Appleが2022年9月に発表した最新のiPhone 14シリーズでは、iPhone史上初めて、人工衛星を経由した緊急用通信機能である「Emergency SOS via satellite」に対応しています。現在この機能が利用可能な国の一つであるアメリカにおいて、iPhoneの人工衛星を通じた緊急通報が利用されたと思われる事例が、世界で初めて報告されました。
これは、アラスカ州警察が公表したレポートによって明らかになったもの。
2022年12月1日午前2時ごろ、成人男性がスノーモービルを利用してアラスカ州東部のノールビグからコツェビューまで移動していたところ、なんらかの原因でスノーモービルが故障し、立ち往生。基地局の通信が及ばずかつ極寒の環境に晒されていたため、男性は、iPhoneの衛星通信機能を利用して緊急通報を行いました。
Appleの緊急対応センターは、地元のレスキュー隊などに受信したSOSを共有し、衛星通信機能を利用して取得したGPS座標に救助隊を派遣。結果、男性は、けがもなく無事救出されました。
iPhone 14シリーズの衛星通信による緊急通報では、各機関へSOSが送信される前に、救助に必要ないくつかの情報をユーザーに尋ね、より正確に記録できる設計になっているとのこと。一連の救助活動に携わったアラスカ州の警察官は、「衛星通信を介した緊急通報機能によって取得できる情報の正確さに感銘を受けた」と語っています。
現在、この緊急通報機能は、対象地域における全てのiPhone 14ユーザーが2年間無料で利用可能。Wi-Fiまたは各キャリアの基地局による通信が行えない場合に有効化される仕組みになっています。
今回の事例においては、iPhoneの衛星を利用した通報機能がなければ、男性には命の危険もあったと考えられます。
山地が多い日本においても、地方の山奥など基地局の電波が届かない場所は多数存在します。筆者の地元である長野県では、例年秋から冬にかけて、山菜・キノコ収穫、スキーや冬山登山における行方不明者が後を絶ちません。この機能があれば、遭難者の位置情報なども簡単に取得できるため、山における事故の犠牲者を減らすことにもつながると予想されます。
現在この衛星通信による緊急通報機能は、北米において利用可能。まもなくフランス、ドイツ、アイルランドおよびイギリスに拡大される予定です。日本国内での展開にも期待したいところですね。