中国には中国移動、中国聯通、中国電信と3社の国営通信キャリアがありますが、11月1日に中国移動通信集団と大手ECサイトの京東科技が戦略合作協議(提携契約)を締結、11月2日に中国電信がアリババの阿里と戦略合作協議を締結し、同日、中国聯通がインターネットプラットフォーマー最大手の騰訊(テンセント)と共同出資し新会社を設立したことが明らかになりました。
国営企業とIT民間大手の提携が大きな流れになっていますが、どういった目的なのか、中国「中新財経」の記事をもとにお伝えします。
中国聯通株価ストップ高
11月2日、テンセントと中国聯通が合弁新会社を設立したとの情報が注目を集め、「テンセント副総裁が既に中国聯通の取締役になっている」との話題が微博(ウェイボー)のトレンド入りし、中国聯通の株価がストップ高になるなど、大きな反響がありました。
中国市場監督機関が10月27日にホームページ上で発表した文書によれば、聯通創新創業投資有限公司と深圳市騰訊産業創投有限公司による合弁企業新設の案件は、独占禁止法上の審査を通過、審査終了は10月18日だったとのこと。
新設合弁会社の主な事業内容はCDN(コンテンツデリバリネットワーク)とエッジコンピューティング、持ち株比率は聯通側48%、テンセント側42%、関連職員10%。
目的は国営企業の強化
なお、今回の合弁は「国企混改」と呼ばれていますが、中国国営通信社「中国新聞網」の解説によると、持株の交換や各種私的資本を引き寄せる様々な方式によって、資本混合経営を進め、国営企業の市場競争参加を促進するというもの。
混合所有制(みんなわりと忘れていましたが、中国は社会主義国家なので、現制度は公有資本と私有資本の二本立てという考え方が前提としてあります)の最終目標は、国営企業に改革の中で競争力と活力をもたらすことということです。
なんといおうか、「国営企業しか得してないのでは」という気がするというか、そう書いてあるので、こんな企画、日本で出したら大変なことになるといおうか、民営企業の方から相手にされない気がしますが、中国特色社会主義の強大な国家建設に協力することは、愛国的資本家として当然の義務なので、堂々としたものです。
なお、中国聯通とテンセントの合弁新会社設立のニュースをきっかけに話題になった、テンセント副総裁が中国聯通の取締役という話ですが、実はテンセント高級執行副総裁廬山が中国聯通の取締役に就任したのは2018年2月のことであり、そう最近ではありません。なお、百度(baudu)CEOの李彦宏も同じ臨時株主総会で取締役に選任されています。
IT大手と国営企業による「再編成」の幕開け?
今回の中国聯通とテンセントが「混改」新会社を設立した件について、中国聯通の発表によれば、当該企業の組織は現在進行中であり、設立登記も完了していない、当社の生産経営に大きな影響はなく、長期的に双方の強みを拡大し、CDNとエッジコンピューティング産業チェーンを拡大させるものであるとのこと。
11月1日、2022京東雲城市(クラウド都市)サミット上海ステーションの「京東科技提携パートナー論壇」にて、京東科技と中国移動通信集団上海有限公司の戦略提携契約が調印されました。
プラットホーム型スマート都市、デジタル政府、データセンター、クラウド計算、ビッグデータ、通信及び国際化業務、スマート家庭などの分野でのイノベーション提携。
京東集団副総裁、京東科技エコシステム責任者の王楠と、上海移動副総経理の王光華らが調印式に出席。
11月2日、2022年インターネット大会「阿里提携パートナー論壇」にて、アリババの阿里と中国電信股份有限公司が戦略提携契約を調印。こちらも、プラットホーム型スマート都市、デジタル政府、データセンター、クラウド計算、ビッグデータ、通信及び国際化業務、スマート家庭などの分野でのイノベーション提携とされており、阿里集団CEO張勇と中国電信董事長(代表取締役)柯瑞文らが調印式に出席。
これらの動きについて、中新財経は「IT大手と国営企業の新たな『混改』の幕開け」と評しています。
まとめ
中国三大国営キャリアとテンセント、阿里、京東との提携は、「国営企業とIT大手との融合」の第一歩のようですが、先の党大会では中央政治局常務委から経済派が排除されたこととも相まって、「国家資本主義」強化の姿勢がありありと見えるようでなりません。
今後、大手民営企業がどのように再編成されていくのか、かなりきな臭い気がします。