2万円台でWidevine L1対応&セルラー通信に対応したN-one社の「NPad Pro」を提供していただきました。細かい点に触れつつ、レビューしていきます。
Index
製品紹介
まずはNPad Proの公称スペックから紹介します。NPad Proは2GHzのCortex-A75×2と1.8GHzのCortex-A55から構成される「Unisoc T616」を搭載。中華タブレットでよく見るSoCです。性能としてはお世辞にも高いとは言えませんが、どこまで戦えるのか気になるところです。
他方、少なくなりがちなストレージは128GBと比較的広大で、実行メモリは8GB。さらにmicroSDカードによる外付けストレージにも対応しており、容量不足で悩むことはなさそう。
また、この価格でありながら、一部を除いた各種動画配信サービスを高画質で見るために必要なWidevine L1対応を謳います。これが詐欺でなければ、手軽なエンタメ用端末としての価値が十分あります。
さらにセルラー通信、しかもデュアルnanoSIMに対応。残念ながら対応バンドにローカライズは施されておらず、国内ではソフトバンク系回線以外のプラチナバンドを掴みませんが、GPSにも対応するため、カーナビとしての使途も期待できます。
簡単なスペック表は以下の通り。
OS | Android 12 |
---|---|
SoC | Unisoc T616 |
メモリ | 8GB |
容量 | 128GB |
画面 | 10.36型 (2000×1200) IPS液晶 |
カメラ | 1300万画素 |
インカメラ | 500万画素 |
電池 | 6600mAh |
寸法 | 246×160×7.5mm,440g |
LTE | B1/B3/B5/B7/B8/B20 B38 B39 B40 B41 |
Amazonでの販売価格は3万3900円ですが、クーポンやタイムセール等により、恒常的に2万4000円前後で購入できます。
デザイン
ではデザインから。まずは外箱から……と思ったものの、さっそく問題が。箱を封印するシールが中途半端に剥がされ、また外箱も微妙に汚れており、最初から取り付けられている保護フィルムにも擦り傷が。まあ本体には傷もないし問題ないでしょう。格安中華タブ、いきなりスパイシーで良いね。
同梱品は最大20Wの充電器とケーブル、SIMピンに、ごく簡素な日本語対応クイックスタートガイド。背面にはSIMカードスロットに関するフィルムが貼付されています。
本体のボタン配置は初見だと若干困惑します。縦持ち時にカメラが上にくる面にほとんどの機能が集約されており、順番に電源ボタン、音量ボタン、リセットボタンにUSB Type-Cポートが続きます。「令和にリセットボタンw」って感じですが、格安帯中華タブでは「あるある」です。
底部は見事なまでに何もなく、側面にはスピーカー用の穴が2か所づつ、さらに右側面にSIMスロットがあります。自動輝度調節のための照度センサーは見当たりません。本体側にもそのような設定はないことから、画面の明るさを自動的に変更する機能はない模様。
本体色はグレーで、デザインも相まってそこまでの高級感を感じさせませんが、意外だったのは本体材質。一体型の金属ボディで手触り抜群。この時期限定かもしれませんが、ボディはひんやりと冷たく、何もなくともちょいちょい触ってしまいたくなります。プラスチックやガラスの背面は指紋が目立ちやすいですが、本機では目立たず快適。
また、タブレットの画面サイズは11インチが主流ですが、NPad Proは10.36インチ。筆者が所有しているXiaomi Pad 5と比較して文字通り一回り小さい筐体は、軽さも相まって難なく片手でホールドできます。
シールによって技適マークが掲示されています。しかし気になるのが入力電圧。NPad Proは18WのPD充電に対応するとしていますが、シールでは5V=2.0Aとなっており、速度詐欺を疑います。これは後程検証します。
スペック
搭載しているSoCはUNISOC T616。安価な中華タブレットの主流なのか、最近は同SoCを搭載する端末を比較的多く見かけます。Cortex-A75×2と1.8GHzのCortex-A55×6で構成されており、高い性能を期待できません。
まずはCPUの性能を計測するGeekbench。最新バージョンのGeekbench 6のスコアはシングル437点、マルチ1573点。Geekbenchはバージョンごとの互換性がないため、現在多くの結果が出回っている旧バージョンのGeekbench 5のスコアと比較はできない点に注意が必要です。
さて、このスコアですが、国内で4万円弱で販売されているOPPO Pad Airと同等か少し上という結果。OPPO Pad AirはSnapdragon 680を搭載するタブレットで、これを上回る性能をたたき出したのは少し意外。
AnTuTu v9ベンチマークスコアは24万5931点。こちらもSnapdragon 680と横並びのスコアです。
機能・操作性
プリインストールOSはAndroid 12。ダークモードをオフにしていれば、設定やロック画面などはしっかり壁紙の色に合わせた淡い色合いになります。カスタマイズはほとんどされておらず、スクショ時の編集・共有メニューなども健在。
操作感は特にもたつきや苦しい場面を感じることなく、おおむね快適。開発者オプションよりアニメスケールの再生時間を短くした方がストレスなく利用できます。YouTubeの再生は1080pもこなせ、後述しますが通信環境の良いところでは不満なく視聴できます。
とはいいつつ、やはりゲーム用途にはお勧めできません。リズムゲームが得意な友人にプレイさせたところ、負荷がかかる高難易度譜面ではフレームレートが目に見えて落ちるほか、画面中央を3本指以上で押した場合、誤反応することも。軽量な2Dゲームであれば問題はないでしょうが、3Dゲームや音ゲーは満足にプレイできないものととらえたほうがよさそうです。
なお、初期設定ではタップ音が鳴るようになっていますが、タップ音はかなり遅延がひどいためオフにすることを推奨します。バイブレーションはそこまでの遅延を感じませんが、起動直後など負荷がかかる際は振動する感覚が変則的になるなど、不安定さは否めません。
また、NPad ProはGPSを搭載しています。短期間ですがカーナビ用途として使ってみたところ、起動直後はおかしなずれを感じましたが、ある程度すると気にならなくなり、普通に案内もこなせていました。カーナビとして十分使えそうです。
ディスプレイ・動画再生
ディスプレイはIPS液晶の10.36インチ、解像度は2K(2000×1200)のアスペクト比4:3。グレア液晶であり、発色はそこそこ。この価格帯に映像美を求めるのは酷ですが、ごろ寝YouTube用途になら全く気にならない程度です。輝度ムラも感じません。
IPS液晶の特徴である圧倒的な視野角もあり、斜め方向から見ようが、色の違いを感じることはありません。
Widevine L1だからといって必ずしもAmazon Prime HD対応ではない
また、特筆すべきなのは、この価格帯でありながらWidevine L1に対応すると謳うこと。これにより、Amazon Primeを除く主要な動画配信サービスのコンテンツを高解像度で楽しめます。
DRM infoアプリから対応するWidevineを確認すると、しっかりWidevine L1に対応していることがわかります。
それよりも気になるのが「BMAX」の表記。OEMなのでしょうね。
話を戻しますが、Amazon Prime Videoでは、たとえデバイスがWidevine L1に対応していようが、Amazon側が指定した特定デバイスでしかHD再生は行えません。NPad Proも例にもれず、高画質での再生は行えませんでした。
一部では、「Amaozn Primeのベータ版に参加すれば、Widevine L1対応でHD再生非対応なデバイスでも高画質再生ができる」との情報もありますが、検証してみたところ特に変わらずHD再生はできずじまい。HD画質でないと画質の劣化が著しく、体験に無視できない影響が起きますので、Prime Videoの視聴をタブレット購入の主目的とするならば、もう少し予算を積んだほうがよさそうです。
接続性
モバイル通信
NPad Proは4G通信をサポートし、デュアルSIMスロット(うち1枚はmicroSDと排他)を備えます。対応バンドは日本向けにローカライズされているわけではないので、満足に利用できるのはSoftBank系列と、Band3の自社回線だけで全国をカバーしようと奮闘する楽天モバイル回線程度でしょうか。
筆者はSB系回線を契約しておらず、また楽天モバイルはeSIMでの契約であるため検証不能。仕方なくメイン回線のドコモ系、OCNモバイルで計測。結果は土曜午前10時の計測で、バンド3を掴んで下り14.7Mbps。なお直後に計測したPixel 6 ProはBand19を掴み200Mbpsで通信。
低いWi-Fi感度
お次はWi-Fi。セルラー通信と違って、こちらは快適性に直結するため、かなり重要な要素です。ここでは購入時4万円のXiaomi Pad 5と比較します。なお、同機種はNPad Proと同じようにWi-Fi 5(ac)までの対応。
参考までに、筆者宅の環境はWi-Fi 6ルーター(TP-Link AX73)で1Gbpsコース、有線での実測値は350~500Mbpsほど。プランのわりに非常に高速な環境です。
まずはタブレットにとって最良の条件から。ルーターを置いた部屋の中、遮るものがほとんどない場所で計測しているものです。NPad Proがくだり247Mbpsであるのに対し、Xiaomi Pad 5は381Mbps。1.5倍の速度差が生じていますが、それでも十分に高速、日常使いで特に困らないスピードです。
一方で、ルーターから最も離れた部屋で計測すると当然ながらガクンと速度は落ち、40Mbps程度に。Xiaomi Pad 5も速度は落ちているものの、それでも100Mbps弱をマーク。
この環境でYouTubeを視聴すると、1080pでは読み込まれていない範囲へのシーク後の読み込みに若干のもたつきを感じました。ルーターを置いた部屋でのシーク時の硬直はほぼなかっただけに、Wi-Fiアンテナ強度の不足を感じます。
Bluetoothコーデックがしょぼすぎ
最後はBluetooth。NPad ProはBluetooth 5.0をアピールしていますが、開発者オプションではBluetoothバージョンは「不明」と表記され、確認できません。また、ワイヤレスイヤホンを利用するうえで重要なコーデックは販売ページにも表記されておらず、すべての選択肢がグレーアウト。
SBC/AAC/LDACに対応した完全ワイヤレスイヤホンのWF-1000XM4を接続し、専用アプリのHeadphones Connectから接続方法を音質優先にし、コーデックを確認しても、案の定SBCどまり。
SBCはBluetooth対応デバイスなら100%対応しているコーデックで、言い換えれば最低限のコーデック。無線での音質にこだわる人には向かないですね。
真正面に居る利用者が真ん中に映るインカメラ
しょせんタブレットの、それもインカメラ。画質が悪くて当然。しかしNPad Proは最近増えつつあるWeb会議向けのインカメラ配置を採用しており、端末を横向きにした場合、インカメラが本体上部に来るようになっています。そのメリットを含めて検証してみます。
まずそもそもの画質。撮影ボックス内でぬいぐるみをタイマーを用いてインカメラで撮影していたため、写真ごとに構図が異なります。NPad Proで撮影した結果が下のとおり。説明不要です。ぬいぐるみの周りの背景は色移りが起こっているほか、本来なら同じ色であるはずの背景も安定しません。
下の画像はXiaomi Pad 5で撮影したもの。色表現はずいぶんましです。
次はインカメラで映る構図について。Xiaomi Pad 5は一般的なスマホと同じくカメラが横にくるため、端末の正面に人物がいる際、少し横からの構図となってしまいます。
この問題に対し、iPad Proなど一部タブレットでは、超広角カメラから人物を抜き出すことでこの問題を解決していますが、そうでないタブレットは顔の位置とタブレットをずらさない限り、違和感がぬぐえなくなってしまいます。
カメラが横持ち時に上部に位置するNPad Proと、横持ち時に向かって右側にカメラが来るようにしたXiaomi Pad 5で、デバイスを真正面に置いた時の人物の写りを検証します。筆者の見苦しい顔を見せるわけにもいかないので、ペイントで塗りつぶしています。あくまで参考までに。
Xiaomi Pad 5は端末を真正面に置くと、顔がどうしても画面の左半分に収まってしまう一方で、NPad Proは人的な若干のずれさえあれ、顔面がほぼ中央に位置していることがわかります。画質は悪いですが、「ちゃんと正面から映る」というのは良いですね。どうしても画質を求めたければ、外部カメラでもつなげば解決です。
微妙な点
処理性能は一定程度あり、ツイッターやYouTubeはそこまでストレスなく操作できるとはいえ、やはり小さいメーカーだからか、主にソフトウェア面で使っていて不満な点もいくつか感じました。紹介します。
調整不足、バカみたいなスピーカー最低音量。解決策あり
まず、最もわかりやすい問題がスピーカーの音量問題。Amazonのレビュー等でも同様の意見が散見されます。この症状、具体的には「音量を最小に設定していてもスピーカーの音量が大きすぎる」というもの。適当に載せたクアッドスピーカーが仇となりました。調整不足です。
同じくクアッドスピーカーのXiaomi Pad 5と比較したのが以下の動画。NPad Proは音量ボタンを1回(内部的には3段階)押しただけで、かなり大きな音量で、調整しようにも消音がすぐに迫ってしまうのに対し、Xiaomi Pad 5はほとんど聞こえないほど小さな音量です。
これで困るのが「ごろ寝で動画視聴」といった、耳とタブレットが近い状態。音量調整しようにも、最小段階でもすでに十分うるさく、コンテンツによっては視聴に耐えられないレベル。
解決策はシンプル極まりなく、ただ「イコライザーアプリで音量を下げる」のみ。すべての音域を等しく極限まで下げてしまえば、耳が近いような状況でも気にならない音量まで調節できるようになります。
こんなあまりにも原始的な解決方法で何とかなってしまいました。この「Equalizer」という直球な名前のアプリ、出力先によってイコライザー設定を自動で変更することもできるため、非常に便利です。
なお、クアッドスピーカーによるコンテンツの視聴自体は快適。低音が弱く、迫力に欠ける印象を受けますが、スピーカー4基の威力は大きく、籠もっているような印象もなく、価格帯にしては頑張っていると思います。
Androidの最適化不足
NPad ProはAndroid 12を搭載。本音を言えば、大画面向けに最適化された「Android 12L」を搭載してほしかったところ。というのも、スマホに最適化したAndroid 12を、UI関連にカスタマイズを施さないまま大画面のタブレットに載せてしまったことによる弊害がいくつか生じているためです。
まずあるのが、「最近使ったアプリ」のそれぞれのアプリのデカさ。ほぼ全面に最近使ったアプリが単一で表示されます。iPadやXiaomiタブレットは縦横に並べてアプリを表示しますが、情報量が少ないのがここまで不満を感じるものとは思いもしませんでした。
また、「画面オフ時にダブルタップで画面オン」や「三本指でスワイプアップしてホーム画面」など、大手スマホメーカーや高価格帯タブレットでは当たり前にあるような機能がないのもストレス。3ボタンナビゲーションでは下のボタンに指を伸ばすのが億劫ですし、ジェスチャーナビゲーションも、戻る以外の操作は3ボタンナビゲーションと同様に同様に面倒くさいです。
まあ、筆者はデバイス操作の利便性にかなりうるさく、「少しでも怠惰に、最小の動きでデバイスを操作する」ことに固執しているという自覚はあるため、そこまでデバイスを使わない人にとっては大した欠点とならないでしょう。2倍の価格差があるデバイスと比べることそのものが間違いで、あくまでタブレットを持っていないユーザーが使う分には気づかない可能性すらある不満点です。
些細な点では「Bluetoothイヤホン接続時、スクショ音がイヤホンを貫通してスピーカーでも鳴る」という点も引っ掛かりました。そもそもスクリーンショットの撮影時に音がなる事自体が時代錯誤も甚だしいですが、それが周囲に響き渡るのはあらぬ疑いを掛けられかねない事態にもなり得ます。しかし、スクショ音とカメラ撮影音はマナーモードで消音可能。この点は良いですね。
怪しいバッテリー関連の挙動
デザインの項で、「PD18W充電対応を謳うのに入力が5V2Aとするシールが貼付されている」という事を紹介しました。ここでは、その問題を含めたバッテリー関連の問題について解説します。
まず、22W対応のPD充電器で検証してみたところ、バッテリー残量が少ない時には安定して15W前後で充電しており、そこそこ高速に充電できていました。
一方、満充電に近づくと、充電速度はグッと落ち、USB電流チェッカーでは2~3Wまで低下。「(充電)完了まで16分」などと表示されていながら、実際は30分経過しても充電が完了しないこともありました。これは同梱の純正20W充電器でも同様の傾向で、筆者の環境ではどうやっても高速に充電することはできませんでした。
また、使用時のバッテリーの減り方にも少し違和感を感じます。残量が豊富にある場合、一瞬で数%減ったかと思いきや、その後使用していても残量表示が減ることなく安定、ようやく1%減ったかと思ったらすぐ何%か減り、また安定する……といった挙動をたびたび見かけます。
NPad Plusのレビューではスタンバイ時のバッテリー持ちの良さが魅力であると紹介されていましたが、NPad Proは特にそうでもないようで、2~3日ほど放置していたら電源が落ちました。ただ困るほどではなく、体感としてはスマホと同程度。満充電付近の充電の遅さもあり、70%前後をうろうろする使い方が良いかもしれません。
総評
ハイスペックなスマホ・タブレットを日常的に使っているユーザーであれば、細かな不満点に気づくかもしれませんが、処理性能や筐体質感はそれなりに良好のため、十分に使える端末であると感じます。
YouTubeやブラウジング、あとはカーナビとして使うには良さそうです。