャリアとの提携の重要性について、前出元小米社員は「二段ロケット」に例えます。「小規模の時期は中間会社の推進力を借り、上空まで飛び立てば第2ロケットに点火して、中間会社を切り離す」といいます。
ウクライナでは、小米はSamsungの元代理店を捕まえたので、在庫さえ供給すればあとはお任せ。毎年100万台を販売し、小米はウクライナでシェアトップになっているそうです。
OPPO
東南アジアで軒並みトップ獲得
さて、一方のOPPO。OPPOは海外でチャネル、工場、付加サービスの一体化をゆっくりと進めてきたとか。海外市場の重点地区は「アジア太平洋」、最初の進出先はタイだったといいます。
2019年10月、OPPOはタイ・バンコクのショッピングセンター内に旗艦店を開設、スマホ及び周辺機器だけでなく、ドローン、カメラ、Bluetoothスピーカー、ワイヤレスイヤホン、AR/VR、スマートファッション、ロボットなど、様々な製品の体験店として位置づけられているとか。
OPPOの工場はインドネシア・ジャカルタ近郊のタンゲランに位置し、2014年に開設、2.7万平米規模、OPPO最初の海外スマホ工場。
Canalysのデータによれば、OPPOは東南アジアの多くの市場でトップを争っており、フィリピン、インドネシアでシェア首位。タイ、ベトナム、マレーシアで第2位だといいます。
利益でrealmeにダンピング攻勢?
また、OPPOのサブブランドrealmeによる海外市場での展開も迅速で、OPPOの実体店ルートを活用している上に、赤字をOPPOに補填させると割り切ったダンピング販売により、小米からシェアをゴリゴリ奪っていっているといいます。
Counterpointによる19年11月のスペイン市場データによると、realmeはスペイン進出から僅か1ヶ月半でスペインTOP5に食い込んだとのこと。
OPPOは2019年12月16日、アジア太平洋戦略発表会をマレーシア・クアラルンプールで開催、東南アジア地域5G時代の牽引役になると表明。
OPPOは英国で現地通信キャリアの英国電信(EE)と提携し、5G製品のシェア12%を獲得している他、オーストラリアでは5G製品で70%前後のシェアを獲得しているとのこと。ただ、西欧先進国についてOPPO副総裁は「国家の補助がないためネットワークは未だ建設中であり、商用5Gの推進は中国のように迅速には行かないことから、やや長い時間周期になるだろう」と、みているとのこと。
vivo
日本には進出していないことから、少し印象の薄いvivo。
インド市場では、2019年通年で約2500 万台を出荷したと見られ、同国第3位。vivo印度CEO陳志涌は、「これまでの印度での5年間は生存段階を乗り越えた。今後の5年は、どうやって引っ張っていくかだ」と述べたといいます。
realmeや小米とのオンライン市場での競争については、「まだ準備が整っていない。ここ数年、vivoはオフラインの消費者に注力してきた。ブランドにとって、オンライン・オフラインみな同じくらい重要だ」と答えたそうです。
同じ步步高系であるものの、OPPOとvivoのオンライン戦略は異なるとか。2019年からOPPOは国内外を同時並行で進めている一方、vivoはまず国内市場に着手したのだとか。
vivoはインドネシア、タイを始めとする東南アジア市場で一定のシェアを獲得しているものの、世界で最もハードルの高い先進国市場、日本、ドイツ、米国に対しても、vivoはOPPOよりも慎重な態度をとっています。
なお、OPPO副総裁によると、「2020年は更に空白市場へと参入していくことになる。欧州ドイツ、ルーマニア、ポルトガル市場のほか、米州メキシコ市場、アフリカ市場も計画している」とのこと。
総評
以上、小米、OPPO、vivoを通してみた世界各国のスマホ市場でした。華為は米政府による制裁の影響を受けて足踏みしていますが、各社果敢に各国市場へと打って出ていますね。
なかでも気になるのは、OPPO傘下のrealmeが、赤字覚悟で小米からシェアを奪う「刺客」になっている点です。OPPOはIoTにエコシステムにも力を入れていますが、その最大のライバルは、もちろん先行している小米。OPPO系と小米どちらが勝つか、注目の一年になりそうです。