ソニーから待望のワイヤレスヘッドホン「WH-1000XM6」が発売されました。筆者はヒンジが割れたWH-1000XM4を使い続けていたのですが、配線が剥き出しのまま使うのは流石に限界ということで、発売されたタイミングで買い替え。

音だけはなんとか聴けるWH-1000XM4
ずっと待っていたモデルなので超気に入って使っています。というわけで、本記事ではWH-1000XM6のレビューをお届けします。
Index
WH-1000XM6の外観
付属品は以下のとおりです。
- キャリングケース
- 説明書
- 保証書
- Type-Cケーブル
- ステレオケーブル
こちらがWH-1000XM6本体。今回はプラチナシルバーを選びました。少し白みがかった上品なカラー。全体的にミニマルな印象で、ファッションアイテムとしても成立する、洗練された佇まいです。
表面は和紙を思わせるサラサラとしたマットな質感で、高級感がありながらも指紋が付きにくいのが嬉しいポイントですね。
ボタン類はL側の下部に集約。電源ボタンの形状が変わってNCボタンと押し間違えにくくなるなど、日々使う上での細かな配慮が随所に見られます。
これまで使っていたWH-1000XM4と比べると大幅にアップデートされています。繋ぎ目のないシームレスで洗練されたデザインに変更され、より所有感を満たしてくれます。

WH -1000XM4
WH-1000XM6には金属製のヒンジが採用されています。WH-1000XM4はこの部分が非常に脆く、ある程度使っているとパキッと折れてしまいましたが、WH-1000XM6では心配いらなそう。
WH-1000XM5では折り畳めない構造でしたが、WH-1000XM6から曲げられるようになり、携帯性が向上。付属のキャリングケースに収めればスムーズに持ち運びができます。
WH-1000XM6の音質
筆者が使っていたWH-1000XM4との比較になります。

奥がXM4、手前がXM6
WH-1000XM6の音質は、じっくり聴き込むほどにその進化を感じられるものでした。WH-1000XM4も非常にバランスの取れた良い音でしたが、XM6はその方向性を引き継ぎつつ、表現力を新たな次元へとステップアップさせた印象です。
最も大きな変化は、音全体のディテールと分離感が格段に向上したこと。これまで良くも悪くも一体感のあったサウンドから、各楽器の音やボーカルがより明瞭に描き分けられるようになりました。特にボーカルは、演奏に埋もれることなくその存在感が際立ち、アーティストの息遣いまで伝わってくるかのようです。
それを支える低域も、量感を確保しながらタイトに引き締まっており、バスドラムのアタック感はキレを増しつつも、決して中高音域のクリアさを邪魔しない。この絶妙なバランス感覚には、ソニーの音作りへのこだわりを感じます。
全体として、従来のリスニングの楽しさはそのままに、少しモニターライクな正確さが加わったことでどんなジャンルの音楽でも、その魅力を余すことなく引き出してくれます。Sonyが掲げる「アーティストが意図した音をありのままに」というコンセプトが、見事に体現されたサウンドと言えるでしょう。
新機能「360 Upmix for Cinema」
WH-1000XM6で新たに追加された「360 Upmix for Cinema」も、注目したい新機能の一つです。これはソニー独自の信号処理によって、普段見ているステレオ音源の映画やドラマを臨場感あふれる立体的な音場へと変化させてくれるものです。
実際に試してみると、その効果には驚かされます。セリフには適度な反響が加わって奥行きが生まれ、爆発音などの効果音には、まるで映画館で体験するような、空気が震えるような重低音とリバーブ感が追加されます。
この機能の真価は、日常の映像鑑賞を手軽に特別なシアター体験へと昇華させてくれる点にあります。一度この迫力を味わうと、機能をオフにしたときの音が少し物足りなく感じてしまうほど、その差は歴然です。
映画やドラマはもちろん、アクションの多いゲームやライブ映像などとの相性も抜群でしょう。映像コンテンツを主に楽しむ方にとっては、このヘッドホンを選ぶ大きな付加価値になると感じました。
WH-1000XM6のノイズキャンセリング
1000Xシリーズと言えば、高性能なノイズキャンセリング性能でしょう。前モデルの時点で既にトップクラスの実力でしたが、WH-1000XM6はその期待をさらに上回るものでした。
WH-1000XM4でも得意だった電車内の走行音といった低域のノイズは、さらに一段静かになっています。しかし、特筆すべきはその進化が低域に留まらない点です。これまで少し苦手としていた人の声やキーボードのタイピング音といった中高音域のノイズが、驚くほど効果的に低減されています。
カフェで装着すれば、音楽を流さずとも周囲の会話が気にならないレベルまで静かになり、自分の作業に深く集中できます。
その心臓部である新開発の「QN3プロセッサー」と12個に増えたマイクが、リアルタイムでノイズを最適化してくれるおかげでしょう。それでいて、ソニーならではの圧迫感の少ない自然な静けさは健在で、長時間の利用でも快適です。もはや「騒音を軽減する」というレベルではなく、「どこでも自分だけの静かな空間を作り出す」。まさに世界最高クラスを謳うにふさわしい、圧倒的な静寂体験だと感じました。
WH-1000XM6の操作性
操作方法は以下のとおり。
再生/停止 | 右ハウジングを2回タップ |
曲送り | 右ハウジングを前にスワイプ |
曲戻し | 右ハウジングを後ろにスワイプ |
音量を上げる | 右ハウジングを上にスワイプ |
音量を下げる | 右ハウジングを下にスワイプ |
電話を受ける | 着信中に右ハウジングを2回タップ |
着信拒否 | 通話中に右ハウジングを2回タップ |
通話終了 | 着信中に右ハウジングを長押し |
外音モードの切り替え | 左側のNC/AMBボタンを押す |
音声アシスタント | 右ハウジングを長押し |
ペアリングモードへの移行 | 電源ボタンを長押し |
WH-1000XM4から続く、右ハウジングを指でなぞるタッチ操作の快適さはXM6でも健在ですね。再生/停止や曲送りといった基本操作は、説明書を見なくても直感的に使えます。ただ、本当に良くなったと感じるのは、日々の使い勝手を向上させる細かな改善点です。
たとえば、物理ボタン。WH-1000XM4では同じような形のボタンが並んでいましたが、WH-1000XM6では電源ボタンの形状が変わり、指先の感覚だけで押し分けられるようになりました。地味な変更ですが、押し間違えがなくなるのはストレスフリーで嬉しいですね。オンライン会議中にマイクをサッとミュートできる機能が追加されたのも、今の時代に合った便利な進化だと感じます。
専用アプリ「Headphones Connect」との連携も強化されています。特にイコライザーが5バンドから10バンドへと細かくなり、音質をかなり追い込めるようになりました。映画向けの「360 Upmix for Cinema」といった新機能も、このアプリからワンタッチで設定できます。
基本の使いやすさはそのままに、使っていて「こうだったら良いのに」と思っていた点がしっかり改善されている、そんな印象を受けました。
WH-1000XM6の外音取り込み
ヘッドホンを着けたまま会話したい時に便利な外音取り込み機能。WH-1000XM4でも重宝していましたが、どこか「マイクで拾った音だな」という人工的な感じがありました。
ところが、WH-1000XM6の自然さはかなり進化しています。これまで気になっていた「サーッ」というわずかなホワイトノイズがほぼ消え、本当に自分の耳で直接聞いているかのようなクリアな音になりました。大げさではなく、音楽を止めていると、外音取り込みモードになっていることを忘れてしまうほどです。
強力なノイズキャンセリングと、この自然な外音取り込みがボタン一つで切り替わるのは、もはや不思議な感覚です。音楽に集中したい時も、周りの音に注意したい時も、どちらのシーンでも最高の体験を提供してくれる。そんな印象を受けました。
WH-1000XM6のバッテリー周り
ノイズキャンセリングをONにした状態で、最大30時間というスタミナを誇ります。これだけ持てば、毎日の通勤・通学はもちろん、数日間の旅行や出張でもバッテリー切れの心配はほとんどないでしょう。
特に素晴らしいのが急速充電性能です。わずか3分間の充電で、約3時間も再生できます。家を出る直前に充電忘れに気づいても、身支度をしている間に、その日の移動中に聴く分は十分に確保できる。この安心感は大きいですね。
充電しながら使えるようになった点も便利です。万が一バッテリーが完全になくなっても、モバイルバッテリーなどに繋ぎながら有線で音楽を聴き続けられるので、充電中だから音楽が聞けない!ということがなくなります。
総評
個人的な感想としては、予算が許すのであれば、間違いなく「買い」と言えるワイヤレスヘッドホンだと感じました。
ノイズキャンセリング、音質、そして日々の使い勝手。そのすべてが前モデルから着実に、そして時には劇的に進化を遂げており、加えて、折りたたみ構造の復活という明確な弱点が消えたのも嬉しいです。
もちろん、約6万円という価格や、USBオーディオに非対応といった細かな点は気になるところ。装着感の好みもあるかもしれません。しかし、それらを差し引いても全体的な満足度は非常に高いです。
最高の静寂で音楽や映像に深く没入したい方、オンライン会議での通話品質も妥協したくないビジネスパーソン、そして前モデルから確かなステップアップを実感したいオーディオファン。ほとんどの人にとって最適な選択肢だと感じます。興味あったらぜひチェックしてみてください。