所有欲満たされる一台。
携帯デジタルオーディオプレーヤー「HIDIZS(ヒディス) AP80 PRO-X」をメーカーより提供していただいたのでレビューします。
2.45 型(480×360)タッチパネル液晶を搭載。側面にはクールな電源ボタンを兼ねる音量調整用竜頭が目立ちます。次曲送り、再生/停止、曲戻しボタンも備えます。
重量は実測値73.1g。スマホより圧倒的に軽いです。一般的なスマホは200g前後。小型軽量機として名高いXperia rayが100g、Xperia SXが95gなのでそれよりもさらに軽いです。
とはいえ軽くて安っぽいということはなく、しっかりギュッと詰まってる感じ。筐体も金属製でしっかり高級感があるのが好印象です。
サイズも小さめ。つい持ち歩きたくなるガジェットです。
HIDIZS AP80 PRO-Xは、ESSのDACチップ、ES9219Cをデュアル搭載。有線イヤホンで聴くと、明らかにスマートフォンとは異なる音質です。全音域で迫力とキレがあり、安っぽさも無くなり、解像感も高まります。より高音質の音源であればあるほど、天井が無くなり高音質で聴けます。
筆者はより巨大重厚な上位の高級DAPも所持していますが、驚くべきことに、HIDIZS AP80 PRO-XのDACチップが強力なためか、音質の差は大きくありません。
イコライザー、MSEBによって音質を調節可能。デフォルトはわずかにクール寄りの印象も受けますが、ウォーム寄りに調整もできます。ボーカルを前面に出す、低音ブーストなども。
さらに本機は、こんなに低価格な小型機ながらも2.5mmバランス接続が可能。
通常の3.5mmのアンバランス接続と比べて、バランス接続のほうがスッキリと分離感が増し、音像定位も定まります。
本機はAndroid OSを搭載しておらず、独自のHiby 3.0 OSです。基本はmicroSDに楽曲を放り込んでおけばとりあえず再生できる昔ながらのオーソドックスな作り。ただ楽曲の並び順が変だったり、ちょっと使いにくいです。
電源ボタンを兼ねる竜頭を、指一本で回して音量を調整するつもりが、誤作動して画面消灯になってしまうことが少なからずあります。回す時に指二本で行うなどすれば、誤作動が防げます。
残念ながらSpotifyやApple Music、Amazon Musicといったストリーミング音楽再生には非対応。高い処理性能と電池容量を要するAndroid OSを、あえて搭載していないおかげで、この小さな筐体に全てを詰め込めている、というメリットもあるのですが、現代の標準的な音楽再生体験を考えると……。
しかしながら、そうした制約を打ち破ることができるのが、スマートフォンとの接続。
本機はBluetooth 4.2対応。なんとスマホと無線/有線接続することで、スマホで音楽ストリーミングサービスを再生すると、その音を高音質で有線イヤホンで聴くことができるのです。つまり受信機(レシーバー)ですね。
特に、スマホとの有線接続時は格別です。ズボンのポケットから取り出したスマホで音楽ストリーミングサービスで楽曲を漁りつつ、DAPは胸ポケットに入っているような状況は取り回しも良く快適です。
力強くDAPが鳴らしてくれるとはいえ、DAPとスマホの間の無線伝送がショボいと、やはりその真価は発揮できません。本機はLDACに対応しているため、是非LDAC対応のスマホと組み合わせて使ってあげてください。現代的な音楽再生体験も、イヤホンの高音質も、かなりのレベルで両立させることができますよ。
もちろん、LDAC対応のTWS(左右独立型無線イヤホン)などの無線オーディオ再生機器と本機を接続し、microSD上に保存した音源をLDACで再生することも可能です。
ちなみにmicroSDは奥まで突っ込まないと刺さりません。
電池持ちは公称で「40日間」を謳いますが、そんなに持ちません。あくまで「5分無操作で電源を落とす標準設定のまま運用した場合」には長持ち。ちなみに電源オフからの復帰は10秒~15秒ほど。普通に毎日ライトに使って、1週間に2回充電するかなぐらい。さらにスマホと無線接続して受信機として使用する際には、電源が自動で落ちるのが妨げられるためか電池持ちは悪くなります。受信機として運用時は、こまめに本機の電源を手動でオフにするのが無難です。
ただ前述の通り電池自体が良くも悪くも小容量なので、充電は1時間程度で終わります。
これだけ高音質なDAPが、なんと2万円台。すごい時代です。弱点もありますが、それを許容するだけのコスパと所有欲。スマホの音質には満足できなくなった人の入門機としても良い機種かもしれません。