携帯ゲーミングPC「AYANEO AIR 1S」を株式会社天空より一定期間貸与していただいたのでレビューします。本機は11月11日発売の最新機種です。
携帯ゲーミングPC、高性能とは言えデカい機種が多くて悩ましいのですが、画面サイズは5.5型。けっこう小さくてまるでWindowsの入ったNintendo Switch……と感動を覚えるのではないでしょうか。Switchと比べてもベゼルが狭く、小型にまとめているのがわかると思います。
重量は公称約450g(実測値451g)なのでNintendo Switchと比べると重いですが、それでも全然余裕の軽さ。
これでRyzen 7 7840Uと16GBメモリ、512GBストレージ、10050mAh電池が入っていてWindows 11が動作するんですからね。UMPCが好き、という人にもソソるものがあると思います。
そうは言っても、筆者はすでにAYANEO AIR Standardを持っているので、単純なサイズ感や重量感だけで言えば、それほど驚くことではありません。しかしAYANEO AIR StandardはRyzen 5 5560Uを搭載しており、動作するゲームにはけっこうな妥協を強いられてきました。あくまでWindowsの入ったおもしろガジェットかな……という位置付け。
ところが、本機の美点が4nmプロセス、Zen 4アーキテクチャのRyzen 7 7840U搭載ということ。かなりパワフルになっています。「性能を妥協して小型軽量を取るか、デカさを我慢して性能を取るか」という究極の選択をしなくて済みます。
内蔵バッテリー駆動時の最高設定でベンチマークを計測しました。ちなみに電源接続時にはTDP 25Wが解禁されます。AYANEO AIR Standardとの性能差を見て下さい、マジで一目瞭然です。
AYANEO AIR 1S Ryzen 7 7840U |
AYANEO Air STANDARD Ryzen 5 5560U |
ROG Ally Ryzen Z1 Extreme |
AOKZOE A1 Pro Ryzen 7 7840U |
ONEX PLAYER2 Ryzen 7 6800U |
CHUWI MiniBook X Celeron N5100 |
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3DMark TimeSpy | 2813 | 952 | 2944 | 3009 | 2699 | 346 |
3DMark Wildlife | 13662 | 4829 | 14118 | 15436 | 14956 | 2390 |
3DMark Solar Bay |
10043 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 | 未計測 |
VRMark v1.3 Orange Room |
3237 70.56 |
1258 平均27.42fps |
3273 平均71.35fps |
3346 平均72.93fps |
未計測 | 489 平均10.66fps |
VRMark v1.3 Cyan Room |
2556 55.72 |
826 平均18.00fps |
2560 平均55.80fps |
2634 平均57.42fps |
未計測 | 328 平均7.15fps |
VRMark v1.3 Blue Room |
621 13.53 |
201 平均4.37fps |
714 平均15.56fps |
732 平均15.97fps |
未計測 | 70 平均1.52fps |
PCMark10 | 4946 | 4757 | 5957 | 4854 | 5219 | 2371 |
Cinebench R23 マルチコア |
10279 | 4491 | 12705 | 12779 | 10948 | 1854 |
ドラクエX 最高/全画面/FHD |
6725 快適 |
5876 | 11891 | 7909 | 9582 | 3272 |
FF XV ver1.3 標準/全画面/FHD |
3525 普通 |
1283 動作困難 |
3542 普通 |
3599 普通 |
3531 普通 |
544 動作困難 |
BF2042では起動時の高解像度ではフレームレートは低くなってしまうものの、解像度を幅1000程度にまで落とすと最大64人のAI戦にて、電源非接続時でもフレームレートは50台で安定しました。
アーマードコアVIも解像度を落とすとかなり快適に遊べます。大抵の人にはゲームパッドの方がプレイしやすいゲームなので、小型ながらも操作しやすい操作系を持つ本機は向いていると思います。
流石にCyberpunk 2077はフレームレートが30を割り込む場面も少なからずあり、厳しい感じでした。解像度と画質を妥協できるギリギリまで落としつつ、電源接続時の最大TDPでプレイするなどの工夫が必要です。
UIは前世代より改善されています。メーカー側の見やすいFPS/実行メモリなど機体の状態を示すカウンターを表示できたり、上部のボタンでスクリーンショットや仮想キーボードを瞬時に呼び出せて各ボタンの単押し・長押しで動作を任意に変更できたりと、AYANEOならではの使いやすさがあります。TDPやファンなど各種制御もしやすいです。
AYANEO Air Standardを使っていた時は作り込みの甘さやバグも目立ったので過信は禁物とも思います。たとえばスクリーンショットは階層奥深くの変な場所に保存されるなど、使い勝手の悪さも継承しています。ただこれに関してはショートカットを置いたり、フォルダ自体にクラウド同期を設定するなど工夫すれば使い勝手は良いです。
実は筆者がAYANEO AIR Standardを気に入っていた理由が、実はもう一つあります。それが有機EL採用という点。AYANEO AIR 1Sもまた有機ELを搭載しており、ゲームプレイ時や動画視聴時、黒の多いシーン、暗いシーンで明らかに高い没入感が楽しめます。薄暗い雰囲気を楽しむStrayなどを遊ぶとその素晴らしさが堪能できるはずです。
有機ELならではの応答速度も美点です。発色は少し原色っぽい鮮やか、一昔前のGalaxy感があります。
一点気になったのが画面のスクロール時の歪み。右側が先に描画され、左側が遅れて描画されます。こうした事象はパネルの取り付け方向が想定外の場合に起き得ますので、おそらくポートレート(縦)用のパネルをランドスケープ(横)に取り付けているのでしょう。画面を秒間240fpsスローモーションで撮影してようやくわかるレベルの、ごくわずかな事象に過ぎません。ただ神経質な人や、ゲームタイトル次第では、気になる場合もあるかもしれません。
コントローラーでマウス操作もできるのでブラウジング等もできちゃいます。Aで左クリック、Xで右クリック。スティックで快適にマウスカーソルを使えるので、Webブラウジングや普段の操作も快適です。
端末上部には電源ボタン内蔵の指紋認証センサーを備えます。触ってすぐには解錠せず、押し込みが必要になったのは個人的には残念ですが、常に通電させて待機させる必要がないことから電池持ちへの微力ながらの貢献と、誤作動防止には意味があります。
音響面。AYANEO Air Standardは低音がスカスカで音量も大きくなく、音質は悪かったのですが、それと比べてAYANEO 1Sは明らかに低音がしっかり量感があり、音圧もやや向上、最大音量も大きくなっています。映画館を想像すればわかると思いますが、臨場感のあるゲームの雰囲気を最大限味わうには低音が必要です。AYANEO Air Standardはあくまで「スピーカー付いてるな、さっさとイヤホン/ヘッドホンに切り替えよう」というオマケ程度でしたが、こちらはより実用的な音響になりました。
ただ音楽鑑賞には向かないでしょう。水泳した後に耳に水が残ったような、やや篭った感覚があり、クリアではありません。本機はゲーム機なので、必要な音量や臨場感を支える低音域は確保しているので取捨選択の妙だと思います。
底部にはmicroSDカードスロットや3.5mmイヤホンジャックも備えます。必要に応じて有線イヤホン/ヘッドホンを使用しましょう。
サイズ感的にはUMPC的です。キーボードこそありませんが、筆者としては、最近GPD Win4と無線キーボードにて外で作業する機会が増えました。「むしろ物理キーボード部分いらないかもな」なんて思うこともあります。
皆さんはご存知ないかもしれませんが、皆さんの読んでいる記事はPSPによって書かれています。 pic.twitter.com/ntHdcYQ9vH
— すまほん!! (@sm_hn) November 6, 2023
お気に入りのキーボードが既にある人には、あえて物理キーボードなしの本機を選ぶのもアリだと思います。持ち運びたくなるサイズ感、ガジェット感がありますからね。
何より、本義である携帯ゲーミングPCとして、かなり性能が向上し、プレイ可能なゲームの数が増え、ゲーム画質設定の余地も上がったと思います。「小さいのがいい、でも性能も欲しい」、そんな我儘な人にもおすすめできてくる機種なのかなと思います。
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