ASUS JAPANから一定期間、Androidスマートフォン「Zenfone 10」をお借りしたのでレビューします。発売前のファームウェアとなるため、実機とは異なる部分もある可能性には留意して下さい。
Zenfone 9同様、最新ハイエンドSoCを搭載しながら、幅狭で小さめなのが特徴。このコンセプトが最高なんですよね。ポケットへの収まりが良く、片手操作がしやすいです。IP65/IP68 防水防塵にもしっかり対応。
大型化、重鈍化してきた昨今のスマホの中での紅一点と言えます。
今回レビューする黒色は、背面は引き続きマットでアスファルトのような質感。レビュー時点では気持ちの良い質感ですが、筆者が長期間利用したZenfone 9は皮脂や水分を吸ってか質感の大きな変化を感じているため、気になる人には保護ケースの装着を推奨。
重量実測値は約175.3g。前モデルから3gほど重たくなっていますがほとんど違いは感じられないと思います。小さくて操作しやすい上に軽いので持っていて疲れないです。
底部にはスピーカー穴、USB Type-C端子、マイク穴、SIMスロット。
側面には音量キーと電源ボタン内蔵指紋認証センサーを搭載。
ボタンを押し込んだ際に解錠がデフォルトですが、触った時点で解錠する設定も可能。依然として解錠精度には不満なし。顔認証との併用も可能で非常に快適です。電源ボタン二度押しでの即時起動をカメラ以外の任意のアプリに割り当てられるのは、ZenUIの美点です。
上部には3.5mmイヤホンジャックを搭載。多くの機種が3.5mmイヤホンジャックを廃止しているため大きな優位性です。
SoCにはSnapdragon 8 Gen 2を搭載。CPU/GPU、電力効率も上がっているのに加えて、ストレージはUFS3.1からUFS4.0に、そしてメモリ規格もLPDDR5からLPDDR5Xに向上。圧倒的な性能を誇ります。以下、各種ベンチマーク計測結果。高スコアであるというだけではなく、Wild Life Unlimited Stress Testを実行した際も国内メーカー機などと比べてかなり高い性能持続率を誇っているのを確認できます。
- AnTuTu v10.0.7:151万0898点
- Geekbench 6 Single-Core:1988
- Geekbench 6 Multi-Core:5249
- Geekbench 6 GPU:9040
- Sling Shot Extreme OpenGL ES 3.1:Maxed Out!(上限値)
- Wild Life Extreme Unlimited:3701, 平均22.16fps
- Wild Life Extreme Stress Test:Best loop 14040 , Lowest loop 11839, Stability 84.3%
- Solar Bay Unlimited:5356, 平均20.37fps
- Solar Bay Stress Test:Best loop 5387, Lowest loop 3782 , Stability 70.2%
- PCMark Work 3.0:18696
Wild Life Extreme Stress Testを実行したあとにAnTuTuベンチマークを実行した時の筐体温度は以下の通り。熱源となるSoC部分の熱は46.8度に達しました。ASUS機は温度上昇による性能制限をできるだけ行わない傾向がありますが、本機もそうなのか、このときのAnTuTuベンチマークスコアは148万点を維持しました。発熱許容値と性能維持への考え方への違いがあるとは言え、小型ながらも高い性能を発揮し続けられるのは本機の魅力の一つと言えます。
メインの広角カメラはIMX766で、Zenfone 9を概ね踏襲してそれなりに優秀です。
左がメインの広角、右が超広角。
以下、メインカメラ。明るくなりすぎない露出が良い塩梅のように感じました。
夜景モードも格調高さを意図してか露出をやや暗めに抑えています。少しこってりした色合い。
左がZenfone 10、右がZenfone 9。
料理はこんな感じ。
左がZenfone 10、右がPixel Fold。
全体の傾向として気付いたのが、少しだけ解像感が甘くなった点。
スマートフォンのカメラは専用機に比して貧弱な光学性能のため、JPG生成時にシャープネスを強めにかけるのが一般的です。Zenfoneは特にその傾向がより強めだったので、今回ややマイルドにすることでバランスを取ったのかもしれません。少なくとも十分に光量のある場面では、被写体をより自然に写せるなど有利に働く場面もあります。
左がZenfone 10、右がZenfone 9。
明らかに上手になったのが空の雲の自然な表現で、個人的にZenfone 9までで不満だったHDRも適切に機能しており改善が見られます。いま手元に機体が無いので参考程度に聞き留めておいて欲しいですが、こういうカメラの細かい部分にまでは気を遣っていないだろうROG Phone 7よりも印象は良いです。左がZenfone 10、右がZenfone 9。
薄まって安っぽくハイライトも飛んでしまったZenfone 9と比べて表現力が向上しています。
一部発色について好みはわかれそうだと思いましたし、解像感が甘くなった印象を受ける部分もあるものの、総じてZenfone 9よりも好ましい表現をする場合も多く見られます。引き続き光学式手ブレ補正も優秀で、手ブレによる撮影失敗も発生しませんでした。
光学性能不足でどうにもならない低照度などの場面においてはSnapdragon 8 Gen 2の高いISP/DSP性能を活かして処理するようなメリハリが必要です。短いレビュー期間でしたが、その中で撮った作例を確認する限りは、解像感はZenfone 9と甲乙つけ難い水準で、上手くやっていると思います。
発売前のファームウェアであるためか、暗い色合いの被写体が前面に出ている際に、AFが背景に流れてしまい一向に被写体に合焦しない事象を確認しましたが、被写界深度が1型ほど浅くない、前モデルと同じ撮像素子搭載のため、これはアップデートで修正できない理由がないので、特に心配する必要はないと思います。
ソフトウェアはZenfoneならではの使い勝手の良さがあります。片手操作を考慮したカメラUIのほか、充電関連も充実。充電時間帯を制限する予約充電機能や低速充電機能、80%や90%で充電を停止する機能によって、電池を労って長期間利用することが可能。
X(Twitter)やInstagram、LINEなどを複製できるツインアプリ機能に対応。LINEに2アカウントでログインが可能。有償シェアウェアや他の大手メーカーが独自に実装している機能にしっかり対応しています。特に公開市場版でデュアルSIMなのでLINEでの利用にはニッチな需要がありそうです。
個人的に「わかってるなぁ!」と思うのが、アニメーション速度変更。昔からAndroidユーザーならサクサク感を向上するために買ったらまず最初に設定する項目なのですが、本来は一般利用者が変更するものではない開発者モードの中の項目です。このアニメーション速度の設定項目だけが、ディスプレイの設定項目の中にすでにあるので、開発者モードを解禁せずに使えます。
ディスプレイは最大144Hz駆動ですが、特にパネル自体はSamsung SDI AMS592YPから変更していないように見受けられます。輝度や発色はほぼ変わりません。また、144Hzリフレッシュレートの発動条件がゲームモードで指定したアプリのみになっており、基本的に最大120Hz駆動となっているのが惜しいです。ただ多くの人は120Hzで十分だとは思います。
下部ベゼルの太さも特に変化はありません。個人的にはパネルの刷新やベゼルレス化が欲しかったところですが、ベゼルレスはより耐久性を確保する設計の必要性が生じるだけではなく、リジット(ガラス基板)からフレキシブル(プラスチック基板)に変更することも必要となってくるでしょうから、コストアップ要因となるので、マイナーチェンジとなる今世代では難しかったのでしょう。
とはいえZenfone 9を使う上で最大の不満点だった「Qi非接触充電への非対応」が、Zenfone 10では解消しています。日常的に使う上でも充電ケーブルを繋ぐ手間が無いのは便利ですし、台所や風呂場で使った後に端子が濡れて乾いていない可能性がある状況でも充電できて便利です。
Zenfone 9は筆者が現在もメイン機として利用している素晴らしい機種で、それをブラッシュアップ。小型ハイエンドの一旦の完成形をここで見たと思います。一度ハマると病みつきになるこのサイズ感。まだ体験していない人も、この美味しいタイミングでぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
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