Qualcommは、エントリークラスからミッドレンジ帯のスマートフォン向けのSoCである「Snapdragon 6s Gen 3」を発表しました。
「Snapdragon 8s Gen 3」で見られるように、s付きモデルは無印より廉価で低性能ですが、どうやらその性能は思ったより低そうです。
立ち位置はSnapdragon 6シリーズの下位に位置するモデル。しかし3年ほど前にQualcomm製品の命名規則が大きく変更されて以来、Snapdragon 6シリーズの製品は「6 Gen 1」と今回発表された「6s Gen 3」しかありません。つまり世代でいえば廉価モデルしか存在しないという状況。
また、そもそも「第2世代」と名乗るチップも存在していませんが、もしかしたらこれはZ Foldシリーズに合わせて2が飛ばされたGalaxy Z Flipのように、表記される世代をなるべくそろえようとした結果かもしれません。
Qualcommは先述の命名規則変更に伴って、搭載するCPUやGPU、通信モデムに至るまで型番をひた隠しにしており、公式からの情報では何一つスペックを読み取れません。しかし、海外サイトのAndroid Authorityがモデル番号やスペックを記載しており、そこから概観が読み取れます。
まず、Snapdragon 6s Gen 3のモデル番号は「SM6375-AC」、4G版は「SM6370」であるようで、これは2021年に登場した「Snapdragon 695 5G」に酷似しています。また、プロセスルールも6nmを使用。CPU構成は最大2.3GHzのCortex-A78×2に2GHzのCortex-A55×6という構成。モデムやISPのスペックも一致。
ただし一点のみ不可解な点が存在するようです。それは使用するモデムで、5G版のSM6375-ACと4G版のSM6370で、いずれもSnapdragon X51 5Gというモデムを利用していること。4G版は5Gをソフト部分で無効化しているのでしょうか?
ちなみに6s Gen 3は4 Gen 1に似ており、4 Gen 1は695に似ているとも。
さて、一旦まとめると、今回発表されたスナドラ6s Gen 3(SM6375-AC)は「2024年最新のラベルを貼ったスナドラ695」、4G版6s Gen 3は「最新の4G非対応695」とでも呼べそうです。
Android Authorityは、各スマホメーカーが2021年のチップであるSnapdragon 695 5Gを搭載したスマホを、ほとんど変更を施さずに2024年に最新製品として使いまわして販売できるようにするマーケティング戦略である可能性を指摘しています。
また悪質にも思えるのが「s」の表記。iPhone 6sやvivo X100s、Xiaomi 12sなどに代表されるように、この業界ではsが付く製品は無印版よりも高性能もしくは改良モデルという印象が強いですが、Qualcommは真逆です。
「6にsがついてる!しかもGen 3って!つまり6よりずっと高性能か!」と考えるべきではありません。4nm製造だったSnapdragon 6 Gen 1に対して、Snapdragon 6s Gen 3は6nm。GPU性能も対応メモリも対応カメラ等ハードウェアも動画記録も全てにおいてSnapdragon 6 Gen 1に劣っています。まったく高性能ではありません。命名規則が破綻していて消費者を欺きかねません。
なおSnapdragon 6s Gen 3はMotorolaの「moto g85」で初登場する見込みのようです。
Snapdragon 6 Gen 1を採用した端末の後継が6s Gen 3を搭載して、価格も同程度かそれ以上、なんて光景を見たら、流石に警戒しましょう。