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ノイズキャンセリングヘッドホンの王道。ソニー「WH-1000XM4」レビュー

 騒音除去ヘッドフォンの代名詞!

 Sonyの大人気ノイズキャンセリングワイヤレスヘッドホンシリーズ、その最新モデルWH-1000XM4が2020年9月4日に発売したため、これを購入しました。軽く数日使ってみた感想を書いていきます。

開封

 箱を横に引き出すタイプの開け方です。引き出すと、Sonyが提供するHeadphones Connectアプリの紹介がされています。

 内容物はWH-1000XM4本体と、WH-1000XM4の専用ケース、各種ケーブル、説明書とサポート登録の案内です。

 ケーブルは有線アナログ接続用の3.5mmヘッドホンジャック用ケーブル(両端3極仕様)、航空機接続用変換アダプタ、充電用USB Type-Cケーブルが同梱されています。

 有線接続用ケーブルは両端3極仕様なので、有線でスマートフォンに接続時はスマートフォン本体側のマイクが使われる使用ですね。

外観

 R側の下部に充電端子を備えています。充電端子はM3同様USB Type-C端子を採用。

 R側の平面部はタッチ操作が可能なインターフェースになっています。Sonyのワイヤレスヘッドホンを使っている人なら従来どおり違和感なく操作できます。

 L側には電源ボタン、カスタムキー、有線接続用の端子があります。カスタムキーに関しては後述します。

 L側の平面部にはNFCを備えます。対応したデバイスをかざすだけで簡単にペアリングすることができます。本体色の黒に溶け込むような彫り加工されているので通常時も目立ちません。

 L側のみに装着判定をするための近接センサーを備えています。

 外観を比較して、M3と違うのはNFCのロゴが印刷か刻印か、上部の型番が異なるか、内部に近接センサーがあるのかの違いでしかわかりません。大きな差異はないのでマイナーモデルチェンジのような位置づけかも。

新機能

 外観は大きく変わらず、あまり新モデル感はないM4ですが、使える機能は以下の通り大きく増えました。

より強くなったノイズキャンセリング

 M3にも搭載されていたノイズキャンセリング用のQN1チップとBluetooth用のSoCと連携させることで、毎秒700回の処理を行うことが可能になりました。それにより、より人の声や日常生活で発生するノイズを低減できるようになりました。

 筆者も街中で使ってみましたが、今まで使ってきたヘッドホンで一番ノイズキャンセリングの効果を感じました。これは良いですね。

つけたままでも会話ができる

 M4ではヘッドホンをつけたままの状態で声を発すると、音楽再生を停止し、外音を取り込みモードに切り替わる、スピーク・トゥ・チャット機能が搭載。両手に荷物を抱えている状態でもヘッドホンを外すことなく会話ができるというわけですね。

 アプリをインストールするとより細かい調整ができ、感度やノイズキャンセリングモードに戻る時間を設定できます。

 試しに使ってみましたが、これは面白いな!と思った反面、使い始めた当初は困ることがありました。

 例えば移動中はこのモードはすごく便利なのですが、自宅に帰ってパソコンに繋ぎ通話をすると自動的に外音取り込みモードに切り替わってしまい、通話を聴くことができません。このスピーク・トゥ・チャットをオフにするにはスマートフォンに接続し、機能をオフにするか、2本指でタッチパッド部分を長押しする必要があります。

 毎回スマホを操作したり、長押しするのは面倒だなあと思っていましたが、これはアダプティブサウンドコントロールを活用することで回避できます。アダプティブサウンドコントロールは位置情報や動きを検出し、その時に応じた設定に自動で切り替えることができる機能です。M3やWF-1000XM3にも搭載されている機能ですが、スピーク・トゥ・チャットがアダプティブサウンドコントロールで制御できるようになりました。

 アダプティブサウンドコントロールを活用し、自宅にいる間はスピーク・トゥ・チャットをオフ、ノイズキャンセリングのみで固定することができます。賢くスマホ側のGPSを用いているので、家から出ればまたスピーク・トゥ・チャットが有効になります。都度設定をアプリを立ち上げる必要もなく、一度設定してしまえばめちゃくちゃ便利です。

装着検出機能

 L側に搭載された近接センサーにより、ヘッドホンを外すと音楽が自動で停止します。その間はタッチセンサーも無効化されるので誤作動がゼロに。

 さらに再生するにはまた装着するだけで自動で再生されます。外してから15分以上経過するとそのまま自動的に電源オフになるそうです。

 筆者はよく電源を切り忘れて使えないことが何回かあったので、自動的に電源オフになる機能嬉しいですね。装着検出もかなり精度が高く、誤作動することもなかったのでかなり満足です。

  この機能が不要な人はHeadphones Connectアプリでオン/オフが可能になっています。

マルチポイント接続対応

 2台の機器と同時接続が可能になりました。通話・音楽関係なく利用できます。

 筆者も試しにiPhoneとMacBook Proでマルチポイント接続してみました。iPhoneで音楽を停止して数秒してからMacBook Proで音楽を再生すると、きちんとM4から再生されました。都度接続先を変更する必要がなく便利です。

 また、この機能によりMacBook Proに接続し音楽を聞いているときでも、iPhoneでHeadphones Connectアプリが使えるので、設定を変えたり、イコライザを調整できるようになりました。めちゃ便利です!!!!

 ただ要注意してほしいのが、あくまで2台同時に接続ができるようになっただけで、2台同時に再生はできないということ。また、切り替わりには双方に無音状態が必須のようで、コンテンツは必ず止める必要があります。

 そしてもう一つ注意してほしいのが、マルチポイント接続時はLDACが利用できないということ。仮にマルチポイント接続をオンにして1台のみ接続していてもLDACは利用できません。LDACを利用するには必ずマルチポイント接続をオフにする必要があるので要注意。

Androidデバイスに最適化

  Androidデバイスを使用している人には朗報です。M4をペアリングモードにした状態でデバイスを近づけるだけでペアリングできるFast Pairに対応。AirPodsのような感じですね。対応デバイスはAndroid 6.0以上のデバイスとのこと。

 Fast Pairを用いてペアリングするとGoogleアカウントにM4が紐付けされるので、デバイスを鳴らす機能が利用可能になります。どこに置いたかわからないときに便利です。

 またGoogleの端末を探すアプリを使うと、最後に接続していた場所と時間を地図で確認することができます。

 そしてAndroidデバイスなら対応しているデバイスでワイヤレスでハイレゾ音源を楽しめるLDACを利用することが出来ます。筆者も対応デバイスのGoogle Pixel 4で接続を確認できました。先程の少し触れましたが、マルチポイント接続をしているときはAACに固定されてしまうので、LDACを利用する場合は必ずマルチポイント接続をオフにしましょう。

 LDACが利用できているかどうかは、Headphones Connectアプリで確認することができます。

イマイチなポイント

 WH-1000XM4を使って感じたイマイチなポイントを紹介します。

外音取り込み系

 アンビエントサウンドやクイックアテンションモード、スピーク・トゥ・チャットなどで外の音を聴く機能があります。これらは一度、処理され聴くことができるのですが、若干の遅延があるため、自然ではありません。これは相変わらず。

 昨年Apple初のノイズキャンセリングイヤホンのAirPods Proがありますが、外音取り込みはAirPods Proが一番自然に感じます。というのもSoCの開発力があるAppleが勝るのは当たり前かもしれませんね。

DSEE Extreme

 圧縮で失われた情報をハイレゾ相当に再現するDSEEがより進化したDSEE Extreme。ストリーミングの音楽でもハイレゾ相当で楽しめる今どきのコンセプトは良いのですが、バッテリー消費が激しすぎます。DSEEをオフにした状態の倍のスピードでバッテリーを消費しているように感じました。

マルチポイント接続

 新機能の目玉でもあるマルチポイント接続。大変便利で筆者も使っているのですが、マルチポイント接続時にはマルチペアリング機能は利用できません。2台接続時に接続デバイスを切り替えるには、アプリか本体のBluetooth設定で一度デバイスを切断する必要があります。

無くなったaptX、aptX HD

 高音質の無線ノイズキャンセリングヘッドフォンと言えば、ソニーは王道。多くのユーザーに愛されています。

 しかし今回、M4が多くの人が購入を見送っています。その理由として挙げられているのが「aptX、aptX HDが非対応になったこと」です。

 これに関してSonyからは説明がありませんが、憶測ではQualcommにライセンス料を払いたくない、遅延よりも音質を優先したのでは?など様々です。

なぜ無くなった?

 筆者もいろいろ調べて考えてみたのですが、色々な要素が同時に重なったと思っています。

 まず、aptXがそれほど優れてはいないということ。aptXが良いと言われるのは一般的に音が良い、遅延が少ないと言われていますが実際は言うほどではないようです。既に様々な媒体や海外ユーザーが検証しており、それらを照らし合わせるとaptXはS/N比もそれほど良くなく、遅延もAACと比較してもせいぜい約30ms程度ということ。30msと言うと1秒60コマの動画で約2フレームほどの差しかないのです。S/Nも悪く、遅延もAACと変わらないのではそもそ対応する必要がないのでは?となるのも必然。

 そしてAndroid Oreo以降、OSがLDACに対応したこと。以前からAndroidのAACエンコーダはかなり酷いようで、昔からAACを採用しているAppleのiPhoneと比較すると、Androidデバイスには遅延や音質低下が確認できるようです。いくら外部のハードウェアで補ってもOSレベルで改善が必要ではどうしようもありません。しかし、OreoでLDACに対応したことで多くのデバイスでLDACが利用できる環境が整いました(端末により利用可否は変わる)。それによりaptXやAACと比べより高音質に聴くことができます。

 となればaptXに対応するメリットとは、現状ほぼ無いのです。AppleユーザーはAACコーデックを使えるので良し、AndroidユーザはLDACを使えるので良し。

 aptX HDもAndroidデバイスと接続すると、機種に依りますが、LDACのほうが遅延が少なく、ビットレートもユーザが変更可能である。つまりアドバンテージはLDACにあるという現状を考えると、SonyがaptXとaptX HDを捨て自社のLDACに絞ったのは賢明だったのではないかと思います。

まとめ

 おそらくaptX、aptX HDが無くなった理由は、より音に拘ったからではないか。

 iPhoneユーザはAppleが長年培ってきた、AACで。AndroidユーザはLDACで。LDACがオフになってしまうため、Android端末はマルチポイント接続を利用しないほうが賢明。音質や遅延が気になるならそもそも有線で繋ぐ。

 WH-1000XM4の開発者インタビューを読むとわかるのですが、WH-1000Xシリーズはそもそも「周りの騒音を低減させ、クリアな音質で音楽を楽しむ」ものです。映画や動画というワードは1回限りしか登場せず、公式PVでも動画を視聴しているシーンは一瞬のみしかありません。

 ゲームをするなら、2019年以降QualcommのハイエンドSoCが対応し始めたaptX Adaptiveが遅延がなく優位という可能性もあるものの、あくまで高品位な音楽再生を重視する製品コンセプトから、atpXごと省いたのではないかと推測します。

総評

 順当進化したモデル。オススメのBluetoothヘッドホンを聞かれたらWH-1000XM4を間違いなく勧めます。

 音楽を聴くことに特化したWH-1000XM4。M3が登場したときから完成度は高いものでしたが、益々完成度が増しました。見た目もスタイリッシュで、高級感のある黒字に落ち着いたゴールドカラーのSonyロゴ。どんな世代でも使えるヘッドホンだと思います。

 ただ唯一惜しいなポイントが価格。こんなに機能が盛りだくさん、高音質なのは納得できるのですが、税込4万4千円は悩む人が多い価格ではないかと思います。そして現在M4が登場し、M3が販売終了になったことで、M3が3万を切り2万8千円、更に1500円オフクーポンが配布されていたこともあり、2万6千円台で購入できたという人もいました。

 マルチポイント接続やスピーク・トゥ・チャットなどの新機能を使いたい人はM4、新機能はいらないとりあえずノイズキャンセリングヘッドホンを使ってみたいという人はM3を購入することをオススメします。

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(編集・校閲: ivara)

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